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1988/04/05 朝日新聞朝刊
(社説)透明度増した中国の政治
中国で開会中の第7期全国人民代表大会第1回会議は、昨年秋の13回党大会で決まった「開放」と「改革」をいっそう進める方針を、法的に具体化する重要な会議である。
会議が始まって10日余り。これまでの全人代とは一味違った展開を見せている。約2900人の人民代表が、積極的に発言し、ときに政府にとって耳の痛い意見も出ている。「異議なし」大会ではなくなった。
北京市の人民代表である北京師範大学教授は「政府が発表した87年の物価上昇率は7.2%というが、その数字は受け入れ難い。大衆の買い物かごの中身が示しているように、物価上昇率が2ケタを下回ることはあり得ない」と追及した。暴動騒ぎが続いたチベットの代表は「チベットのある県には自動車道路も小学校もない」と政府の政策に不満を述べたという。
日本の修学旅行生ら多数が犠牲となった上海の列車事故など続発する鉄道事故についても責任追及の声が出た。遼寧省の代表は、政府活動報告がこの問題に一言しか触れていないことをとりあげ、「問題を解決する措置はどこに書いてあるのか」と指摘した。
鄭州鉄道局長は「一部の労働者の素質が悪く、技術水準と労働規律、労働態度が、高度に緊張を要する運輸の現状に適応できないでいる」と認めた。
もちろん人民代表の発言の多くは、政府の活動を高く評価し、目標の達成のために奮闘するという内容のものである。批判的意見はごく一部であり、それも「百花斉放、百家争鳴」の中国共産党の呼びかけの中で、許容される範囲内にある、というべきだろう。しかし、批判的意見が封殺されていた時期から、ものの言える時期に変わろうとしている点は、注目に値する。
人民代表の発言が活発になった背景には、「政治の透明度を高めよう」「人民との協商対話を活発にしよう」という13回党大会での趙紫陽総書記の呼びかけがある。また、今度の大会から人民代表が、間接的ながら選挙の洗礼をうけて選ばれてきたことも見逃せない。これまで人民代表は、定数と同数の候補者が立つ「等額選挙」で選ばれてきたが、今度は候補者数が定数を上回る「差額選挙」で選ばれた。
だが西側の代議制の観点からすれば、人民代表と国民大衆の間には、なお溝があることも否定できないようだ。大会前に経済関係の全国紙「経済日報」などが行った世論調査「もしあなたが人民代表ならどうする」の結果をみると、95%の人々が大会でインフレ対策を議題としてほしい、と答えている。次いで「党の規律や政府の規則がしばしば無視されている問題」「住宅改革」の順で関心が高かった。
こうした国民の切実な要求が、これまでのところ十分に論議されたとはいえそうもない。人民日報は「全人代って何だ。マッチも買えないのに」という街の声を伝えている。
中国はいま、社会主義の下で商品経済を発展させようとしている。「下部構造が変化するのに伴って、上部構造である政治も変化すべきではないか」という意見が中国国内に出てきていると聞く。社会主義のワク組みの中での、共産党が指導する民主化は、西側諸国の民主化とは違ったものとなるだろう。その道も平たんではあるまい。
しかし「1人の指導者が一言いえばすべて決まりだ」という政治から、11億の人々が知恵を出し合う政治へと、歩みは決して速くはないものの、中国は変身しようと努めているように見える。
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