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第4章 先進的な取り組み事例の分析
1. 対象離島・地域
 日本には、「離島振興法」、「小笠原諸島振興開発特別措置法」、「奄美群島振興開発特別措置法」、「沖縄振興特別措置法」に基づき指定されている有人離島が、310島ある(平成14年4月1日現在)。
 ここでは、面積、人口規模が奄美大島に近い佐渡島、群島である伊豆諸島、比較的人口の多い長崎県離島(壱岐島、対馬島、福江島等(五島市範囲))、沖縄県離島のうち人口の多い宮古島、石垣島を対象に、廃棄物等の処理・輸送状況を整理した。
 
表−4.1.1 対象離島の概要
島名 面積
(km2
平成12年
人口(人)
主要航路の航行距離
(1)佐渡島 佐渡島 854.98 72,173 新潟港−両津港:67km
(2)伊豆諸島 伊豆諸島 296.50 24,380 東京港−御蔵島:200km
東京港−八丈島:291km
(3)長崎県離島 壱岐島 138.39 32,979 博多港−郷ノ浦港:69km
対馬島 708.61 41,016 博多港−厳原港:138km
福江島等 420.29 76,092 長崎港−福江港:133km
(4)沖縄県離島 宮古島 158.88 49,525 那覇港−平良港:290km
石垣島 228.85 23,302 那覇港−石垣港:489km
<参考>奄美大島 812.36 73,896 鹿児島港−名瀬港:383km
注:伊豆諸島は、大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島の9島
福江島等は福江島、奈留島、久賀島、椛島、黄島、赤島、蕨小島、黒島、島山島、嵯峨島、前島の11の有人島と52の無人島
資料:(財)日本離島センター「離島統計年報 2003」(平成16.4)、国勢調査
 
図−4.1.1 対象離島の位置
 
(1)一般廃棄物の分別回収について
 全体としては、奄美の市町村の分別品目数(4〜8)と同程度の離島が多いが、長崎県離島(壱岐、対馬、五島)では、分別する品目数が多い。但し、海上輸送費の高さや分別したあとのリサイクルの難しさが問題として指摘されている。
 どの離島、自治体も分別したリサイクル資源の海上輸送費の高さやごみの投棄を問題として指摘している。
 
表−4.2.1 対象離島における分別状況
対象離島 市町村 分別品目数 今後の取り組み
(分別品目の拡充)
問題点等
佐渡島 佐渡市 10 ・考えていない。 ・缶、ビン、古紙の島外への輸送費が10トン車1台あたり72,000円掛かり、負担が大きい。
伊豆諸島 御蔵島村 6 ・ペットボトルの分別を新たに考えている。 ・海上輸送費が高い。
長崎県離島 壱岐市 21 ・特に考えていない。 ・リサイクルするための海上輸送費負担が大きい。
・回収した古布を焼却処理している。
対馬市 14 ・特に考えていない。 ・分別が徹底されない。
・海上輸送費が高い。
五島市 12注1 ・特に考えていない。 ・古布類の引取り業者が今のところ見つからない。(リサイクルセンターの職員が古着を無料で住民に提供するというイベントを開催している。)
沖縄県離島 平良市 9 ・ごみ処理有料化への働きかけをしたいと考えている。 ・分別が徹底されない。
・ごみの投棄が相当ある。
・集水路がごみ捨て場になっている。
石垣市 7 ・2003年よりごみ処理を有料化した。2006年よりトレー、色別のビンの分別を実施予定。 ・混入率は低い。
・ごみの投棄が相当ある。
注1: 旧福江市(2004年8月1日、下五島一市五町が「五島市」として合併)の分別品目数。2004年11月現在、合併直後で分別品目にバラツキがあるが、2005年4月までに旧福江市の分別品目数に統一させる予定。
資料:ヒアリングにより作成
 
