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第3章 公共交通ニーズの把握
3-1. 福地村民の移動ニーズと生活交通確保の課題
 移動ニーズ調査より、福地村内居住者の移動目的地は、50%以上が八戸市、村内が約30%、残りがその他の町村と推定される。
 特に、アンケート全体の傾向や自由意見に複数記載があったもの、高齢者・障害者ヒアリング結果のなかから、現状の公共交通への福地村民の認識として特徴的な点を以下に示す。
 
・生活の中心は八戸市に向いており、八戸市までのマイカー依存度が高い。
・国道104号から離れた団地・集落で、交通不便との意識が高い。
・社会参加、コミュニティ活動を含む娯楽目的の移動環境への不満が高い。(潜在交通ニーズの存在)
・青い森鉄道に対しては、運行時間帯への要望と、八戸駅で最大30分になる乗継時間への改善要望がある。
・通学時における自動車での送迎を負担に感じている親が多い。
・乗合バスについては、八戸中心部発の終バス時間の繰り下げと運賃の割引に対する要望がある。
・行政がおこなっている公共事業として隣接する名川町の100円バスの知名度が村民の間で高い。
・高齢者・障害者の外出行動は、固定的になっている。(外出は週2回程度でそのうち、1回は福祉バスを利用しての村内温浴施設での入浴、もう1回は移送サービスを利用した通院など)
 
 なお、次ページに、福地村民の移動ニーズとそれに対する既存の公共交通サービスの状況からみた生活交通確保の課題を整理する。
 
福地村民の移動ニーズの特性と生活交通の確保
 
 移動ニーズ調査や生活交通の課題、持続する公共交通としていくための採算性向上の必要性を踏まえ、公共交通サービスの改善方向を次のように立案する。
 
(1)モビリティギャップの改善
(1)地域のモビリティギャップの改善
 国道104号沿線以外の団地、集落の公共交通は限られており、その多くが公共交通空白地域あるいは不便地域となっている。よって、これらの地域においてはモビリティミニマム確保のため、公共交通の導入を図る。なお、サービスエリアとしては、目的地の半分以上を占める八戸方面まで接続する必要があり、既存の幹線である南部バス「八戸〜三戸線」(17往復/日)を活用する。
 
図3-1 村内のモビリティギャップの改善方向
 
(2)移動目的別のモビリティギャップの改善
 通学、通勤、通院、買物、娯楽等各移動目的ごとに異なる移動ニーズが発生しているため、それらにできるだけきめ細かに対応できる公共交通サービスを提供するフレキシブルなシステムの導入について検討する。
 
(2)一般公共交通の利用可能性の拡大
 現在、青い森鉄道苫米地駅は無人駅であり、また、既存の路線バスは、ノンステップ車両等が導入されておらず、車いすごと乗車することは難しくなっている。福祉バス等は利用目的が限定されることにより、一般公共交通においても高齢者や障害者の移動可能性を広げることを目標におく。
 そのため、車両や設備、運営面での工夫が必要であり、すべての人にアクセシブルなユニバーサル車両の導入を検討する。
 
(3)デマンドに応じた公共交通サービスの設定
 様々な形で発生するデマンドに対応していくため、DRT(需要応答型)システムの導入を検討する。
 なお、需要規模に応じ、片道10人以上の利用が見込める路線についてはバス車両、10人未満の路線についてはジャンボタクシー等により運行する。
 
(4)既存公共交通との連携
 青い森鉄道と国道104号の路線バスが八戸方面との公共交通の基幹軸となっており、一定以上のサービス水準を有していることから、新たな公共交通サービスの接続を図り、連携して公共交通全体のサービス水準をあげていくものとする。
 
(5)既存の福祉交通の利用目的、利用範囲の拡大
 現在の福祉交通として、福祉バスや社会福祉協議会のおこなっている移送サービス事業等があるが、一般公共交通の利用が困難な高齢者や障害者のために、福祉交通の分野においてもその利用範囲、利用目的の拡大について検討していく。
 
(6)持続する公共交通のあり方の検討
 現在、村として支出している2000万円の公共事業費を節減し、費用対効果を高めるため、公共交通利用率を高めるとともに、既存事業の統合などについて検討する。







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