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2 バリアフリー化の現状と問題点
 ここでは、瀬戸内町の交通網と外出行動の特徴を踏まえ、加計呂麻島〜古仁屋と、瀬戸内町内〜鹿児島市内の外出行程に即して、バリアフリー化の現状と問題点を整理した。
 
(1)加計呂麻島〜古仁屋(瀬相〜古仁屋〜生間航路)
(1)加計呂麻島における陸上アクセス
 加計呂麻島の瀬相港、生間港では、船の発着時間に合わせて港と各集落を結ぶバスが運行され、全便でダイヤ接続が図られている。島内はすべてフリー乗降となっている。
 また、バス運転手と乗客が顔なじみであることを活かしたきめ細かな人的な介助を行っている。
 
(2)加計呂麻島の港のターミナル
 1995年に新設された生間港の待合所は、身障者用トイレの設置、車いすの配備がなされている。瀬相港の待合所はバリアフリー化に未対応であるが、周辺の道路整備に併せて待合所を新設する計画があり、バリアフリー化された施設となる予定である。
(3)古仁屋港のターミナル
 現在の古仁屋港待合所は車いす使用者等の利用は困難である。古仁屋港の港湾整備に合わせて、2006年度を目標にターミナルビルの新設が計画されている。
 
(4)古仁屋における陸上アクセス
 古仁屋の市街地は港と近接しているため、徒歩での移動が可能である。また、路線バスの一部は古仁屋港前まで乗り入れているが、定期航路の発着場とバス停は若干離れている。バス車両は中古車であり、低床車両は導入されていない。
 
(2)瀬戸内町内〜鹿児島市内(鹿児島〜喜界〜知名航路、鹿児島〜那覇航路)
(1)奄美大島における陸上アクセス
 名瀬港では、鹿児島〜那覇航路の鹿児島方面向けと上下ともバスが各2便ずつ接続している。鹿児島〜喜界〜知名航路は、名瀬港、古仁屋港とも利用客が少ないことなどから、路線バスと航路の接続はない。島内のバス車両は、ほぼすべてが中古車である。
 
(2)名瀬港のターミナルと乗下船
 名瀬港ターミナルビルは、エレベーター、身障者用トイレ、点字ブロックの敷設等のバリアフリー化対応がなされている。身体障害者協会等によりバリアフリーウォッチングが実施されており、券売所の窓口や記入台が車いすでは利用しにくいことが指摘されている。
 名瀬港にはボーディングブリッジが設置されており、鹿児島〜那覇航路の乗下船に使用されている。
 
(3)鹿児島港での乗下船とターミナル
 鹿児島〜喜界〜知名航路の発着する本港、鹿児島〜那覇航路の発着する新港とも、乗下船にはタラップを使用するが、船型の大きな鹿児島〜那覇航路では使用するタラップが長く、勾配も急なため、上り下りしにくい。マリックスラインでは、車いすを使用している人や足が不自由な人に対して、2階の車両甲板まで自動車で上がり、船に備え付けの車いすで福祉優先室まで案内している。
 
VI 鹿児島県の離島における交通バリアフリー化に向けた提言
 本提言は、鹿児島県の離島における住民ニーズを踏まえたシームレスな交通バリアフリー化の実現に向けて、その推進方策等を各関係主体に対して提案するものである。
 
1 鹿児島県の離島における交通バリアフリー化の問題点
 鹿児島県の離島の海上輸送における交通バリアフリー化の問題点として、「港における乗降」「移動経路における段差の解消」「船内及び港におけるトイレの問題」「港までのアクセス手段の確保」「係員による案内・介助の充実」の5点が特に重要である。
 
2 鹿児島県の離島における交通バリアフリー化に向けた基本的な考え方
(1)鹿児島県の離島における交通バリアフリー化の意義
 鹿児島県の離島における交通バリアフリー化の意義は、年齢や心身の状態にかかわらず、すべての人が普通に暮らしていける社会を実現する必要があるという「ノーマライゼーション」の考え方に立ち、離島で生活する高齢者や障害者が「普通の生活」を送るための基盤となる離島航路を利用する際の壁(バリア)を取り除くことである。
 また、全国的にみて高齢化が一足早く進展している離島においては、地域社会の活力を維持・増進していくためにも、高齢者の自立と社会参加が不可欠となる。
 
