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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1985/04/21 朝日新聞朝刊
(社説)兵になりたがらぬ時代
 
 中国に「よい鉄はクギにしない。よい人は兵にならない」とのことわざがある。兵員100万人の削減を明らかにした胡耀邦党総書記の言明で、それを思い出した。
 兵士の質が落ちてもよい、というわけではない。建前としては、その逆だろう。だが、「決定的な要素は兵器よりも人」と主張し、兵力の大きさを誇ってきたかつての中国軍のあり方からすれば、大きな転換である。
 軍縮の声の高いニュージーランドでの発言というタイミングもさることながら、いくつかの要因を指摘できる。
 ひとつは、国際環境の変化である。主敵だったソ連との関係改善が進み、米国とは軍事技術協力を受ける間柄になった。これら超大国に対し、兵器面での劣勢を兵力で補う必要が薄れてきた。
 経済の近代化を第1課題とする中国は、そのための財源を求め、相当期間にわたる平和な環境を欲している。国家財政を圧迫する軍事支出はなるべく切りつめたい。
 これまでの中国軍は、農村の余剰人口を吸収する役割も果たしたが、にわか成り金の「万元戸」も生む生産責任制などの採用で状況が変わった。農業や第三次産業を伸ばし、除隊する兵士たちを受け入れることが可能になりつつある。
 兵員削減を、指導部が軍掌握のテコにするねらいもあろう。懸案の階級制復活はまだ実施できないでいるが、大規模削減となれば、老幹部も去るべきは去り、残るものもあまりぜいたくをいえない局面になる。
 一時は500万人に達した中国軍は、1980年以来の削減や他部門への移管で400万人規模になっている。今年から来年にかけてさらに100万人減らそうという今回の計画は、軍近代化をはかりながら若返らせ、扱いやすくしようという指導部の方針でもある。
 以上が削減の根拠になっていそうな要因だが、実は、そんなに多くの兵士が集まりにくくなってもいるのだ。
 軍機関紙「解放軍報」によると、一人っ子で甘やかされて育ち、ふらっと家に帰ってしまうような赤ちゃん兵が増えているという。若い兵士が上官を射殺したさきの魚雷艇反乱事件も、その辺に根があるらしい。
 青年たちが人民解放軍への入隊をあこがれた一昔前とは、ちがってきている。この傾向は、中国だけに限らない。平和が続く社会につきものの現象といえようか。
 もとより、中国が兵力を縮小したからといって、全面的な軍縮に進んでいるとはいえない。昨年の国慶節パレードにはICBMも登場し、核戦力の増強を急いでいる。米国から魚雷や駆逐艦エンジンを買い入れ、海軍力充実につとめてもいる。
 だが全体としては、アジアの大国である中国の指導者が、他地域で軍事的役割をになうことをこばみ、兵力削減などによって平和的意図を強調するのは、逆の場合に比べれば、はるかに好ましい。
 隣国に住むわれわれとしては、中国のこのような政策が続くよう望む。また他の諸国、とりわけ超大国が平和への志向を強め、緊張緩和が進むことを期待する。
 約2300年前の思想家、孟子は「春秋に義戦なし」と述べた。諸国が覇権を競い合った春秋の時代には、正しい戦争はなかった、というのである。
 それ以来、数多くの戦争があった。どこから見ても義戦といえるほどのものが、そのうちいくつあったろうか。国を守るための兵力、平和を守るための軍備といったスローガンも、それほど深遠なものとはいえまい。
 
 
 
 
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