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1985/05/11 朝日新聞朝刊
(社説)中朝会談の意味するもの
中国の胡耀邦総書記と、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金日成主席とが国境の町、新義州で会談した。
会談は今月5、6の両日だったが、発表は終わったあとの7日。それも内容については「両国の友好関係を一層発展させる問題と相互に関心のある一連の重要問題」を話し合い、完全な見解の一致をみたとあるだけで、どちら側が持ちかけた会談なのか、どんな点で一致したのかわからない。
むろん、推測は可能だ。この会談は米韓首脳会談を受け、南北朝鮮の対話再開を今月後半にひかえて行われた。北の金永南外相訪ソで南北国会会談へのソ連の支持をとりつけたり、中国魚雷艇反乱事件の処理などで中韓接触がふえた要素もある。こうしたなかで中朝双方は、対外的にも「見解の一致」を確認する必要があったようだ。
北朝鮮としては、南北経済会談と赤十字本会談、さらに韓国側の回答待ちになっている国会会談の行方も含めて、南北対話の主導権を求めている。
しかし、それらが順調に運んだところで、朝鮮半島の情勢が一変するとはいい切れない。北の主張する3者会談、あるいは米・北朝鮮の2者会談などをめぐって長いかけ引きが続くとみる方が、むしろ自然だ。
とすれば、北の友好国、とりわけ中ソの支持を固めておくことは、米韓側に対する立場を強めうる。今回の中朝首脳会談に対する北朝鮮の期待も、そこにあろう。
片や中国にとって、北朝鮮は最も長期間にわたって関係の良い友好国である。この関係を維持することは、自国の安全保障からも、また対ソ戦略の上でも望ましい。
それのみならず、いまの中国は近代化建設の必要から対外開放政策をとり、経済力の増した韓国とも関係改善を求めている。韓国の友好国である日米との経済関係はすでに大きく発展している。こうした政策の妥当性を、中国は強調したいにちがいない。
胡耀邦氏は訪中した宇都宮徳馬氏らに、客観的状況が許せば米・北朝鮮の2者会談の場所として北京を提案する考えを示した。朝鮮半島全体の緊張緩和に向けて、中国が積極的に動こうとする姿勢がうかがえる。
このような中朝が、現段階の互いの立場を確かめ合い、緊張緩和に向けて共同歩調をとる点で「見解の一致」を得たとすれば、意義は大きいといえよう。
従来、閉鎖的な体制だった北朝鮮は、昨年秋に施行された合弁法などをテコに、西側に門戸を開き始めた。いまの中国と似通った道であり、中朝がこの面で経験を交流するなら、変化は加速されるだろう。
こうした動きは、南北の関係にも微妙に影響しよう。韓国は北に警戒する一方で、対話には積極的に応ずる構えをとっている。政治、経済両面のねらいから対中改善につとめ、88年のソウル五輪を中ソ参加のもとに成功させようと意欲を燃やしている。
これらは、現実的な対応であり、達成可能な目標といえる。だが、かんじんなのは、それによって南北朝鮮間の関係が着実に改善され、朝鮮半島の緊張が緩和されることであり、その逆であってはならない。
敵対してきた両者が心からの握手にいたる道程は、生やさしいものではあるまい。困難を克服するための忍耐が、当事者に求められる。わが国を含む関係諸国も、実のある対話が進むよう、進んで協力すべきだ。
ボン・サミットの政治宣言に、朝鮮半島の統一促進が盛られたのはよかった。それをどう実行するかが、これからの課題である。
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