第5章 奄美群島における静脈物流ネットワーク構築の必要性の整理
1. 処理・輸送等に関する問題点の整理
(1)島内に放置・退蔵が多い
島内の公有地、民有地に使用済自動車、廃タイヤ、廃家電、廃船等の放置・退蔵が多い。
名瀬市では、監視パトロール員を配置し、毎日監視パトロールをしているが、山間部における捨て方が巧妙になってきており、不法投棄者の判明率が低下している。
表−5.1.1 名瀬市における不法投棄件数の推移
年度 |
不法投棄件数(うち廃家電) |
うち現状回復措置(措置率) |
12 |
275件(16件、6%) |
36件(13%) |
13 |
384件(77件、20%) |
29件(8%) |
14 |
481件(120件、25%) |
25件(5%) |
15 |
495件(195件、39%) |
4件(1%) |
|
資料:名瀬市
表−5.1.2 名瀬市における不法投棄件数
年度 |
テレビ |
エアコン |
冷蔵庫 |
洗濯機 |
合計 |
15 |
115台 |
18台 |
32台 |
30台 |
195台 |
|
資料:名瀬市
名瀬市が平成16年2月に行った実態調査では、公有地、民間用地合わせて、2,222台が放置されていた。とくに山間部には100台単位で放置・野積みされている場所が4箇所、800台ある。
表-5.1.3 名瀬市における使用済自動車の放置・野積み状況
年度 |
公有地 |
民間用地 |
合計 |
15 |
68台 |
2,154台 |
2,222台 |
|
注:平成16年2月末現在の実態調査
資料:名瀬市
写真−5.1.1 |
放置された使用済自動車(名瀬市内) |
こうした使用済自動車の放置・野積みは、奄美大島全体や奄美群島全体でも同様である。
世帯数で換算すると、この時点で、奄美大島に約3,700台、奄美群島全体で約6,600台が放置・野積みされていることになる。
ただし、平成17年1月1日の自動車リサイクル法の施行を控え、平成16年末までに相当程度の使用済自動車が撤去されたところである。
(2)焼却されるリサイクル資源が多い
離島では、リサイクルしようとしても量がまとまらないことと島外へ輸送する費用を要するため、焼却、退蔵される資源が多い。
古紙は、収集・保管・輸送費用が売却費用を上回るため、殆どが焼却処分されている。食品トレイは、一部のスーパーで自主的に回収を始めているが、殆どは焼却処分されている。また、漁業等で使われる発泡スチロールについては、焼却処分されることが多いが、沖永良部島や徳之島では資源ごみとして回収されている(ただし、在庫として保管されている)。
表−5.1.4 焼却処分されているリサイクル資源
品目 |
状況 |
備考 |
段ボール |
クリーンセンター等で焼却処分が殆ど |
平成16年よりリサイクル始まる(名瀬市、瀬戸内町) |
古紙・雑誌 |
基本的に焼却処分 |
名瀬市で取り組み予定 |
食品トレイ |
基本的に焼却処分 |
徳之島Aコープで回収 |
発泡スチロール |
基本的に焼却処分 |
徳之島、沖永良部島で回収、蔵置 |
農業用ビニール |
基本的に焼却処分 |
一部のみ回収 |
|
資料:ヒアリングにより作成
農業用ビニールは、徳之島では農協ルートでの回収が実施され、奄美大島でも名瀬農協による回収が始ろうとしている。
(3)島内の処分場の延命化
奄美群島の最終処分場は、奄美大島、徳之島、沖永良部島に設置されている。設置年度は平成9〜15年と比較的近年であるため、残余年数は8〜25年とやや余裕がある。しかし、一人当たりのごみ排出量の増大や新たな処分場の確保が難しいことなどから、年間の埋立容量の削減、処分場の延命化が必要である。
表−5.1.5 埋立処分場の残余状況
名称 |
最終処分容量 |
15年度末埋立累計 |
埋立率 |
残余年数 |
大島地区衛生組合 |
146,000m3 |
34,345m3 |
23.5% |
25年 |
徳之島愛ランド広域連合 |
29,600m3 |
2,000m3 |
6.8% |
14年 |
沖永良部衛生管理組合 |
27,500m3 |
11,050m3 |
59.8% |
8年 |
|
資料:ヒアリングにより作成
写真−5.1.2 |
埋立処分場(左:大島地区衛生組合、右:沖永良部衛生管理組合) |
(4)島外への輸送費の高さ
廃家電のリサイクル料金は、鹿児島市内でも離島でも同一料金であるが、収集運搬料金を要するため、離島では、消費者負担が大きくなる。
