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(2)課題への対応と静脈物流ネットワーク
 奄美大島を始めとする奄美群島では、(1)人口・産業集積が少なく、廃棄物等の発生量が少ない、(2)島内にリサイクル事業者がいない、もしくは少ない、(3)輸送費を要する等により、先にみたリサイクル資源の焼却・埋立、不法投棄などが生じている。
 本調査では、リサイクル資源の効率的かつ円滑な輸送がテーマであり、輸送に関わる課題の整理、分析を中心とするが、こうした状況を改善していくためには、リサイクル資源の集荷、選別・加工、港湾への輸送、保管、海上輸送の各段階での様々な工夫、また各地区、市町村、島全体、群島全体での検討を行うことが重要である。リサイクル資源の各段階の状況と群島全体の状況を踏まえて、奄美群島における静脈物流ネットワークの構築を検討していくことが必要である。
 
 本調査では、以下の基本的な考え方に基づいて、奄美群島各島(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)を対象に、各島の現状や将来計画等を踏まえながら、具体的な静脈物流ネットワークのあり方を検討した。
 
(1)リサイクル資源を全体の流れにおいて検討する
 リサイクル資源の島外への輸送のためには、集荷と選別、梱包等が先ず必要であるが、さらに、港湾へ輸送し、必要に応じて保管し、荷役の上、海上輸送する必要がある。それらを別々に行っていては、非効率的であったり、必要以上にリサイクル資源が山積みされたりと輸送の円滑さに欠けることになる。
 非効率的であったり、円滑さを欠くことになると、島外への搬出がコスト高になり、リサイクル資源が焼却、埋立、投棄されたりと、島内に滞留することになる。
 したがって、奄美の島々におけるリサイクル資源の効率的、円滑な輸送のためには、リサイクル資源の「集荷」、「選別等」と、輸送に関わる「港湾への輸送」、「保管」、「荷役」「海上輸送」を別々にではなく、「集荷」から「海上輸送」に至る全体の流れとして検討する必要がある。
 
(2)港湾、海上輸送の積極的な活用を検討する
 今後のリサイクル関連法制度の拡充や環境意識の向上の下で、リサイクル資源の多様化と量的増大が見込まれる。島内でリサイクルされるものを除き、島外でリサイクルされるものは、いずれにしろ港湾を通じ、船舶で海上輸送されることになるが、リサイクル資源の集荷、保管、海上輸送のあり方によりコストや円滑さは異なってくる。
 したがって、リサイクル資源を効率的かつ円滑に輸送し、リサイクルを推進するためには、奄美群島の市町村の街並みに接して位置し輸送の結節点である港湾を、様々に工夫し積極的に活用する必要がある。また、船社等との協力の下で効率的な海上輸送を実現していく必要がある。
 
(3)各地区、市町村、島全体、群島全体の静脈物流のネットワーク化を図る
 島内でリサイクルできないものは、港湾・海上輸送を通じて、島外のリサイクル工場等へ搬出する必要があるが、各地区、市町村単位では、量もまとまらず高コストになりがちである。
 また、各地区、市町村において、海岸清掃等の環境美化活動が行われているが、個々の活動はばらばらであり、非効率的であるとともに、島全体、群島全体としての大きな動き、流れになっていかない状況にある。
 したがって、奄美群島各島におけるリサイクルや島外への輸送に関わる取り組みを島全体、群島全体の取り組みとしてネットワーク化することにより、効率的かつ円滑なリサイクルを推進していくという視点で検討する必要がある。
 
(1)全体の仕組みの検討・整理
 
(1)奄美大島の市町村全体として取り組む
 各市町村ごとに使用済自動車を輸送すると、貨物量の確保、計画的な輸送という面での効率性の確保ができないことから、市町村全体(名瀬市、大和村、宇検村、瀬戸内町、住用村、龍郷町、笠利町)として取り組む。事務局は、名瀬市とする。
 必要な事項は、全市町村で協議、決定する。
 
