column
日本貨物鉄道(株)
九州支社
長野 志帆子
みなさん、貨物列車を御存知ですか?
駅のホームで列車を待っている時、たくさんのコンテナを積んだ長い列車を見かけたことはありませんか?おそらく一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?それが私が働いている日本貨物鉄道(株)(略称=JR貨物)の貨物列車です。
鉄道コンテナ輸送は、JR貨物と鉄道利用運送業者が連携して行っている輸送サービスです。荷物をコンテナに積み込み、鉄道とトラックが協同で、発送のお客様の戸口から、到着のお客様の戸口まで荷物を積み替えることなく、一貫輸送できる便利な運送手段です。
今、鉄道コンテナ輸送は地球にやさしい輸送手段として注目を集めています。
みなさん最近、「環境問題」という言葉をよく耳にしませんか?
今、地球温暖化など数々の地球環境問題が注目されていて、国や自治体、企業はもちろんのこと、私たち個人レベルでも環境保全に向けた様々な取り組みがなされています。
個人レベルではゴミ問題ですね。もちろん「ゴミはゴミ箱へ」は当然のことながら、燃えるゴミ、燃えないゴミ、リサイクルできる物等々。漠然と「環境にやさしい」といわれても??となりますが、私たちにできる小さな事から始めたらいいのでしょうね。
さて、ゴミは私たちの目に見えますが、見えないもので私たちが知らず知らずに汚してしまっているのが、人間が生きるのに必要な空気です。このなかなか気づかない空気の汚染が一番怖いのではないかと思います。
空気の汚染の代表はCO2(二酸化炭素)です。そのCO2を排出する身近な乗り物は、例えば自動車(特にトラック、バス)、飛行機や船、列車ですね。しかし、どれが無くなっても困りますが、それらをうまく利用することで、「環境にやさしい」を実行することができるのではないでしょうか?
ここで、冒頭に挙げました「地球にやさしい輸送です。」
社会的にも環境問題に対する様々な企業責任と義務が問われる中、環境負荷を低減するため、国内の中・長距離輸送をトラックから鉄道へとシフトする企業がここ数年増えています。トラック輸送から鉄道コンテナ輸送へとシフトすることにより、CO2の排出量が約8分の1になるのです。すべてをトラックにまかせず、間に鉄道コンテナ輸送を利用することにより、CO2の軽減が図れるのです。
もちろん、環境への貢献だけでなく、低廉なコスト、定時性をはじめとしてお客様にメリットがあることも挙げられます。
何かをなくすのではなく、今あるものを有効に利用していくことで、「環境にやさしい」を実行できるのではないでしょうか?
私を含め一人一人が考え実行することで、それが家庭から企業レベルとなり、もっと大きく広がっていけばいいなと思うのです。
これからも鉄道コンテナ輸送を通じ、「環境にやさしい」を考えていきたいと思います。そして読んで頂いたみなさまにも「環境にやさしい」を個人レベルから実行して頂けたら、うれしく思います。
北九州市の運輸
北九州市港湾局
響灘整備推進室 新空港開港準備室
ひびきコンテナターミナル
1 北九州港の歴史と現状
北九州港は、1963年に門司、小倉、八幡、若松、戸畑の5市が合併して北九州市が誕生したことを契機に、外国貿易の「門司港」、商業港の「小倉港」、工業港の「洞海港」の3港が合併して誕生した。
いち早く物流のコンテナ化にも対応し、今日では太刀浦コンテナターミナルを中心に西日本の国際物流拠点としての役割を果たしている。2003年のコンテナ取扱量は、約44万TEUで、活発な日中間の経済交流を背景に前年を約12%上回った。
2 環黄海圏ハブポー卜構想
(1)国際コンテナ港湾の動向
1990年代以降、世界ではコンテナ船の大型化が急速に進んでいる。東アジアと北米あるいは欧州とを結ぶ基幹航路では、今後もさらなる大型化が見込まれている。
コンテナ船の大型化と並行して寄港地の集約が進み、その結果、世界の港湾は、ハブポートとそれ以外のフィーダーポートに機能分化が進んでいる。そのため、世界の主要港湾では、ハブポートとしての地位を確保するため、大型船が着岸するために必要な大水深岸壁の建設を競って進めるようになった。
