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1985/10/01 朝日新聞朝刊
(社説)中国の「回りながら急ぐ」道
中国に「四化」という言葉がある。もとは近代化の基本をなす農業、工業、国防、科学・技術の「4つの現代化」を指したが、最近は人事政策の面でよく使われる。
幹部の若年化、革命化、知識化、専門化というのがそれだ。9月後半に開かれた一連の会議で、中国共産党が指導者クラスのかなり大幅な新旧交代を行ったのも、この原則を建前としている。
中国はきょう、建国36周年を迎えた。革命で生まれたこの国は、ここ数年、産業近代化によって経済を発展させる施策を進め、外国にも大きく門戸を開きつつある。この政策は中国だけでなく、わが国を含む近隣諸国にとっても好ましいものである。
革命以来の指導者層が年々高齢化して、こうした政策の展開にはふさわしくなくなり、大小さまざまな問題が起きるのは避けがたい。幹部の「四化」はその対策のひとつだが、それだけですべてが解決するわけではむろんない。
中国の新聞には「学歴や専門知識があっても、指導者としては不十分」といった論調も出ている。若返りが、実情に合わない急激な変化を起こすことへの懸念があるのだろう。こうしたなかで、党全国代表会議の最終日に行われた陳雲規律検査委第1書記の演説が注目を集めた。
現指導部内では  小平氏と並ぶ経歴を持つ陳雲氏は、若返りの基本路線には賛意を表しつつも(1)一部の農民に、もうかる商工業に手を出したがり、食糧生産をおろそかにする傾向がある(2)共産党は社会主義をやるものであり、市場による調節は副次的(3)金銭万能主義を改め、幹部や子弟の不正、汚職を根絶せよ、などと訴えた。
陳雲氏は「速やかならんと欲すれば、すなわち達せず」とも語った。急がば回れ、というわけである。こうした氏の憂慮がかなり的を射ていることは、中国内外で広く認められている。
水害などの影響もあり、中国の食糧生産はことし相当に落ちこむ見通しだが、その原因のひとつに農民の“穀物離れ”が挙げられている。投機的な商品流通が物価に悪影響を与えたり、かなりの高官までが利権に走るような現象も、つとに知られている。
これらをつきつめると、昨今の中国は統制を弱めすぎたために、一部の混乱を招いているのではないか、ということになる。末端の生産者に自主権を認め、彼らの意欲を引き出すことによって生産拡大をめざす指導部としては、痛しかゆしの状況でもある。
中国共産党は若返りを断行し、彼らの手で近代化路線を推進し、経済体制改革も続けていく方針を明らかにした。その頂点に立つ  小平氏らの立場は「中国的社会主義を築く過程では、当然さまざまな問題が出る。それぞれに対応して解決をはかればよいが、少し慎重に構えて、マルクス主義の道筋を踏みはずさずにやって行こう」というものだ。
党全国代表会議で承認された第7次5カ年計画の要綱も、そのような色合いを帯びている。来年からの工業・農業生産の伸び率は年7%以下に抑え、余力を残しながら各種の懸案解決につとめて、今世紀末までの経済成長の目標はあくまで達成を目指す。急ぎながら、回るところは回る、という姿勢だ。
建国後36年を経た中国は、なお立ちおくれた10億人の経済を安定軌道に乗せる努力を続けねばならない。兵力も削減し、生産に力を集中するという現指導部の方針はわれわれにとっても理解できるものである。「うまく回ってほしい」と望んでおきたい。
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