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(2)ふれあいバス事業への統合化
 基本的にふれあいバスは高齢者、障害者及び一般村民が乗車可能な乗合型の交通サービスを想定する。現在の福地村内の公共交通事業として、福祉バス、通学バス、路線バスへの運行補助がおこなわれており、年間2076万円が支出されている。
 今後ふれあいバスは今回の実験で誘発された潜在的交通ニーズの対応に加えて、スクールバス、スケート、プールバス、福祉バスの統合を検討し、それによるコスト削減を視野に入れた取り組みが望まれる。
 一方、高齢者、障害者専用の個別輸送として、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)の運行を別途行っていくことを検討する。
 
 
ふれあいバスは村の公共交通事業の多くを担っていく
 
〇ふれあいバス事業のサービス範囲と事業統合の方向
 
 
(3)低コスト構造の構築
(1)福地村をモデルとしたコスト予測
 ふれあいバスの1便あたりの乗車人員実績は、基幹路線を除き、9人/便以下なので、コスト的に有利なジャンボタクシー等の活用を中心に検討する。
 また、基幹路線や地区別のスクール輸送(麦沢地区小学生18人、中学生10人、小泉20人、高橋14人)対象者数からみて運転のしやすい、ノンステップバス型の小型バス等の導入も検討していく。また、運賃以外の収入(広告収入など)の収入源を確保し、低コストで維持できるシステムを構築する。
 (福地村では、すでにシステム開発を行っており、ランニングコストのみを算定した)
 
(参考1)採算性の検討
 今回の実験結果を参考に、次の前提により、ふれあいバス事業を行うと、1日あたりの維持コストは、村内線(西、東計)で約39千円、基幹路線で12千円となる。 年間ベースに換算すると村内線で約1,430万円、基幹路線で470万円程が見込まれる。
 
〇前提条件
・運行ルートは実験と同様
・投入車輌は、村内線、ジャンボタクシー2台、基幹路線は小型バス1台
・運行路線距離、運行便数
 
    村内東 村内西 基幹
設定運行便数 (A) 6便/日 6便/日 4便/日
実質運行回数 (B) 4便/日 4便/日 4便/日
路線延長 (C) 32.8km/便 28.9km/便 15.1km/便
平均運行距離(実験実績) (D) 26.6km/便 19.6km/便 15.1km/便
実質運行距離 (B)×(D) 106.4km/日 78.4km/日 60.4km/日
 
〇収入
 
  村内東 村内西 基幹
単位運賃(A) 100円/回 100円/回 300円/回
利用者数(B) 20人/日 15人/日 20人/日
収入計(A)×(B) 2000円/回 1500円/回 6000円/回
(参考)*実験後半実績:村内東15.2人/日、村内西12.5人/日、基幹17人/日
 
〇支出(日ベース)
 
  村内東 村内西 基幹
車輌運行費用 18,000円/台
(@169円/km)
14,000円/台
(@169円/km)
18,000円/台
(@298円/km)
予約センター 5,350円/日
(16,040円/日
×1/3)
5,350円/日
(16,040円/日
×1/3)
5,350円/日
(16,040円/日
×1/3)
支出計 23,350円/日 19,350円/日 23,350円/日
注)予約センター費用内訳:人件費12,000円/日、通信費及び消耗品123,000円/月
 
〇維持コスト(支出計と収入計の差引)
 
 
 
(参考2)小高町eまちタクシーのコスト構造
 小高町eまちタクシーは町内3路線を計3台で運行している。各路線の運行間隔は30分〜1時間であり、1日10便を運行している。
〇収入の部
 
科目 金額
乗車収入 6,740,600円
広告収入 350,000円
サービス収入 299,000円
雑収入 191,673円
町補助金 8,400,000円
商工会負担金 100,000円
合計 16,081,273円
 
〇支出の部
 
科目 金額
タクシー借上料(3.5台) 12,050,000円
人件費(2人) 2,747,500円
消耗品費 172,149円
水道光熱費(家屋費) 214,939円
申請委託料 136,500円
雑費 238,901円
その他 420,000円
合計 15,979,989円
(国土交通省東北運輸局資料)
 
 
(2)他市町村で導入する場合の初期費用
 今回のDRTシステムを福地村以外のエリアで展開する場合、導入にあたって、初期費用が発生してくる。運行車両を、運行委託費に含むものとし、今回と同規模の路線(3路線)、停留所数とみなすと概ね600万円程度が見込まれる。
 
〇システム導入にあたっての初期費用見込み額 (単位:千円)
 
区分 内訳 概算見込み額
システム構築 ・予約受付・管理機能
・運行ルートの計算機能
・GPSによる車両管理機能
・利用者リスト、運転計画表作成
・運転士への配車計画送信
5,400千円
システム関連機器 ・PC1台(モニター2台、プリンタ1台)
・携帯電話2台
・一般電話機器
200千円
通信回線(契約料) ・電話回線・携帯電話契約料
・インターネットプロバイダ契約
・GPS車両管理システム利用契約料
120千円
運行開始準備、広報等 ・停車地ポスト作成、設置
・車両ステッカー、行先表示、案内等
・広報費用
300千円
6,020千円
 
 
(4)事業主体の方向
 方法としては、村直営、車両を村で所有して、運行を業者委託する方法。あるいは、車両を含めて全部委託する方法がある。
 全国的には、運輸事業としてのノウハウや安全管理の面、車両の維持管理の面から、委託方式が主流となっている。
 ただし、委託する場合も運行ルートや運行回数、運行ダイヤに地域ニーズを反映させ、地域の生活交通に行政ができるだけ主体的にかかわっていくことが必要と考える。
 また、近年は、NPOが運営主体となるバスもある。地域団体あるいは地域の企業も運営に参加出来る方法も検討が必要と考える。
 
参考:四日市のNPOが運営するバス運行概要(資料:運輸と経済 2003年7月号)
 
表7-2 生活バスよっかいちの運行概要
運行経路 スーパーサンシ〜東垂坂〜いかるが〜別名〜四日市社会保険病院〜大宮町〜かすみがうら駅
運行時間 8時〜18時台
運行本数 1日5.5往復
運行間隔 2時間間隔
路線距離 8.4km
停留所数 21ヶ所(約200〜300m間隔)停留所以外での乗降は不可
運行日 週5日間(月〜金(祝日振替休日も))運転
 
乗車人員(2003年3月)
1日あたり
乗車人員
75人 1便あたり
乗車人員
約7人
 
図7-2 ルート概要
 
 

STS(スペシャル・トランスポート・サービス):高齢者や障害者など移動に困難を伴う層を対象におこなう個別輸送サービス
バスの車両区分について
・大型:全長9m以上、乗車定員50人以上
・中型:全長7〜9m以上、乗車定員30〜49人
・小型:全長7メートル以下、乗車定員29人以下







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