(2)リサイクルについて
 各離島の自治体では、リサイクル資源を収集、選別、梱包してリサイクル事業者へ引き渡し、島外へ輸送しているが、いずれも海上輸送費の高さを問題としている。
 一部の自治体では、海上輸送費を別途、負担している。長崎県離島では、(1)古紙を岸壁を有する製紙会社へ海上輸送する、(2)段ボールを北九州市へ海上輸送する、という取り組みが行われている。
 
表−4.2.2 対象離島におけるリサイクルの状況
対象離島 市町村 輸送状況 問題点等
佐渡島 佐渡市 ・ペットボトルはクリーンセンターで圧縮、梱包後ストックし、6トンに達した段階で再生処理業者へ引き渡す。
・缶は、直接搬入又は、指定ごみ袋により分別収集し、クリーンセンターにてアルミ缶・スチール缶に再分別後、圧縮処理し、古物商(佐渡島内)へ引き渡す。
・ビンは直接搬入または、指定ごみ袋により分別収集し、クリーンセンターにて選別する。ストックしておき各色10トンに達した段階で再生処理業者へ引き渡す。
・古紙は拠点回収により、古新聞、古雑誌、チラシ、段ボール、牛乳パックに分けて回収し、古紙問屋(佐渡島内)へ引き渡す。
・本土への海上輸送費が10トン車1台当たり72,000円かかる。
伊豆諸島 御蔵島村 ・空き缶、有害ごみ、粗大ゴミは、島外搬出する。(頻度は空き缶2回/年、有害ごみ3〜4回/年) ・海上輸送費が高い。
長崎県離島 壱岐市 ・資源ごみは、市の補助で自治会ごとに設置されたリサイクルステーションに、住民が持ち込む。
・古紙、古布は長崎県リサイクルという団体に収集、中間処理及び輸送を委託している。
・ペットボトル、ガラスはリサイクルセンターから、空き缶は焼却施設に併設された倉庫から島外へ搬出している。
・古紙を三島川之江港の製紙会社に直送している。
・海上輸送費の負担が大きい。
対馬市 ・リサイクルセンター内で、ビンは選別・破砕、缶は選別・圧縮、段ボールは圧縮、ペットボトルは圧縮までの中間処理を行い、その後それぞれフェリーで福岡まで輸送される。
・新聞紙・白色トレーは中間処理を行わずフェリーで福岡まで輸送される。
・海上輸送費が高い。
五島市 ・資源ごみはリサイクルセンターに搬入、中間処理後は島外の業者に売却する。海上輸送費は、資源ごみを買い取った業者が負担している。
・段ボールはチャーター船で北九州港まで運ばれている。
・二次離島からの廃棄物の良い運搬方法が見つからない。
沖縄県離島 平良市 ・段ボールなどの古紙は一部事務組合が民間業者に委託して本土へ輸送している。これに対し市は補助金を支出。 ・リサイクルのための海上輸送費の負担が大きい。
石垣市 ・段ボール、古紙・雑誌、紙パック、トレーもリサイクル。缶類とともに、輸送費込みでリサイクル事業者へ引き渡し、沖縄本島の中城湾まで輸送。リサイクル率は平成15年で15%に達したが、埋立て処分量の削減のため、その他廃プラのリサイクルを計画。 ・一括して、業者へ引き渡しており、輸送面では特に問題になっていない。
資料:ヒアリングにより作成
 
(3)使用済自動車対策について
 全体として、使用済自動車対策は遅れがちであり、検討、策定中の自治体が多い。島全体としての取り組みは模索している自治体もあるが、具体化していないようである。なお、二次離島(本土港湾(ただし、沖縄については沖縄本島)との間の直行便が就航していない島)については、別途、輸送費補助を行う自治体もある。
 都、県の指導は、「特にない」、「船社、リサイクル事業者の紹介」程度が多いが、東京都では、伊豆七島の廃家電、使用済自動車のリサイクル施設を港湾地区に導入する計画を進めている。
 