(2)交通バリアフリー化実現に向けた各主体の責務
 交通バリアフリー化の実現に向けたハード面の整備にあたっては、交通事業者や港湾管理者が直接的な責務を負っている。ただし、離島航路のバリアフリー化にあたっては、利用者が少なく交通事業者等が十分な資金を確保できないため、国がノーマライゼーションの実現という観点から、資金確保に対してより大きな責任を果たすことが求められる。
 
(3)交通バリアフリー化に期待される効果
(1)高齢者・障害者等の外出の自由度の向上や外出機会の拡大
 交通バリアフリー化に期待される最大の効果は、高齢者や障害者等の外出の利便性・安全性が高まり、外出の自由度の向上や外出機会の拡大につながることである。言い換えれば、高齢者や障害者等の生活の質を向上させることが交通バリアフリー化に期待される最も重要な効果である。その中でも、住民アンケート調査結果からみると、外出範囲(目的地)の拡大と外出頻度(回数)の拡大が特に期待されている。
 
(2)外出に伴う経済的・時間的・精神的負担の低減
 交通バリアフリー化により高齢者や障害者等が1人で外出できるようになることで、これまで介助のために同伴していた家族等の時間的・精神的負担は軽減され、迷惑をかけているという本人の精神的負担も軽くなる。また、交通のバリアフリー化によって、車いす使用者の自動車航送費用や、港までの交通手段としてバスが利用できずにタクシーを利用する場合の運賃など、外出時の移動費用も軽減される。
 
3 今後の交通バリアフリー化の方向性と推進方策
(1)利用者の視点に立った交通バリアフリー化の基本方向
(1)利用者ニーズや地域特性へのきめ細かな対応
 高齢者・障害者等における移動の制約は、年齢や障害の種類・程度等によって多様であり、また、各地域によって住民の外出行動の特性や交通条件もさまざまであることから、利用者の視点に立った交通バリアフリー化を進めていくためには、利用者ニーズや地域特性を踏まえ、きめ細かな対応を行っていく必要がある。
 
(2)交通バリアフリー化の方向性と推進方策
(1)船舶の代替やターミナルの新設を契機とした交通バリアフリー化の推進
 交通バリアフリー化に関する問題点を抜本的に解決するには、船舶や車両の代替時、港湾施設の大改良時にバリアフリー化対応とすることが第一である。この時に重要なことは、設計の初期段階から高齢者・障害者等の意見を把握・反映し、実際に利用しやすい船舶や施設等とすることである。法律に定められた条件を満たすのはもちろんのこと、基本構想や基本設計の段階から案を公表し、利用者ニーズを反映させていくことが求められる。
 
(2)既存設備・施設の簡易な改良の推進
 交通バリアフリー法では、既存の船舶・旅客施設等のバリアフリー化は努力義務とされるが、事業者の採算状況や行政の財政状況が厳しい中、船舶の代替やターミナルの新設の実現には長期間を要する場合も多いことから、利用者ニーズからみて優先度・緊急性の高い事項のうち、投資額が比較的小さい簡易な改良については、積極的に進める必要がある。
 
(3)人的な対応による交通バリアフリー化の推進
 船員・係員等による人的な案内・介助等のソフト面での対応は、ハード面での対応が困難なものの不足を補うという意味だけでなく、ハードが十分に整備されている場合でも、船員や係員等が温かい心を持って接するという心構えの意味で重要な要素であることから、すべての船舶・航路において、積極的に取り組んでいく必要がある。また、一般利用者にも積極的に協力してもらえるよう、事業者や国・地方自治体においては、一般利用者の理解を深めるような呼びかけ・働きかけを行っていく必要がある。
 
(4)交通サービス自体の維持・拡充
 自家用車を運転できない高齢者や障害者等にとって、港までのアクセス手段となる路線バス等が維持され、その利便性が向上すること自体が交通バリアフリー化の手段である。一方で、バス事業単独では採算性を確保することが難しく、今後は行政の責任でバスの運行を維持するか、もしくは廃止するという選択が迫られるようになってくることから、路線バスの維持方策を交通バリアフリー化の観点からも検討していく必要がある。
 具体的な推進方策として、「離島航路や路線バスの多機能化」が想定される。
 
4 交通バリアフリー化の実現に向けた課題
 交通バリアフリー化の実現に向けた課題として、「関係主体の連携体制の構築」「公的支援制度の活用・拡充」「法制度の整備と技術開発の推進」があげられる。
 
ブレイクタイム
 
 
新しい集客資源の創出!
 福岡市は「おもてなしの心に満ちた国際集客文化都市」を目指し、ビジターズ・インダストリー(集客産業)の振興に取り組んでいます。それは「都心部の機能強化」「魅力づくり」「エンターテインメント・文化芸術による元気の創造」等を柱としています。その一環として、福岡市博多区の臨海部に位置するコンベンションゾーン「博多ぴあトピア」を数年間掛けて整備しています。
 
