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特集
佐賀県の運輸と観光
佐賀県 空港・交通課、道路課、港湾課、観光課
 
1 はじめに
 佐賀県は、北部九州の中央に位置し、地理的に朝鮮半島に近いため、古くから大陸との交流がさかんに行われて来ました。この地理的特性を活かして、目覚ましい成長を続ける中国をはじめとするアジアとの交流や、日本国内の交流を、観光や物流といった、人とモノの両面でますますさかんにし、本県の今後の発展につなげることが重要です。
 交流をさかんにするためには、それを支える交通基盤の整備が必要ですが、佐賀県では、平成16年度に、道路や空港、港湾といった交通基盤の整備や利用促進を担当する交通政策部を県庁内に設置し、バスや鉄道も含めた総合的な交通体系の整備に取り組んでいます。
 
2 佐賀県の運輸について
(1)旅客・貨物流動の現状について
 
 佐賀県の旅客流動量(平成13年度)は、ここ数年でやや増加の傾向にありますが、機関別の内訳を見ると、自動車が96%と大部分を占め、増加の傾向にあるものの、鉄道や船舶は減少の傾向にあります。航空機は横這いの状況です。
 
旅客輸送の機関分担率(%)
 
貨物輸送の機関分担率(%)
出典「九州運輸要覧(H15年度版)」
 
 貨物流動量は、やや減少の傾向にありますが、機関別の内訳では、自動車が97%と大部分を占めています。
 旅客、貨物とも輸送量に占める自動車の割合が、九州や全国の平均を上回っており、1世帯当たりの自動車保有台数(14年度末)も、2・1台と全国で10番目に多く、人やモノの輸送を自動車が担う傾向が強いことが窺えます。
 
(2)航空について
 
(1)有明佐賀空港の現況
 有明佐賀空港は、今年7月に開港7年目を迎えます。現在、旅客便は東京路線と大阪路線にそれぞれ1日2往復しており、開港から平成17年1月末までの国内定期便利用者は約211万人です。
 
夜間貨物便就航(H16.7)
 
 国際チャーター便は、中国、韓国、台湾をはじめ、タイ、ベトナムなどの東南アジア、イタリア、フィンランドなどのヨーロッパなどへ、これまで225便が運航され、約3万1千人の方が利用しています。
 さらに、国内チャーター便も石垣島・宮古島や北海道などに31便が運航され、約4千人の方が利用しています。
 平成16年度(1月末まで)の東京路線の利用率は74・6%と開港以来最高の数字を示し、非常に好調な状況となっています。
 このような中、平成16年10月から佐賀〜大阪便を利用して東京にも行くことができる大阪乗り継ぎ東京便が設定され、今までの佐賀〜東京間1日2往復が、実質4往復に増便となりました。
 さらに、平成16年10月から、最初の24時間の貸出し料金が1050円という「レンタカー利用促進キャンペーン」を実施するとともに、12月23日からは、空港と嬉野温泉を結ぶ乗合いタクシーの運行を開始しました。
 このように、これまで課題であった空港から各地へのアクセス手段を確保するなど、さらなる利便性の向上を図っています。
 
(2)夜間貨物便の就航
 一方、有明佐賀空港では、東京と佐賀を結ぶ夜間貨物定期便が、全日空により、平成16年7月から1日2往復で運航開始されました。
 以前は、九州〜関東間で、翌日午前中までに配達するためには、当日午前中の集荷が必要だった宅配貨物が、当日19時までの集荷が可能となるなど、夜間貨物便の利便性を活かした取組みが行われています。
 貨物取扱量は大変順調に伸びており、全日空は、平成18年1月から、
(ア)さらに伸び続ける貨物需要に応えるため、貨物専用機(B767-300F)を運航させ、貨物輸送力の大幅な増強を図る
(イ)佐賀〜東京間を1往復とし、佐賀〜名古屋(中部国際空港)間1往復を新たに開設して、併せて1日2往復運航とする
ことを昨年12月に発表しました。
 現在の運航機材と大きさ等や、1日2往復という便数も同じながら、
・貨物専用機となるため、最大貨物積載重量が大幅に増える
・中部国際空港との路線が新たに開設されることで、同空港を経由した国際貨物の利用も可能となる
ことなどから、有明佐賀空港が九州の航空貨物の拠点として発展していく可能性がさらに高まるものと期待されています。
 
(3)海上交通について
(1)港湾の概況
 佐賀県の海岸線は、延長約350kmに及び、県北部の玄界灘に面するリアス式海岸の松浦沿岸約250kmと、干満差が大きく干潟の広がる県南部の有明海沿岸約100kmに分かれています。
 佐賀県には、重要港湾の唐津港、伊万里港のほか地方港湾7港があり、すべて佐賀県が港湾管理者です。
 