(2)名瀬港に集約、保管する
 各市町村から、名瀬港(佐大熊地区)のストックヤードへトラックにて輸送、集約する。瀬戸内町の加計呂麻島、請島、与路島については、古仁屋港に海上輸送の上、名瀬港(佐大熊地区)へ陸上輸送する。
 佐大熊地区のストックヤードにおいて、自動車リサイクル法、廃棄物処理法に適合した保管を行う。
 
(3)可能な選別・加工等を行う
 奄美大島全域より輸送・集荷した使用済自動車は、佐大熊地区のストックヤードにおいて、必要な部品の回収、破砕前処理を行う。
 
(4)鹿児島港へ海上輸送する
 名瀬港(佐大熊地区)の岸壁より、貨物船、チャーター船により海上輸送する。
 名瀬港(佐大熊地区)岸壁〜鹿児島港岸壁(リサイクル工場)間輸送により効率化を図る。
 フェリーで輸送する場合は、佐大熊地区より名瀬港本港地区までトラック輸送する。(本港地区では、景観の確保の観点から、使用済自動車の保管は行わない。)
 なお、古仁屋港(瀬戸内町)については、名瀬港へトラック輸送し貨物船で輸送するケースと、古仁屋港からフェリーで鹿児島港へ輸送するケースがある。
 
図−6.2.1 全体の仕組み
 
(5)発生台数の整理
 奄美大島の市町村の使用済自動車の発生台数(推計)は、下表の通りである。
 
表−6.2.1 奄美大島における使用済自動車発生台数(推計)
 
(2)海上輸送パターンの整理
 
(1)海上輸送パターン
 
1)名瀬港から貨物船、チャーター船、フェリーによる海上輸送
 使用済自動車の海上輸送は、以下の2タイプがあるが、輸送量、タイミング、輸送条件に応じて、使いわけるものとする。
 
(ア)貨物船、チャーター船
 奄美群島における貨物船は定期RORO船であり、基本的にはコンテナを使用した輸送である。これに対し、チャーター船は、在来貨物船であり100台単位の輸送となる。
(イ)フェリー
 フェリーは定期貨客船であり、基本的にコンテナを使用した輸送である。
 
2)古仁屋港からのフェリーによる海上輸送と名瀬港利用の併用
 瀬戸内町の名瀬市に近い地域については、トラックにて名瀬港へ輸送し、鹿児島港へ海上輸送する。加計呂麻島、請島、与路島及び古仁屋港周辺地域については、寄港しているフェリーを活用して、使用済自動車を鹿児島港へ輸送する。
 
表−6.2.2 奄美大島(名瀬港、古仁屋港)における海上輸送パターン
港湾地区 海上輸送 荷姿 輸送単位
名瀬港・佐大熊地区 貨物船
チャーター船
金属スクラップ 100台/船
コンテナ 数台/コンテナ
名瀬港・本港地区 フェリー コンテナ 数台/コンテナ
古仁屋港 フェリー コンテナ 数台/コンテナ
 
(2)名瀬港
 
1)全体的機能
 名瀬港の佐大熊地区は、港湾計画において、貨物船、チャーター船、専用船(重油等)による貨物を取り扱う物流ゾーンとして位置づけられている。
 貨物船、チャーター船で輸送する使用済自動車等については、この佐大熊地区で取り扱い、そのための保管を行う。
 
2)ストックヤード
 荷捌き地と臨港道路に挟まれた用地の一部を使用済自動車等のストックヤードとし、リサイクル事業者の進出用地とする。
 
3)本港地区における使用済自動車の保管のあり方
 名瀬港での使用済自動車の保管は、佐大熊地区とし、市街地に接する本港地区での保管は行わない。本港地区よりフェリーで輸送する場合は、内陸部から直接、あるいは保管されている佐大熊地区より本港地区に輸送の上、フェリーに荷役する。
 
