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佐賀グランドサービス(株)
旅客サービス課
今村友美
 
 佐賀空港は平成10年7月28日に開港し早7年が経ちました。
 現在は旅客便が東京線、大阪線共に1日2往復就航しており、貨物便も1日2往復就航しています。
 なんといっても佐賀空港のウリは駐車場が700台収容ができ、しかも無料という点があげられます。
 私はそこで旅客担当(グランドホステス)をしています。お客様が佐賀空港を利用される際に最初に空港でお客様をお迎えしているのが私たちです。
 出発業務は航空券の発売や搭乗手続き(チェックイン)、手荷物受託、搭乗の御案内です。
 到着業務では、お客様のお出迎え、手荷物返却等です。
 お客様にとって安全で快適な空の旅となるようにお手伝いをしています。
 よくお客様から「東京まで行くのに福岡空港から行くのと、佐賀空港から行くのはどちらの運賃が安いか」という質問を受けます。「ほぼ同じです。」とお答えすると「あら、そうなの。駐車代も無料だし」と、佐賀空港からの航空券をお買い求めされて行かれます。
 私共ではお客様にとって快適な空の旅が提供できるように、お客様の中にお子様連れの方、お手伝いを必要とされる方がいらっしゃらないか、お声掛けを積極的に行っています。
 お客様が「何を求めていらっしゃるのか?」を一刻も早く察知し、適切な対応が行えるよう努めます。例えば旅慣れない方には、親しみのある心のこもった応対を心がけ、車椅子を必要とされるお客様には機内専用車椅子を御用意する事はもちろん、優先的な搭乗案内を行っています。
 佐賀空港は、「地域活性化」、「アジア諸国に近いこの空港が九州国際空港」として発展していく希望を込め開港しました。実際、国際線チャーター便が佐賀空港から離発着し活用されています。
 平成16年7月7日から就航した羽田空港への夜間貨物便により、佐賀空港はまさに大きく飛躍しようとしています。
 夜間貨物便の運航は、佐賀空港の新たな活用策を示すものであり、取り扱われる貨物は、九州一円を対象に集荷、配送される事から今後、九州の航空貨物の拠点として発展していく事が期待されています。来年1月には夜間貨物便の機材が貨物専用機に変更され1便最大積載量は10トンでしたが、45トンと取扱量が大幅にアップします。また中部国際空港間に1日1往復が新設されます。
 これからもANAグループの一員としてお客様がより快適な空の旅を気持ちよくご利用頂けるよう日々邁進し続けたいと思います。引き続き佐賀空港のご利用をお待ちしています。
 
 
判例トピックス 一
 東京都国立市で建設された高層マンションについて、街並みの景観が損なわれたとして、近隣住民四九人が建築主等に対して求めた、高さ二〇メートルを超える上層部分の撤去が認められなかった事例
 
 甲社は、東京都国立市の通称「大学通り」に一四階建ての高層マンション(高さ四四メートル)を建設する計画を立てました。マンションの建築計画を知った国立市は、着工から約一ヶ月後に、建物の高さを二〇メートル以下に制限する条例を施行しましたが、甲社が工事を続けたため、周辺住民乙らが条例の高さ制限を超える上層部分の撤去等を求めました。
 原審である東京地方裁判所は、市街地の景観利益を初めて認め、大学通りに面した一棟の高さ二〇メートルを超える部分を撤去することと、乙らのうち大学通りから二〇メートル以内に土地を持つ三人に対し、撤去まで月一万円を支払うことを命じました。これに対し、甲社が控訴しました。
 ところが、東京高裁は原審の判決を取り消し、乙らの逆転敗訴の判決を言い渡しました。
 裁判では、このマンションが建築基準法に違反するか、法的に保護される「景観権」「景観利益」が成り立つかが争点となりました。
 裁判所は、まず、条例施行時には工事が既に始まっていたことから、マンションは条例の適用を受けないと指摘し、違法建築にはならないとしました。そして、このマンションの建築計画を知った国立市が着工から約一ヵ月後に建物の高さを制限する条例を施行したことについて、甲社の意向を無視して、建築を一方的に制限する目的だったと批判しました。
 そのうえで、良好な景観は国民全体に多大な恩恵を与える共通の資産ですが、個々の国民が個別的な権利・利益として良好な景観を享受する地位を持つものではないとしました。そこで、乙らも個別・具体的な権利・利益を有するものではなく、マンションによる景観被害を認めることはできないとしました。
 続いて、良好な景観の形成は行政が主体となって組織的・総合的に整備されるべきであって、特定の景観について意見を同じくする一部の住民に対し、景観に対する個人の権利・利益を認めることは、かえって社会的に調和のとれた景観形成を図るうえで妨げとなるとしました。
 そして、裁判所も、大学通りの景観は潤いのある美しい街路という印象を受けると述べたものの、一般に景観が良好であるかはその性質上、優れて主観的で多様性があるもので、これを裁判所が判断することが適当であるとは考えられないとして、司法判断にはそぐわないとしました。
 従って、東京高裁は、良好な景観は国民共通の利益であって、地域住民の個別の利益とは認められないとして乙らの請求を認めませんでした。
 一審判決以降、首都圏を中心に住民が景観利益を主張してマンションの撤去を求める訴訟が相次いでおり、今回の裁判で乙らが敗訴したことは他の裁判にも影響を与えるものと考えられます。乙らは最高裁に上告する方針であり、最高裁の判断が注目されます。
(東京高等裁判所平成一六年一〇月二七日判決、読売新聞平成一六年一〇月二七日)
 
