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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1987/10/04 朝日新聞朝刊
(社説)チベットの不幸な流血事件
 
 観光客も受け入れるようになった中国のチベット自治区でさわぎが起きている。区都ラサで、ラマ僧を含むチベット族と公安当局とが衝突し、死傷者が出た。当初はたまたまラサに滞在していた外国人観光客の話が西側報道機関に伝えられたが、中国の国営通信も衝突と死傷者の存在を確認した。
 3日の中国共産党機関紙、人民日報は「これは少数の分裂分子による騒乱であり、ダライ集団(亡命中の活仏、ダライ・ラマ14世を支持するグループ)が扇動・画策した、重大な政治事件」と論評した。中国当局が、この衝突事件を政治的背景を持つものとして重視していることが示されている。
 文革期までの中国なら、この種の事件を中国の当局がこんなに早く公表することはなかったろう。だが、78年末以来とられた対外開放政策によって、平均標高4000メートル以上のこの秘境にもいまや年間1万人以上の外国人観光客が押し寄せている。この種の事件を国内だけで処理することはむずかしくなってきた。中国が開放政策を続けていく以上、内外にわかりやすい形でこの事件の円満な解決をはかることが求められている。
 1951年のチベット解放のあと、1959年になってラマ教主としてのダライ・ラマを支持するチベット族が反乱を起こした。ダライ・ラマの住むラサのポタラ宮が軍の砲火にさらされ、多くの血が流された。
 文革期になると、チベットの仏教も他の宗教と同じく厳しい弾圧を受け、多くの寺院が破壊された。こうしたなかで、中国国内各地から送りこまれた漢族幹部とチベット族との対立がやわらぐはずもなかった。
 文革後になって、中国のチベット政策は大きな転換をとげた。とくに対外開放政策と国内のさまざまな改革が軌道に乗り始めた79年以後は、宗教活動が徐々に自由化され、宗教関係者を含む新しいチベット族指導者も登用されるようになった。
 85年には、中国のニューリーダーである胡啓立、李鵬氏らがラサを訪問、北京に住んでいる活仏で、ダライ・ラマに次いで影響力の大きいパンチェン・ラマの里帰りも実現した。ダライ・ラマの帰国を歓迎する意向も、再三にわたって表明された。
 信仰の復権は、大多数のチベット族にとって好ましいものとされている。他方、ダライ・ラマ側の対応は複雑だ。北京に特使を送って話し合い解決への道を模索する一方で、インドの亡命先を根拠地に「独立」の要求もほのめかすという状態が続いていた。
 そこへ、今度の衝突事件である。新華社電はデモの首謀者を「十余人の袈裟(けさ)を着たラマ僧」という表現で、外部からの干渉があった可能性をにおわし、ダライ・ラマが米下院人権小委員会で「チベット独立」を主張したことを非難した。話し合いによる和解は、へたをすると振り出しにもどってしまいかねない。
 だが、中国当局がもし今後も武力に頼ってチベット族に対し、彼らの信仰に対しても禁圧的な動きに出るようなことがあれば、せっかく生まれかけてきた民族間の和解に大きなマイナスをもたらすだろう。そのような性急な行動は、50を超える中国の少数民族と漢族との関係にも悪影響を及ぼしかねない。中国当局の自制を望みたい。
 同時に、国外にあるダライ・ラマとそのグループを含むチベット関係者は、中国の一部としてのチベットの現実に冷静な目を向けてほしい。およそ200万人のチベット族の平和な生活のためにも、無謀な挑発が行われるようなことがあってはなるまい。
 
 
 
 
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