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第1章 調査の概要
1. 調査の背景と目的
 高齢者や障害者を含む誰もが利用しやすい交通体系の実現に向けて、交通バリアフリー化の促進が広く求められているが、本土との交通を海上交通に依存せざるを得ない離島においては、船舶及び港湾のバリアフリー化が重要な課題である。
 港湾での船舶への乗降においては、潮位の変化に伴って生じる港湾と船舶の高低差への対応がバリアフリー化に取り組む際の重要なポイントであり、特に、干満の差の大きい港湾や、港湾の規模が小さく、ボーディングブリッジや十分な長さのスロープが設置できない港湾においては、港湾と船舶の高低差への対応に苦慮している場合が多い。
 こうした中、大分県姫島村の姫島港において、日本財団の助成事業として(財)九州運輸振興センターがモデルタイプとして設置した特殊シェルター(高齢者向け新型タラップ、以下「新型タラップ」)は、スロープ・ステップの切替式を採用し、満潮時でタラップが急な角度になる場合には、踏み板が水平を保ったステップ式とすることで、危険を感じず、安心して利用できる。一方、タラップの角度が小さい場合には、スロープ式とすることで、車いすのまま利用することができる。こうしたことから、新型タラップは、姫島港のみならず、広く九州各地及び全国の港湾における交通バリアフリー化に資することが期待される。
 そこで、本調査は、姫島港における今後の活用・改善や九州各地及び全国への普及拡大に向けて、姫島港利用者や海運事業者・関係行政機関等の関係者に対してアンケート調査を実施することにより、新型タラップの設置効果、改善・導入に向けた課題・条件等を明らかにするものである。
 
 
 
(1)対象地域・対象施設の概要
 新型タラップの設置される姫島港をはじめ、姫島及びその周辺地域の概要を整理するとともに、新型タラップの諸元・特徴等について整理する。
 
(2)利用者へのアンケート調査
 姫島港の新型タラップの利用者に対するアンケート調査を実施し、新型タラップへの評価、改善要望等を把握・分析する。
 
(1)調査対象
 姫島村村営航路(伊美−姫島)の利用者を調査対象とし、回収数は500程度を目標とする。調査対象者は、年齢、性別、住所、利用目的等を問わず、広く利用者全般とする。
 なお、平日の利用者数は1日250人程度であり、その多くは通勤・通学のために平日は毎日利用することから、平日利用者の調査対象数は250程度とする。休日は買い物等で休日のみ利用する人がいることから、休日はこれらの人のみを対象とし、全体で500程度の回収を目標とする。2000年国勢調査における姫島村の人口は2,761人であることから、調査対象数は島民の2割弱に相当する。
 
(2)調査時期
 利用者が数回以上利用した段階でアンケートを実施する方が有効な回答を得やすいと考えられることから、利用開始後数週間を経た時期に調査を実施する。
 
(3)調査方法
 乗船時に配布、船内で記入、下船時に回収する自記式とする。配布・回収作業は、姫島村船舶課の協力を得て実施する。
 
(4)調査内容
 調査票は、以下に示す内容を含むものとしつつ、回答者の負担を軽減するため、できる限り簡潔でわかりやすいものとする。
*新型タラップ及びスロープ・ステップ切替式の認知度
*新型タラップに対する全般的な評価
*ステップ使用時(急勾配時)の評価
*スロープ使用時(緩勾配時)の評価
*さらなる改善への要望
*対象者の属性(利用頻度、同伴者、住所、年齢、性別)
 
(3)海運事業者・関係行政機関等へのアンケート調査
 今後、新型タラップを各地に普及拡大していくためには、海運事業者や関係行政機関からみた導入の効果や意向、条件等を把握することが重要であることから、海運事業者や関係行政機関等の関係者に対するアンケート調査を実施する。
 
(1)調査対象・調査時期
 (財)九州運輸振興センターが開催する新型タラップの見学会・お披露目式に参加する海運事業者や関係行政機関の関係者(30人程度)を対象とする。
 
(2)調査方法
 見学会・お披露目式当日に会場で配布、回収する自記式とする。
 
(3)調査内容
 調査票は、以下に示す内容を含むものとしつつ、回答者の負担を軽減するため、できる限り簡潔でわかりやすいものとする。
*ステップ使用時(急勾配時)の評価
*スロープ使用時(緩勾配時)の評価
*スロープ・ステップ切替式への評価(普及可能性とその理由)
*今後の導入意向(事業者)及び導入促進策の実施意向(関係行政機関等)
*普及・導入に向けたさらなる改善への要望
*対象者の属性(所属、役職、氏名)
 
(4)調査結果の総括
 アンケート調査の結果を総括するとともに、姫島港における今後の活用・改善や九州各地及び全国への普及拡大に向けた課題、求められる施策等を検討する。







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