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はじめに
漆蝋生産とローソクづくりにあたって
 昔から当地方では、漆の実のことを“木の実”と呼び、漆が日常生活の中に溶け込んでいた様子が伺うことができる。
 金山町でも昔はかなり漆が栽培され、蝋生産、漆掻きなどにより換金作物として重宝されていた。
 たまたま平成十三年度に、日本芸術文化振興会より、ふるさと文化再興事業として「漆蝋生産技術後継者養成」の指定を受けたのがきっかけで表記のことに取り組んだ経過がある。昭和初期ころまでは、かなりの農家が蝋を生産していたようである。子供たちが、木の実(漆の実)を売って小遣い稼ぎをしていたと言う古老の話がそのことを裏づけている。
 現在、漆から蝋を採るのに昔の工程で行っているところはどこにもないものと思われる。ただ、櫨蝋を使いローソクを手作りでやっている所は何ケ所かある。以前は、関東以北で漆ローソクが作られていたが、採算性の問題で関西方面で作られていた櫨蝋によるローソクに押され、昭和三十七年を最後にその技術が消えていった。
 従って、蝋しぼりも近代化され、以前の蝋生産の工程はどこでも見ることが出来なくなった。このようなことから、現在、貴重な文化財として遺されている昔からの用具を復元し、先人の遺した蝋生産・漆蝋による和ローソクづくりの技術を復活し、継承していくことは誠に有意義なことと考える。また、この和ローソクは伝統工芸という点でも文化的に貴重である。さらには、漆蝋生産の歴史が途絶えたことに鑑み、希少価値として高い評価を得ることが予想される。
 和ローソクづくりの技術を高め、品質の向上を図ることにより町の産業にすべく努力し、特色ある町づくりに寄与したいと考えている。
星 正弥
 
漆蝋の製造工程
(1)漆蝋燭の製造工程
 十一月に入って漆の葉が落ちてからの晴れた日に作業を行います。木の下にシートを引き、実かき棒と呼ばれる長い棒の先に小さい鎌のついたもので漆の実を落とします。漆はとてもカブレやすいので、木や実に触らないよう、細心の注意が必要です。
 雪が積もっても実もぎはできますが、鳥に見つけられると食べられてしまいます。
 採った実は、乾燥させます。昔はこの後続けて作業をしましたが、私たちは、冬の間、乾燥した所に置いて、翌年、実落しから始めます。
 
木の実もぎ 実かき棒で実を落とす
 
房状についた実を慎重にとる
 
(2)実落とし
 漆の木からもぎ取った房状の実を粒々に落とす作業です。目の粗いザルやジャバラと呼ばれる丸太を割り、溝をくりぬいたものに木の実の房をこすり落とします。
 飛散した粉はカブレをおこすので注意です。
 
実落とし ジャバラで実を落とす
 
房についた実を粒々に落とす
 







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