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1986/12/18 朝日新聞朝刊
(社説)中国の改革は試されている
武漢、合肥、長沙といった中国の地方都市で、民主化を要求する学生たちのデモや集会が続発したと伝えられる。
省段階の人民代表大会選挙に当たって、共産党が候補者決定に介入しすぎることなどに異を唱えているらしい。内外にわたる開放政策を約束する中国指導部に対し、より徹底した民主化や政治的自由を求める声が末端に広がっているとすれば、注目に値しよう。
実力者、  小平党顧問委員会主任は、日本国際貿易促進協会代表団と会った際に、対外開放政策や経済、政治両面にわたる体制改革への反対があることを明らかにし、「従来賛成といっていた人間が、自らの利害に絡んで反対を唱え出す」と語った。
中国が進めている改革は、権益を侵されまいとする保守層と、改革の進展を生ぬるいとする知識層の一部との双方から挟み撃ちにされている形だ。
中国が対外開放政策に踏み切ってから8年ほどになる。内政面では、万元戸を生んだ農業の生産責任制実施に続き、84年秋から経済体制改革を始めた。国家計画一本ヤリだった従来の中央集権的な経済運営を見直し、企業の自主権や私企業も尊重してゆこうとする一種の混合経済の試みである。
その上で、政治体制改革の必要が強調されるようになった。「経済体制改革が一歩前進すると、政治体制改革の必要性を感じるようになった。この改革をしなければ生産力の発展が妨げられ、4つの近代化が妨げられる」(  小平氏)という。
この問題をめぐり、今春から議論が続いた。一口でいえば中国版行政改革だが、特徴的なのは党政分離、つまり共産党が行政や司法の全権をにぎった従来のやり方を改め、自らの権限縮小を提起している点にある。
ブレーン組織やシンクタンク方式を導入して政策決定の合理化をはかる提案もある半面、もっと大胆に政治の民主化をはかり、自由や人権を保障しなければ大衆の真の積極性は引き出せないとの主張も出た。
改革の範囲が広く、党中心に動いてきた政治の基本理念変更にもつながりかねないだけに、中国指導部は大事をとり、来年秋までをメドに内容を検討することになった。しかし、  小平氏らは、時間はかかってもあくまで改革をやり抜く、と明言している。
学生デモその他に示される批判には、さまざまな意味があろう。選挙の実態などをもとに政治の公正や民主化を求める声は、長期の一党支配がもたらしたマイナス面を明らかにしたものといえよう。既得権益を守るために改革に疑問を示す動きさえ、こうした党官僚抜きに在来型社会主義を運営しにくいのが現実であることを暗示する。
数年来、中国は対外開放政策を打ち出し、近代化への歩みを続けてきた。ここに住む10億の人びとにとって、また日本を含む近隣諸国との平和な関係を発展させる上でも、基本的に好ましい動きといえよう。
経済発展を保障するために、政治体制の民主化を必要としていることも理解できる。社会体制はどうあろうと、人が創意と積極性を十分に発揮するには、自由で個性を尊重する環境が不可欠と考えられるからだ。
同じ観点から、改革の過程で出てきたさまざまな批判に対して、中国指導部ができる限り寛容な態度で臨み、よい意見はとり入れていくことが望まれる。かりにもこれらを無視したり、「反党」のレッテルを張ってしりぞけたりすれば、民主化の展望はその分だけ制約されざるをえまい。中国の野心的な改革は、ここでも試されている。
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