香港、シンガポール、釜山などアジアの主要港湾で大水深岸壁の建設が進む中、日本の港湾では整備が遅れ、国際競争力が低下していた。
(2)構想策定と大水深港湾の整備
このような状況の中、1995年6月、国の港湾整備の長期政策「大交流時代を支える港湾」において、北部九州が、東京湾、伊勢湾、大阪湾と並んで、中枢国際港湾を整備する地域として位置づけられた。
これを受け、1996年3月、北九州市は「北九州港響灘環黄海圏ハブポート構想」を策定した。
構想は、2020年を目標年次として、若松区響灘地区に水深15〜16m級の大水深岸壁6バースを有する高規格なコンテナターミナルを整備するものである。
響灘地区は、今後の北米航路の主力になると考えられている日本海ルート上にある。関門海峡の通峡制限の影響を受けることはなく、さらに、背後には2000ヘクタールの埋立地を有するなど、ハブポートとしての地理的な好条件がそろっている。
北九州市では、この響灘地区に大水深港湾を整備することによって、西日本地域及び環黄海圏地域から発生する北米・欧州向けコンテナ貨物の中継拠点機能を担う国際ハブポートを目指すこととした。
第一期事業である「ひびきコンテナターミナル」は、1997年12月に岸壁工事に着手、現在、2005年春の供用開始を目指して、順調に整備が進められている。
(3)アクセス道路の整備(新若戸道路)
ひびきコンテナターミナルの整備に伴い、将来的にさらに交通量が増大することが予想されることから、響灘地区から戸畑・小倉方面へのスムーズな交通アクセス確保のため、新たに洞海湾を横断する臨港道路として、全長4.5kmの自動車専用道路である新若戸道路の整備を進めている。
現在、第一期整備(延長2.3km)として、若松区浜町から戸畑区川代ふ頭までの1.2kmを港湾事業で、戸畑区川代ふ頭から同区新池町までの1.1kmを道路事業で進めており、供用開始は平成20年代の早い時期になる予定である。
環黄海圏ハブポート構想図
3 ひびきコンテナターミナルPFI事業
(1)PFI導入の目的
ひびきコンテナターミナルを環黄海圏のハブポートとして機能させるためには、効率的な施設整備を行うとともに、一元的な運営体制を構築し、アジアの主要港に負けない質の高いサービスを提供していく必要がある。
このため、これまでの行政中心の港づくりから発想を転換し、民間資金及び民間の優れたコンテナターミナル運営能力、集貨力、航路誘致力を最大限に活用するため、コンテナターミナルの整備及び運営にPFI手法を導入した。
●公共とターミナル運営会社の役割分担
区分 |
役割負担 |
整備(ハード) |
基礎構造物 |
(1)防波堤、航路、泊地、岸壁
ヤード用地造成(埋立) |
国
北九州市 |
上物施設 |
(2)ヤード舗装、ヤード照明 |
北九州市 |
(3)ガントリークレーン、ヤード内荷役機械、
受変電所、管理棟、ゲート、冷凍コンセント、
オペレーションシステムなど |
ターミナル運営会社 |
運営(ソフト) |
コンテナターミナルの運営 |
ターミナル運営会社 |
|
(2)事業概要
ひびきコンテナターミナルPFI事業では、公共が、岸壁、航路泊地、防波堤、ヤード等の基礎構造物の整備を行い、PFI事業者は自らの資金で、ガントリークレーンや管理棟等のターミナル施設の整備を行い、ターミナル運営を行う。
船会社からの荷役収入等により、市へのヤード使用料や運営経費の支払及び投資資金の回収を行うという、国内では先例のない本格的な「独立採算型PFI」である。
●施設イメージ
2000年12月、シンガポールのPSA社を中心とするグループを優先交渉者として選定した。2004年2月5日には、PSA社を中核出資者とする民間企業16社及び北九州市はPFI事業者となる「ひびきコンテナターミナル(株)」(HCT)を設立している。
PSA社は、本国シンガポールのほか10カ国14港において事業展開するメガターミナルオペレーターで、ひびきコンテナターミナルにおける集貨・航路誘致においても、そのネットワークの活用が期待されている。