ゾーンの紹介
 このゾーンは以下の4つの機能、施設により構成されています。
(1)第1の機能・・・コンベンション機能
 大規模なコンサートやスポーツ会場となるマリンメッセ福岡、様々な国際会議が行われ今年度は国際青年会議所世界会議福岡大会が開催される福岡国際会議場、中規模のコンサートや会議の会場となる福岡サンパレス、大相撲やコンサートが行われる福岡国際センター等から構成されています。
(2)第2の機能・・・商業機能
 ベイサイドプレイス博多埠頭には物販・飲食機能が、福岡サンパレス、福岡国際会議場、マリンメッセ福岡にはそれぞれ飲食の機能を備えています。
(3)第3の機能・・・交通機能
 博多港国際ターミナルには韓国釜山との間の国際旅客航路の船が発着しており、ベイサイドプレイス博多埠頭及びその付近からは志賀島や海の中道等への博多湾内航路、湾内遊覧船、壱岐・対馬・五島航路の船が発着しています。
(4)その他、緑地や緑道等から構成され、そこには博多港開港記念碑や引揚記念碑、博多山笠ゆかりの櫛田神社浜宮等があります。
 これら様々な機能が28haのエリア内に集積し、特にコンベンション施設がこのような狭いエリアに集中している事例は日本では他に見当たりません。
 
近年の状況
 ゾーン内では以下のように少しずつ状況変化しています。
(1)施設利用者の増加
 マリンメッセ福岡、福岡国際センター等の各施設の利用者数が徐々に増加し、平成15年は600万人を超える方々に利用頂いています。
 
(2)日本一の国際旅客港
 博多港国際ターミナルの利用者は年々増加し、平成15年で51万人で、博多港は日本一の国際旅客港に成長しています。
(3)福岡国際センターの改装、オープン
 内外装の塗り替えや設備の更新が終わり、7月から再度オープンしています。
(4)民間投資の始まり
 前記(1)〜(3)は行政が主体になって積極的に投資した結果ですが、これに呼応して隣接した地域に、マンション建設等の民間投資も進み始めています。
 
ベイサイドプレイス博多埠頭
 
福岡国際会議場
 
(5)若者の増
 近くに5つの専門学校が開校し、行き交う、或いは居住する若者が増え始めています。
 このように数年スパンでこのゾーンを見れば、徐々に人が増えるポテンシャルを有したゾーンです。
 しかし良いことばかりではありません。各施設は立派であるが、施設間の空間の繋がりや潤いが不足しており、要するに「歩いても楽しくない」状態です。
 
新しい観光資源に
 そこで、本市は、このゾーンのポテンシャルを活かし、且つ各施設間の繋がり(ソフト)を創り出すことにより、更に活性化させて、福岡の大きな観光資源にすることを狙っています。まずは、「市民の憩いの場」や「コンベンションを目的の人が歩いてみたくなる場」、更に「市外からも見に来たくなる場(例えば横浜市の山下公園のようなもの)」を目指し、新しいソフトな機能を付加しようと考えています。
 そこで今年度から下記の取組みを開始し、活性化を図る計画です。
(1)屋外イベントの開催・実施
 大規模な既存イベント事業とのタイアップ・活用や中小規模事業の新設実施を行う。
(2)継続的に方策の検討、活性化の「動き」づくり
 民間関係者、学識経験者、教育機関、本市で構成する企画会議を組織し、継続的に検討、実施の支援を行う。
(3)外部への積極的情報発信
 パブリシティ、フリーペーパー、HP・周辺地図の制作、等
(4)屋台等の屋外店舗の展開
 海に面した緑道にパラソル・ショップ的なコーヒーショップ等の設置により、潤いを創り出す。
 
マリンメッセ福岡
 
福岡サンパレス
 
博多港国際ターミナル
 
終わりに
 同ゾーンは集客資源としての大きなポテンシャルを有しており、特に国際的な窓口機能の存在により、海外からの集客も図ることのできる可能性を有しています。数年間の時間はかかると思いますが、魅力的なゾーンに成長すると確信しています。福岡市のコンベンションゾーン「博多ぴあトピア」に注目いただき、この機会に福岡にお出でいただきたいと存じます。
 
福岡市経済振興局
集客交流部課長
永浦洋彦







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