判例トピックス 二
 保険会社に対して火災保険金の支払いを請求する者は、火災発生が偶然のものであることを主張立証する責任を負わないと判断した事例
 
 乙は、自己所有の建物に家族と居住し、併せて店舗、倉庫として使用していました。乙は、甲保険会社との間で、保険の目的を建物、家財一式、商品・製品等一式とし、保険金を建物二億円、家財一式七〇〇〇万円、商品・製品等一式二億円とする店舗総合保険契約を結び、保険料四八万六三〇〇円を支払いました。
 この保険契約の保険約款には、保険契約者、被保険者(保険金請求者)の故意もしくは重大な過失または法令違反によって生じた損害に対しては保険金を支払わないとの規定がありました。
 甲と乙がこの保険契約を結んでから五日後に、乙の建物内で火災が発生し、建物四階の居室が焼け、他の階の各室にも消火活動による水損等の被害が生じたほか、建物内に保管されていた乙や家族の所有する家財、乙の経営する店舗の商品についても、一部に焼損や水損等の被害が発生しました。
 しかし、甲社は、乙側による放火の可能性があるとして火災保険金の支払いをしませんでした。このため、乙は、甲社に対して、火災によって損害を被ったと主張して、保険契約に基づいて火災保険金の支払いを求めました。これに対し、甲社は、火災の原因は保険金請求者である乙が主張・立証すべきであると主張しました。
 原審である大阪高裁は、火災の原因は保険会社が主張・立証すべきであると判断し、保険会社に火災保険金全額の支払いを命じましたが、最高裁も以下の通り、この結論を認めました。
 まず、商法の保険に関する規定では、火災で生じた損害は、火災の原因を問わず保険者(甲社)が填補する責任を負い、ただ、保険契約者または被保険者の悪意または重大な過失によって生じた損害は保険者が填補責任を負わないと定められています。最高裁は、この商法の規定は火災の発生によって損害が生じれば火災保険金請求権が成立し、保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によって生じたことは保険会社が免責されるための事由としたものであると解釈しました。
 そして、火災保険契約は、火災によって保険金請求者の被る損害が甚大であり、時に生活の基盤すら失われることがあるため、速やかに損害が填補される必要があることから結ばれるものです。さらに、一般に、火災によって財産を失った保険金請求者が火災の原因を証明することは困難です。
 そこで、商法の規定は、保険金請求者が火災の発生によって損害を被ったことさえ立証すれば、火災発生が偶然のものであることを立証しなくても保険金の支払いを受けられる趣旨であるとしました。
 このような商法の趣旨に照らせば、本件での保険契約の保険約款も、火災の発生によって損害が生じたことにより火災保険金請求権は成立し、この損害が保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によることは保険会社が主張・立証するべきであって、保険金請求者が火災発生が偶然であることを主張・立証する責任はないと判断しました。
 傷害保険に関する立証責任については、不慮の事故であることを保険金請求者が立証しなければならないとした最高裁判例があり、火災保険においても地裁・高裁では同様に判断をするケースもありました。今回の最高裁判決によって、被災者救済の可能性が広がることとなりそうです。
(最高裁判所平成一六年一二月一三日判決、読売新聞平成一六年一二月一三日)
 