ア. 唐津港
 県北部に位置する唐津港は、古くから「唐の津」と称され、大陸との交易の要衝として、また、水産基地として栄えた港で、明治以降は石炭の積出港としてにぎわいましたが、急激なエネルギー転換により石炭需要が低迷したため新たな港湾振興策を講ずることとし、外貿・内貿の公共ふ頭の整備や工業団地の造成を行うとともに、玄海国定公園の一部をなす港の東部には、西ノ浜を復元する海岸環境整備やヨットハーバー整備などの海洋性レクリェーション施設の整備を行ってきました。
 現在、国内貨物としては、石油製品や砂・砂利・セメントなどの建材、水産物などを取り扱っており、輸出入貨物としては、液化石油ガス、金属製品、金属くず、再利用資材等を取り扱っています。
 一方、唐津港は、唐津城、虹ノ松原、鏡山など風光明媚な景観に恵まれて周辺に歴史的な観光資源も多く、年間数回、大型旅客船が寄港しています。平成15年には唐津港を発着港とする「飛鳥」による屋久島クルーズを運航し、平成17年10月には、やはり「飛鳥」による韓国・済州島クルーズを運航することとしています。
 
唐津港
 
 また、平成19年4月には、長崎県壱岐との間にフェリーが就航することとなっており、現在、フェリーふ頭の整備を行っているところです。
 今後は、より高い物流・生産・レクリェーション機能を有する総合的な港湾の整備を進める計画で、アメニティの高い水辺空間を創出し、人や物が活発に交流する拠点として整備することとしています。
 
イ. 伊万里港
 重要港湾伊万里港は、「古伊万里」と称された陶磁器が遠くはヨーロッパまで積み出されていましたが、昭和に入ると石炭の積出港として栄えました。
 その後、県の工業開発の拠点として、臨港地区に工業用地の造成や公共ふ頭が整備され、造船、木材加工、食品等の企業が立地しています。その後、原木、石炭、砂利等多くの貨物が取り扱われるようになり、国際貿易港として発展してきました。
 
伊万里港
 
伊万里港
 
 特に、平成9年に韓国・釜山港との間に開設されたコンテナ定期航路は、順調に取扱貨物量が増加しており、平成10年には釜山航路が週2便に増便され、平成15年11月には中国大連港との間に新たな航路が開設され、平成16年3月には釜山航路のうちの1便が、アモイ、汕頭、塩田を結ぶ華南ラウンド航路に再編され、さらに、平成16年8月に上海航路が開設されました。このような航路の充実に伴い、平成16年の貨物取扱量は約2万5千TEUと前年比53%の伸びを示し、開設以来の取扱貨物量も9万TEUを達成しました。
 また、伊万里湾をはさんで東西に分断されていた伊万里港は、平成15年3月に暫定2車線で開通した臨港道路により一体化され、港湾機能が大きく向上しました。伊万里湾の両岸を結ぶ伊万里湾大橋は、全長651mのアーチ式長大橋で、伊万里港のランドマークとなっています。
 伊万里港は、大陸に最も近い国際貿易港として、中国や東南アジア、南米等との貿易を拡大しており、今後、ますます高まる伊万里港の機能と利便性を生かして、既存工業団地への企業誘致を推進するとともに、伊万里港の知名度を高めるため、ポートセールスを推進していくこととしています。
 
(2)旅客輸送
 本県は、玄界灘と有明海という対照的な二つの海に面しており、それぞれに独自の自然風土と文化が形成されています。
 玄海諸島の7つの有人離島には8航路が、また、長崎県の離島と本県との間に3航路が就航しており、平成15年3月末現在の旅客人員は、87万人となっています。
 これらの航路のうち印通寺(壱岐)航路が30万人と最も多く、続いて、高島航路が27万人となっています。
 ここ数年、過疎化や少子化の進行にともない、旅客数は頭打ちの状況が続いていますが、いずれの航路も島と本土とを結ぶ重要な公共交通機関であり、「海の道路」として、住民生活に不可欠なものとなっています。
 また、玄海諸島は国定公園に指定されるなど、恵まれた自然・文化資源を有しており、宝くじの宝当神社で知られる高島をはじめ、石割豆腐の神集島(かしわじま)、祇園祭の小川島といった各地で展開されている島おこし活動と併せて、海上交通の一層の利便性の向上を通じ、観光客の誘致や、交流人口の増大が期待されているところです。







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