(3)古仁屋港
 
1)全体的機能
 古仁屋港(本港地区、第4種漁港)は、鹿児島港〜平土野(〜知名)港間のフェリー航路とともに加計呂麻島、請島、与路島との航路の発着拠点として重要な役割を果たしている。
 
2)ストックヤード
 古仁屋港には、ストックヤードのためのスペースは無く、100台単位での輸送ニーズも無いことから、ストックヤードは設けない。
 
(3)費用の検討
 
(1)離島対策支援事業による海上輸送コストの低減
 「自動車リサイクル法」(「使用済自動車の再資源化等に関する法律」)の離島対策支援事業による海上輸送費の8割分(予定)の支援(出えん)により、輸送コストを低減する。
 
(2)船社の協力による輸送コストの低減
 
1)上り便の空スペースの活用
 貨物が少ない上り便(鹿児島行き)の空スペースを活用し、海上輸送コストを低減する。
 
2)船社に輸送便の選択を与える
 空いている便・スペースに乗せるという条件で海上運賃を安くする。
 
3)環境美化に貢献する海上運賃の設定
 船社による奄美群島の環境美化への協力の一環としての海上運賃(グリーンプライス)を設定する。
 
(3)陸上輸送の共同化
 名瀬港への使用済自動車のトラック輸送について、輸送業者への依頼にあたっては、複数の自動車整備業者、自動車販売業者が共同して輸送を依頼するなど発注の集約化を推進する。
 また、名瀬港に向かう営業トラックの空スペース情報を共有することにより、往復とも貨物積載輸送(ラウンド輸送)を推進する。
 
(4)二次離島の輸送コストの低減
 「自動車リサイクル法」の離島対策支援事業では、二次離島(本土との直行便が就航していない島)の場合に発生する2回分の海上輸送費(加計呂麻島、請島、与路島から古仁屋港、及び鹿児島港までの海上輸送費、荷役費を含む)が支援(出えん)されるが、2割負担は残る。
 自治体負担の場合においても財政負担が厳しいことから、二次離島(加計呂麻島、請島、与路島)の場合については、関係省庁、(財)自動車リサイクルセンターに対し、全額支援を要望していく。
 
(4)民間業者を取りまとめるための方策
 名瀬港、古仁屋港において使用済自動車を取り扱うリサイクル事業者と自動車整備業者、自動車販売業者においては、自動車リサイクル法に基づく離島対策支援事業に関連する連絡・調整が必要であることから、関係業界による使用済自動車の推進のための団体を設立するものとする。
 なお、自動車リサイクル法に基づく離島対策支援事業に関わる業界として、港湾運送事業者、船社もあることから、これらの業界も含めることが考えられる。
 
表−6.2.3 使用済自動車リサイクルのための連絡体制の確立(案)
項目 概要
趣旨 自動車リサイクル法の離島対策支援事業に関連した連絡・調整
メンバー リサイクル事業者、自動車販売業者、自動車整備業者
備考 港湾運送事業者、船社も参加することが考えられる。
 
(5)国等への支援措置適用に向けた要望等の整理
 離島における使用済自動車のリサイクルコスト低減のために、離島対策支援事業における支援の割合(8割)の引き上げ、港内における埠頭間の輸送(横持ち)費用への支援を、市町村が、国(経済産業省、環境省等)、(財)自動車リサイクルセンター等へ要望することが考えられる。
 なお上記以外に、使用済自動車輸送のためのコンテナ導入への支援も考えられる。
 
表−6.2.4 使用済自動車リサイクルに関わる国等への要望事項
項目 概要
支援割合の引き上げ 支援(出えん)割合を8割から10割とする。
特に二次離島においては、特段の配慮が必要。
港内横もち費用への支援 港内の使用済自動車の保管場所から岸壁までの陸上輸送費への支援
(佐大熊地区からフェリーの着岸する本港地区までの陸上輸送料金)







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