電気商業組合の料金でみると、名瀬市、徳之島とも、1,000円以上高く、とくに250リットル以上の冷蔵庫は2,835〜5,595円以上高い。一方、鹿児島への帰り荷輸送を利用した民間業者への持込み料金は全般に安くなってきたが、それでもテレビ以外は、1,000円以上、250リットル以上の冷蔵庫は本土に比べると2,695円高い。
表−5.1.6 廃家電の消費者負担金の比較
(単位:円)
品目 |
鹿児島市 |
名瀬市A |
名瀬市B |
徳之島 |
沖永良部島 |
エアコン |
5,250 |
7,825(2,575) |
6,370(1,120) |
6,510(1,260) |
8,000(2,750) |
テレビ |
4,410 |
5,985(1,575) |
4,480(70) |
5,460(1,050) |
6,000(1,590) |
冷蔵庫250L以上 |
6,405 |
10,625(4,220) |
9,100(2,695) |
9,240(2,835) |
12,000(5,595) |
冷蔵庫250L未満 |
6,405 |
9,030(2,625) |
7,525(1,120) |
8,085(1,680) |
10,000(3,595) |
洗濯機 |
4,095 |
6,720(2,625) |
5,215(1,120) |
5,565(1,470) |
6,500(2,405) |
|
注1: 消費者負担金は、リサイクル料金と収集運搬料金の合計。消費税を含む。
注2: 鹿児島市、名瀬市A、徳之島、沖永良部島は鹿児島県電気商業組合の料金。
名瀬市Bは、民間の業者への持ち込み料金。
注3: ( )内は、鹿児島市との差額料金。
(5)港湾でのリサイクル資源の取り扱い
(1)ストックヤードの確保
島外へ輸送するためには、使用済自動車、廃家電等を港湾へ搬入する必要があるが、港頭地区の面積は限られており、名瀬港では、保管・ストックヤードが不足している。
限られたスペースに使用済自動車等を置くため、観光客などの港湾利用者、通行者から目の届く場所に置かれたり、他の貨物と競合するといった問題が生じている。
(2)景観上の問題
市街地に接した名瀬港では、金属スクラップや使用済自動車の山が市民、観光客から見えるという景観上の問題が生じている。
但し、平成17年度より、貨物船により輸送する金属スクラップや使用済自動車は、佐大熊地区に移転することになっていることから、これらの問題は、概ね解消するものと考えられる。
しかし、フェリーに乗せる分は本港地区に残ることから、本港地区では他の貨物との競合や景観上の問題が残る可能性がある。また、佐大熊地区においても、景観上の問題に留意する必要がある。
関連して、名瀬港の一部においては、残された梱包材や様々なごみ等で港内の景観がやや損なわれている状況にある。
名瀬港以外においては、使用済自動車や金属スクラップが港湾に大量に保管され、景観上の問題が生じている港湾はない。しかし、残された梱包材や様々なごみ等で港湾内の一部において、景観が損なわれている所がある。
写真−5.1.3 名瀬港岸壁背後
(6)リサイクル事業者が少ない
奄美群島内の各島には、人口規模の大きくリサイクル資源の発生量の多い名瀬市などには、リサイクル事業者がいるが、人口規模の小さい喜界島(人口約9,000人)、与論島(人口約6,000人)では、専業のリサイクル事業者の成立は難しく、加計呂麻島、請島、与路島では、リサイクル事業者はいない。
リサイクル事業者が事業ベースで存在している島では、島内でのリサイクルが可能となるが、リサイクル事業者がいない島、ある品目についてのリサイクル事業者がいない場合には、廃棄物が放置、投棄されたり、行政が面倒をみなければならない状況になっている。
(7)環境意識の向上
アンケート、ヒアリング調査等によると、多くの関係者が、住民の環境意識の低さを問題としてあげている。奄美の各島は、豊かな自然に恵まれているため、あえて自然、環境を大事にするという必要が少なかったのかもしれない。
しかし、奄美の美しい自然と住みやすさを守るためには、各島の住民の方々が自然、環境をより大事にする必要性が多くの関係者より指摘されている。また、他にない奄美の美しい自然という誇りのため、あるいは、観光のためにも、自然、環境を守るための放置・退蔵の抑制、リサイクルの推進、街の清掃等の取り組みが重要になると考えられる。
|