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1986/08/18 朝日新聞朝刊
(社説)北京とウランバートルの間
北京とモンゴルの首都ウランバートルとの間を、今年6月から旅客機が飛んでいる。文化大革命のあおりで両国関係が悪化した1967年以来のことだ。
空の便のない時は、まる2日間を汽車に揺られて行くしかなかった。いまはプロペラ機でも3時間足らずで着くから、双方の首都間の時間的へだたりは大きく短縮された。航空路再開は、中国とモンゴルの国家関係正常化の歩みを象徴している。
両国間の領事条約が、国交樹立後初めて結ばれた。83年にはモンゴル在住華僑の強制国外退去問題が起こり、両国関係がこじれた。条約の締結で、これらの人々の合法的な里帰りも可能になった。
内モンゴル自治区など中国領内にも約340万人のモンゴル人が住んでいるが、モンゴル人民共和国の近親者とは長く断絶状態にあった。今度の条約は、これらの人びとの自由往来にも道を開くだろう。
東アジアの内陸国モンゴルは、文字通り中ソ両大国のはざ間にある。建国以来のいきさつもあって、現在にいたるまでソ連と密接な関係を保持している。モンゴル領内には5個師団、8万人近いソ連軍が駐屯しており、中国は中ソ関係正常化の条件のひとつとして、その引き揚げを求め続けている。
従って、中国・モンゴル関係が中ソ関係と離れて進展することはありえない。近年、中ソ両国は経済の立て直しを至上命題としており、かつてのようなイデオロギー論争には関心を示さない。相互に長期貿易協定も結んで、多角的な交流拡大につとめるようになった。ここ1、2年の中国とモンゴルの関係改善は、その反映といってよい。
逆からみれば、ソ連はその世界戦略上の重点のひとつである対中改善のために、モンゴル・カードを使っているともいえよう。
シェワルナゼ外相は1月訪日の帰途、ウランバートルに立ち寄って中国との関係正常化の意義を力説した。7月末のゴルバチョフ演説は「モンゴル駐留ソ連軍の相当部分の撤収」を検討中であることを、他の中国向けメッセージとともに明らかにした。
領事条約締結に際してウランバートルで開かれた中国・モンゴル外務次官会談では、ソ連軍撤収問題も話し合われたという。相手の手の内を確かめながら、ソ連ともモンゴルとも段階的に緊張緩和をはかるのが、中国の構えのようだ。
モンゴルを舞台とする中ソの軍事緊張は、これまでアジアの不安定要因のひとつに数えられてきた。それを思えば、中ソ関係改善の潮流のなかで中国・モンゴル関係も正常化しつつある現状は歓迎に値する。
モンゴルの遊牧民にとって茶は生活必需品だが、中ソ対立のあおりで、わざわざソ連のグルジヤ地方から買っていた。中国の茶が手に入るようになるだけでも、関係改善はモンゴルにとって意義深い。最近、ウランバートル・北京間を汽車で旅行した日本人によると、国境でのモンゴル当局の検査ぶりがゆるやかになったそうだ。多方面で、このような変化が表れることを期待したい。
アジアの一員として、わが国はモンゴルとも善隣関係を推進すべきだ。モンゴルが西側への門戸を広げようとするなら、われわれはそのような動きを支援するのが望ましい。
72年の国交樹立に当たり、日本側の贈与をもとに建てられたウランバートルのカシミヤ工場「ゴビ・コンビナート」は有力な外貨獲得源になっているそうだ。人種的にも文化的にもなじみのあるこの国との間で、さまざまな分野の交流を育てていきたい。
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