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Break Time
ブレイクタイム
 
音楽が青春
 最近、友人と会った際、自分がリタイヤーしたあと、自由な時間ができたらどうするか、というような話題になった。特に生活のためでなく、趣味に関してどうか、といったやりとりをした。
 私の趣味は音楽を聴いたり、フォークソングを歌ったり、たまに絵を描いたり、年に一度年賀状の版画を彫ったり、旅行に出かければ写真を撮ったり、VTRの編集に好きな曲を入れてみたりといった具合である。
 音楽といっても、私はクラッシックをそれほど好んでは聴かない。ピアニシモの繊細な音には相当な神経を使うし、急に来るフォルテシモは心臓によくない。それにもうひとつ、世代的にナガラ族の走りである私にとっては、クラッシック音楽自体が何かをしながら聴く、ということが無理なものなので、特に好みの曲は別として、あまり縁がない。
 では私にとっての音楽といえば、もっぱらイージーリスニングの分野である。ドラムスやべースの効いた小気味よいロックの世界。サックスやピアノが織りなす小粋なジャズの世界。そして純朴なアコースティックの世界、すなわちフォークソングであり、これが一番性に合っているような気がする。
 私のフォークソングヘの入り口は、自分が中学生から高校生の時代、1960年から70年にかけてである。当時アメリカの大学生の間で歌われた「カレッジフォーク」がそれである。大学に通う頃には、いくらか下火になりつつあったが、私がフォークソングに陶酔したのは、男性4人のグループ「ブラザーズ・フォー」の迫力ある重厚なハーモニーと彼らの美しい英語の発音に魅せられたものだ。
 後にメンバーを募集して、フォークソンググループなるものを結成した。そのネーミングがおもしろい。あこがれの師匠であるブラザーズ・フォーにあやかって「ワンダーリング・フォー(さまよえる4人)」と命名した。それから卒業を迎えるまでの2年半、授業以外で空いた時間があれば、4人は顔を突き合わせながら歌い続けた。この瞬間がまさに私の青春時代そのものであった。
 音楽の魅力というか、すごいところは、ひとつの曲が聴き手一人一人にとって、それぞれ印象に残る思い出やエピソードがあり、あの曲を聴いているうちに、気がついたらあの時のあの場所に自分が存在している。その曲を聴いたら、その時の情景や人物が目に浮かぶ、といった特別な曲が誰にでもあるのではないだろうか。まさに、音楽が人生のバックグラウンドミュージックと言われる所以である。
 私が外国の歌を最初に聴いたのは小学校4年生のときだったと思う。先生から、明日の音楽の時間は、「オールドブラックジョー」という歌をやるので、家の人でも誰でもよいから教わって来るように、と言われた。今だったら英語の歌を歌うことは、小学生にとって、そんなに抵抗のないことかもしれないが、私にとっては全くの未知の世界であった。恐る恐るそのことを兄に話すと、よし俺が教えてやるといって、英語の歌詞を繰り返し教えてくれた。
 
 
 さて翌日、できばえは別にして、私はあつかましく手を上げて、意味もわからないまま問題のオールドブラックジョーを歌ってしまった。相当に恥ずかしかったが、私にとってこの経験は忘れられない、小さな胸がときめいたできごとだった。
 それから、4、5年後。私が高校生のとき、「おまえによい歌があるので教えてやる」といって、兄が歌ってくれた歌がある。いま思い出すと、なんとそれがあのブラザーズ・フォーの「グリーンフィールズ」だったのだ。もちろんその時は、兄の歌しか聞いていないので、彼らがこんなにすばらしいグループである、ということは知る術もなかった。いずれにしても、ある意味では兄が私の本当の音楽の師匠であったのかもしれないな、と感謝している。
 学校を卒業し、今ではメンバーはそれぞれの道を歩んでいるが、やはりグループを組んで活動していたあの頃の感動が忘れられず、ときどき楽器を持ち寄って歌ったり、たまに音楽祭に参加したりと、この歳になってもまだまだ自分の青春時代にタイムスリップしている昨今である。
 今の私には、レベルは問題ではない。すばらしいものをすばらしいと感じることのできるその気持ちをいつまでも持ち続けていたい、と思っている。
 相田みつをさんの「一生感動、一生青春」がいつも私を勇気づけてくれる。
 
北九州市港湾局
理事 藤本秀明
 
 
藍島を訪ねて
株式会社 UFJ総合研究所
国土・地域政策部 尾島 有美
 
 
はじめに
 (財)九州運輸振興センターでは、平成15年〜16年度の二年間にわたり、『九州における離島住民から見た交通バリアフリー化に関する調査研究』を実施している。弊社((株)UFJ総合研究所)は本調査業務を受託させて頂いており、一年目である昨年度は鹿児島県の27の有人離島を対象として、離島航路に就航する船舶や港と接続する端末交通機関及び旅客ターミナルのバリアフリー化の現状と、離島住民のバリアフリー化に対するニーズ調査を行った。今年度は壱岐・対馬をはじめとする北部九州の八有人離島を対象として調査を実施している。ここでは今年度調査の対象とする島の一つ、響灘に浮かぶ藍島(あいのしま)(福岡県北九州市)をご紹介させていただきたい。
 
響灘に浮かぶ小さな島
 北九州市には有人の離島が二つある。小倉の北方約3〜4km、「馬島(うましま)」と「藍島」である。馬島は周囲5・4km、面積0・26km2、12世帯49人(平成12年国勢調査)が住む小さな島である。島の形が馬に似ているので、この名前が付いたという説がある。藍島は馬島よりもやや大きく、周囲13・2km、面積0・68km2、南北に細長い形をしており、110世帯299人(同調査)が住んでいる。
 
北九州市営渡船「こくら丸」
 
唯一の足「こくら丸」
 本土とのアクセスは、小倉北区浅野の小倉発着所との間を一日に三往復する北九州市営の渡船「こくら丸」が唯一の手段。小倉を出港すると、すぐに目の前に北九州の工業地帯が現れる。工業の発展を彷彿とさせる巨大な工場群を通り過ぎると、沖合に響灘風力発電所の風車が六〜七基、ゆったりと羽を回しているのが見えてくる。移り変わる景色を眺めているうちに、小倉から20分ほどで馬島に到着、さらに15分ほどで、藍島に到着だ。







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