表−4.2.3 対象離島における使用済自動車対策の状況
対象離島 市町村 物流計画策定の状況 島全体として
の取り組み
行政(都、県)
の指導等
佐渡島 佐渡市 ・11月末に自動車リサイクル促進センターの説明会があるので、まだ動けない。 ・市民に対する広報活動を行おうと考えている。 ・特にない。
伊豆諸島 御蔵島村 ・現在、策定中である。 ・伊豆諸島全体で話し合いの場を設けているが、良い案が出てこない。 ・東京都が、若洲地区に、都内島嶼部発生の使用済自動車、廃家電等をリサイクルする施設の導入を進めている。
長崎離島 壱岐市 ・現在、策定中である。 ・小離島から壱岐島までの使用済自動車の輸送費用を10割補助する。 ・特にない。
対馬市 ・現在、策定中である。 ・特にない。 ・船社やリサイクル事業者の紹介。
五島市 ・現在、策定中である。 ・小離島から福江島までの使用済自動車の輸送費用を10割補助する。 ・船社やリサイクル事業者の紹介。
沖縄離島 平良市 ・島内の市町村担当者と打合せを行ったが、県からの指導を待っている。 ・現時点の放置自動車数を調査中である。 ・平成13年度の国・県・自治体による放置自動車撤去事業で1,000台を本島(拓南製鉄)へ排出・輸送した。
・県より、使用済自動車の破砕施設の導入計画の話があったが、その後、進んでいない。
石垣市 ・県からの指導を待っている。 ・特にない。
・団地、漁港、港湾などに放置自動車が後を絶たない。
・平成13年度の国・県・自治体による放置自動車撤去事業で800台を本島(拓南製鉄)へ排出・輸送した。
・石垣港にプレス機、ストックヤードを設置し、廃車等のリサイクル拠点にしようとの構想があるが、進展していない。
資料:ヒアリングにより作成
 
(4)循環型ごみ処理システムについて
 伊豆諸島においても、佐渡島においても、計画で示された取り組みは大きくは進捗していない。
 両地域においては、東京都、新潟県が音頭をとり、計画が作成されたが、島の自治体、民間企業・団体、住民による推進主体が設立され、活動を担うということに至っていないことが背景にあると思われる。
 
(1)東京都(伊豆諸島)
 東京都では、平成10〜11年、伊豆諸島を対象に、島しょ地域の地理的環境等の特性を活かした循環型ごみ処理システムを構築することを目的に、伊豆諸島の町村長、学識経験者、島民代表で構成する「島しょ地域における循環型ごみ処理システム検討委員会」を設置、検討を行った。
 委員会では、ごみとなるものの搬入抑制、島全体でのリサイクルの取り組み、島しょ間の連携した取り組みなどが提案された。
 
表−4.2.4 「島しょ地域の循環型ごみ処理システム」で示された取り組み内容(東京都伊豆諸島)
主要な取組
1)搬入抑制に関する提案
・通い箱の活用
・段ボールの即時返却
・リターナブルビンの採用
2)島全体での取り組みに関する提案
・住民が主体となったごみ会議の設置
・自治会、婦人会、農協、漁協、商工会等による集団回収の実施
・デポジット事業の採用
3)島しょ間の連携に関する提案
・循環資源の共同保管・共同搬出
・共同運搬船の運航
・全島一斉のごみ減量キャンペーン等の実施
 
(2)新潟県(佐渡島)
 新潟県では、平成12年、佐渡島における廃棄物の減量化、再生利用、循環の促進を目的に、住民、関連団体、有識者、行政からなる循環型エコアイランド検討会を開催し、「循環型エコアイランド推進プラン」をまとめた。
 同プランでは、(佐渡市への合併前であったことから)自治体間のごみ分別基準の統一や施設の共同化とともに、デポジット制の導入や資源ごみ共同輸送などが提案された。
 
表−4.2.5 「循環型エコアイランド推進プラン」で示された取り組み内容(新潟県佐渡島)
主要な取組
1)制度等のソフト面
・島内のごみ分別基準の統一
・デポジット制度の導入
2)施設面
・容器リサイクル法に係る保管施設・圧縮梱包施設の共同化
3)輸送システム
・資源ごみの共同回収・共同運搬システムの構築
・廃家電島外輸送の統一システムの構築







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