4 ひびきコンテナターミナルの優位性
2005年春に供用開始する、ひびきコンテナターミナルの優位性を整理すると、次のとおりとなる。
(1)世界に認められたロケーション
ひびきコンテナターミナルは、今後も急速な経済発展が見込まれる中国に近接している。また、環黄海圏の扇の要に位置し、最大のライバルとなる釜山港と競える位置にある。これはPSA社も認めた国内唯一のロケーションである。
(2)グローバルネットワークを有する港
ひびきコンテナターミナルは、PSA社が有するグローバルネットワークの一翼をなしている。とりわけ環黄海圏においては、PSA社が運営する大連港、仁川港との緊密な連携が可能である。
(3)安価で広大な2000haの産業空間
ひびきコンテナターミナルの背後には、安価で広大な2000haの産業空間が広がっている。
この空間は「北九州市国際物流特区」による規制緩和や、市独自に制度化した特区条例に助成金をプラスすることによって、国内で唯一、日本の産業の空洞化を食い止めることのできる、港湾一体型産業空間となっていくことが可能である。
(4)新しい港づくりのキャンパス
新しい港であるひびきコンテナターミナルでは、PFIの導入、海外のメガターミナルオペレーターの参画、単一のターミナルオペレーターによる複数バースの一元的運営など、従来の概念を超えた新しい形による港づくりが期待されている。
5 ひびきコンテナターミナルの供用開始に向けて
(1)競争力のある料金とサービスの提供
ハブポートを目指すターミナルでは、安い料金と質の高いサービスを提供することが必要である。
そのため、ひびきコンテナターミナルの運営者であるHCTに対しては、公的融資制度やヤード使用料の初期低減化などの措置を講じており、加えてHCTにおいても徹底的なコスト削減を行い、釜山港に対抗できる料金設定を進めている。
また、ターミナルオペレーターとしてのPSA社のノウハウを最大限に活用することで、高度化する物流に対応するとともに、顧客である船社や荷主のニーズに対応したきめ細やかなサービスを提供していく。
さらにタグボート料金や入港料、岸壁使用料といった荷役料以外の港費についても、国際競争力のある料金が設定できるよう準備を進めている。
(2)集貨・航路誘致の基本戦略
HCTは、国際競争力のある料金とサービスをベースに、PSA大連、PSA仁川、PSAシンガポール本部とも連携を取りながら、船社や荷主に対して、積極的なセールス活動を展開している。HCTの集貨・航路誘致の基本戦略は、表1のとおりである。
表1 HCTの集貨・航路誘致の基本戦略
(1) |
国内背後圏のローカル貨物をベースにして、基幹航路及び環黄海地域の港とを結ぶ航路を誘致する。 |
(2) |
(1)で誘致した航路に対し、集貨活動を展開する。 |
(3) |
基幹航路とフィーダー網がセットできた段階で、トランシップ貨物の集荷を行う。 |
(4) |
(3)と並行して、国内地方港とひびきを結ぶ国内フィーダーサービス網を構築する。 |
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(3)ポートセールス活動
供用開始に向けて、北九州市は、HCTと連携しながら、積極的なポートセールス活動を展開している。
主な活動実績と予定は、次のとおりである。
・上海国際港湾博への出展
5月11日〜14日
上海国際博覧センター
・中国ポートミッション派遣
7月5日〜9日
上海・武漢の企業を訪問
・国際総合物流展2004年への出展
9月14日〜17日間
東京ビックサイト
来場者14412名
・大連ポートセミナー
10月14日
大連・シャングリラホテル
・仁川市と物流等にかかる交流協定を締結
11月4日
韓国・仁川
・ソウルポートセミナー
11月5日
ソウル・ロッテホテル
・東京セミナー(予定)
2月8日
東京・赤坂プリンスホテル
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