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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/03/28 朝日新聞朝刊
(社説)経済改革の継続にかける中国
 
 米週刊誌タイムは、昨年1年間に最も活躍した人物として小平氏を選んだ。同氏の指導する中国の経済改革を「従来のマルクス主義から一歩踏み出し、共産主義と資本主義とを結びつける試み」と評価したものだ。
 北京で、全国人民代表大会が開幕した。今回の主要テーマは第7次5カ年計画(86―90年)の決定だが、これに関する趙紫陽首相の報告は、経済体制改革を最優先すると述べている。タイム誌がいうように「氏の実験」が成功して世界に大きな影響を与えるかどうか、引き続き注目されよう。
 新しい5カ年計画案は、国民総生産(GNP)の年平均伸び率を7.5%としている。第6次5カ年計画の実績である年平均10%より低めに抑えた理由は、一昨年以来の景気過熱の後遺症に備えたものだろう。
 市場原理を大胆に採り入れ、エネルギー・原材料価格の手直しや給与改革をはかろうとすれば、インフレの危険におびやかされる。これが中国経済の現実である以上、改革の旗は降ろさないが実行は一歩一歩着実に、というのが、5カ年計画や今年度国民経済・社会発展計画に示された基本姿勢だ。
 今回の5カ年計画から、初めてGNPという指標が使われるようになった。これも現指導部の姿勢を示す興味深い変化である。
 従来の「工農業総生産額」と比べると、流通・サービス部門である第3次産業を評価の対象に加えるわけだ。GNPの採用は、中国当局がマルクス経済学の枠にとらわれず、西側とも共通する言葉で経済の実態把握につとめている表れといえよう。
 小平氏らは、必ずしも毛沢東時代の経済政策を全面否定はしていない。しかし、われわれ第三者からみると、建国後も国内の主要矛盾をプロレタリア階級とブルジョア階級の対立に求め、階級闘争を強調した毛沢東方式と今のやり方は明らかに異質である。
 生産力の停滞を主要矛盾とみる氏らは、その解決のために対外開放政策をとり、西側の技術や資本も導入して経済発展をはかる。国内では、土地の使用を農民にまかせる生産責任制を実施し、企業の自主権拡大につとめている。
 ゴルバチョフ政権下で経済改革に意欲を示し始めたソ連に比べても、大胆さでは中国が一歩先んじているといえよう。だが、肝心なのはそれらの施策が順調に進み、予期通りの成果を収めるかどうかにある。
 経済の進め方をめぐり、中国には小平氏を筆頭とする改革派と陳雲氏らの均衡派とがあり、新5カ年計画などに示された慎重な姿勢は均衡派の批判をそらすため、という見方もある。
 その当否はともかく、主流派が無理押しせずに改革を進めようとしているのは、まだ基礎が十分強固ではない中国経済の現実に適合したもの、とわれわれは考える。
 問題はこの先、指導者交代などをめぐって内部対立が激化し、政治の混乱を招くような危険を避けることだ。81歳の小平氏は最近、引退をほのめかす発言をした。中国の新聞はその部分を載せなかったというが、大きな威信を持つ同氏の進退が、主流派の気がかりの種でもあることがわかる。
 開放政策の一方で、高級幹部や子弟の不正、犯罪が増えているという。こうした傾向が改められなければ、大衆が改革への協力を惜しまぬ局面は期待できまい。
 社会主義経済を活性化させる手だてを探るのと同時に、それに応じた新しいモラル作りも求められている。中国の経済改革のになう任務の重さを示すものといえよう。
 
 
 
 
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