西武鉄道による有価証券報告書虚偽記載問題
 西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載問題が、証券市場に深刻な波紋を投げかけています。西武鉄道は、平成一六年一〇月一三日、四〇年以上にわたり、西武鉄道の筆頭株主であるコクドと子会社のプリンスホテルが管理していた個人名義の西武鉄道株が、実際はこれら個人の所有ではなく、この両社の所有であったことがわかったとして、有価証券報告書を訂正しました。(朝日新聞平成一六年一〇月一三日)。これら個人名義の株主数は一二〇〇人であり、安定株主の比率を高めようとして従業員らが名義貸しをした可能性があるとみられています。
 西武鉄道が提出した平成一六年三月期の有価証券報告書には、西武鉄道株の保有比率はコクドやプリンスホテル等関連会社一〇社で六三・六八%と記載されていましたが、上記個人名義のものを加えると、実際には計八八・五七%となり、大株主の保有株式数を過小に記載していたこととなります。東京証券取引所の上場廃止基準では、上位一〇位までの大株主と役員の持株比率の合計が八〇%を超えた状態で一年以上経過した場合に上場廃止とすることとなっています。これは、市場での取引株数を確保して株価の乱高下を防ぐためです。西武鉄道は四〇年以上にわたり、この上場廃止基準に抵触し続けていた可能性があります。
 また、東証は、財務諸表に重大な虚偽記載がある場合も上場廃止とすることとしており、今後審査を進め、虚偽記載が市場に重大な影響を与えると判断した場合には、西武鉄道の上場を廃止することとなります。東証は、一〇月一三日付で西武鉄道株を上場廃止の可能性があることを知らせる監理ポストに割り当てました。
 また、証券取引法は、上場会社等に事業年度ごとに有価証券報告書を提出させることとしていますが、今回の大株主の保有株式数の虚偽記載は証券取引法違反にもあたる疑いがあります。
 さらに、虚偽記載が公表される前である九月中旬から下旬にかけて、コクドが他の会社に、虚偽記載を知らせないまま西武鉄道株を売却していたことが判明しました。証券取引法は、上場会社の役職員や大株主等が、立場を利用して株価に重大な影響を与える重要事実を知った場合、それが公表されるまでその上場会社の株式の売買をすることをインサイダー取引として禁止しています。但し、重要事実を知っている者同士の相対取引であればインサイダー取引とはなりません。今回コクドは、西武鉄道に上場廃止の原因となる事実が発生したことを知っていながら、その公表前に、その事実を知らない買主に西武鉄道株を売却していることから、インサイダー取引の疑いもあります。
 上場会社の情報開示書類に虚偽記載があれば、投資家が損害を被り、市場全体の信用を損ねる可能性があります。今回の西武鉄道の虚偽記載問題は投資家を軽視したものとして厳しい批判を浴びる結果となりました。
 
電子文書法の成立
 平成一六年一一月一九日、事業報告書や領収書など民間企業等に保存を義務づけている文書の電子データ化を認める電子文書法が成立しました。
 この法律により、銀行法や証券取引法など二五一の関連法が一括改正され、企業が各法律により保管しなければならない財務や税務関連の書類・帳票を文書でなく、電子データで保存できるようになったため、保管に要していた企業のコストが減ることとなります。
 財務諸表は、法人税法により七年間保存しなければならず、管理のための人件費や倉庫代がかかっていました。内閣府は、電子文書法による電子データ化による企業の経費削減効果について、産業界全体で年三〇〇〇億円と試算しています。
 具体的な適用対象は、今後国税庁などが運用ルールで定めることとなっています。役員会議事録のほか、医療機関の診療録(カルテ)や薬の処方箋などが対象に入りますが、損益計算書や貸借対照表、三万円以上の領収書は税務調査に支障が出ることを理由に対象外とする見込みです。
 この電子文書法は平成一七年四月一日に施行されることとなっています。
 
阿部法律事務所報一一月号、一二月号、一月号より転載
阿部法律事務所
弁護士 阿部三夫







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