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第2章 名瀬市における使用済自動車の輸送対策の整理
1 「自動車リサイクル法」における離島対策支援事業
 平成17年1月1日に「使用済自動車の再資源化等に関する法律(以下、「自動車リサイクル法」)」が施行された。「自動車リサイクル法」では、使用済自動車の運搬料金が嵩む離島では、逆有償になる可能性が高く、リサイクルルートに乗らずに不適正な処理が行われる場合が多いとの背景から、適正なリサイクルの推進を目的に、リサイクル料金の剰余金を活用した離島対策(離島対策支援事業)を行うことを定めている。ここでは、現在、(財)自動車リサイクル促進センターより示されている離島対策支援事業の概要を整理した。
 
(1)離島対策支援事業の目的
 「自動車リサイクル法」では、使用済自動車の運搬料金が嵩む離島では、逆有償になる可能性が高く、リサイクルルートに乗らずに不適正な処理が行われる場合が多いとの背景から、適正なリサイクルの推進を目的に、リサイクル料金の剰余金を活用した離島対策を行うことを定めている。
 
(2)出えん金
 「自動車リサイクル法」では、シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類のリサイクル・処理に要するリサイクル料金を、新車販売時(既販車については車検時。それ以外は引取業者の引取時)に自動車所有者が(財)自動車リサイクル促進センターに預託することになっている。
 (財)自動車リサイクル促進センターは、シュレッダーダスト等3品目のリサイクルを行う自動車製造業者、輸入業者に対し、実績に応じてリサイクル料金を支払う。
 ところが、解体自動車(廃車ガラ)を輸出する場合など、上記リサイクルルートに乗らない使用済自動車も出てくる。その場合、リサイクル料金は剰余金となり、この剰余金を活用し、離島対策支援事業が行われる。
 
(3)対象離島
 離島対策支援事業において対象となる離島は、以下の二つの要件を満たす離島である。奄美群島はいずれも対象となっている。
 
(1)離島4法(離島振興法、奄美群島振興開発特別措置法、小笠原諸島振興開発特別措置法、沖縄振興特別措置法)の対象となる地域
(2)地理的条件、交通事情その他の条件により、引取業者への使用済自動車の引き渡しが他の地域に比して著しく困難な地域
 
(4)出えん対象範囲
(1)海上輸送
 本土と離島地域の相違点は、陸上輸送ができない点のみであることから、海上輸送に対する出えんを行う。また、海上輸送に必要である港湾における荷役(港湾内の横持ちも含む)も対象とする。島内の陸上輸送費は、対象とはならない。
 
(2)島内での処理
 離島には、解体業者、破砕業者が存在する場合があり、島毎に処理内容が異なっている。島内の解体業者、破砕業者が処理を行った使用済自動車についても、海上輸送コストに起因して処理費用が高騰し、結局は引取の段階で逆有償となる可能性があることから、出えんの対象とする。
 
(3)二次離島の海上輸送
 二次離島(本土との直行便が就航していない島)の場合、本土まで使用済自動車を輸送する際、複数の海上輸送を行う場合がある。この複数の海上輸送についても、出えんの対象とする。
 
(5)対象となる市町村の事業
 対象となる事業は、対象離島の市町村が実施する、引取業者に使用済自動車を引き渡すために行う運搬その他の措置である。この措置については、離島対策支援事業要綱において、以下のパターン(表−2.1.1)を用意しており各市町村は五つのパターンの中から、地域の実情に適合するものを選択することになっている。
 「自動車リサイクル法における離島対策について」では、いずれのパターンにおいても、各市町村の積極的な関与が必要であることを明記している。
 また、パターンの地域への当てはめ、支援方策等については、離島市町村、管轄する都道府県、地方経済産業局、地方運輸局、船社等が、連絡会を設置するなどにより、連携して対処することが適当であること、特に都道府県の役割が重要であり、市町村の申請の取りまとめ、助言・調整等積極的な関与が必須であることも明記されている。
 
表−2.1.1 海上輸送パターン
パターン 輸送方法 対象経費 証拠書類(例)注1
A 市町村がチャーターする運搬船により、最終所有者が運搬 チャーター船運賃、荷役、その他の費用 ・ 船会社、荷役会社との契約書・領収書
・ 引取証明書
B 最終所有者(又は委託を受けた者)が定期船又はチャーター船を利用して運搬 定期船運賃又はチャーター船運搬・荷役・その他の費用 ・ 定期船乗船券半券等
・ 船会社、荷役会社との契約書・領収書
・ 引取証明書
C 市町村がチャーターする運搬船により、関連事業者注2が運搬 チャーター船運賃、荷役費用 ・ 船会社、荷役会社との契約書・領収書
・ 移動報告の画面コピー
D 関連事業者が運搬船をチャーターして運搬 チャーター船運賃、荷役費用 ・ 船会社、荷役会社との契約書・領収書
・ 移動報告の画面コピー
E 関連事業者が定期船を利用して運搬 定期船運賃・荷役費用 ・ 定期船乗船券半券等
・ 荷役会社との契約書・領収書
・ 移動報告の画面コピー
注1: 資金出えんにあたって運送、引取実績等を証明する関連書類で、離島市町村において管理するもの。標記証拠書類が入手できない場合は、これに代わる輸送・引取実績等を証明する関係書類を証拠書類とする。いずれにしても事業計画書に何を証拠書類とするかについて記載することが必要。
注2: 島内に存在する自動車リサイクル法関連事業者(登録引取業者や許可解体業者等)
資料:(財)自動車リサイクル促進センター主催 第4回離島対策等検討会「資料5 離島対策支援事業要綱」(平成16年10月15日開催)
 
(6)出えんの割合
 出えんの割合は、対象経費(海上運搬、荷役費等)の8割を限度とする。
 
(7)出えん開始時期
 剰余金の発生動向によるが、平成17年10月を目処とする。
 
(1)奄美大島における「離島対策事業計画書案」(海上輸送パターン)
 
(1)奄美大島・本島
 奄美大島本島の市町村(名瀬市、大和村、宇検村、住用村、龍郷町、笠利町)では、Dパターン(表−2.1.1)の選定を検討している。
 
(2)瀬戸内町
 瀬戸内町は、加計呂麻島、請島、与路島から古仁屋港まで輸送の上、トラックで名瀬港まで輸送することを検討している。
 
(2)奄美大島における使用済自動車処理、輸送計画案について
 奄美大島における使用済自動車処理、輸送計画案を図示すると次の通りとなる。
 
図−2.2.1 奄美大島・本島における使用済自動車処理、輸送計画案
資料:(株)地域開発研究所作成
 
(3)佐大熊地区の活用
 名瀬港佐大熊地区は、平成17年度の供用開始を目指し、岸壁、港湾関連用地、背後用地の整備が行われている。臨港道路については、平成15年10月に供用開始済みである。
 佐大熊地区は、貨物船、チャーター船による物流機能を担うと位置づけられている。また、背後用地の一部には、リサイクルゾーンとしての機能が予定されている。
 
図−2.2.2 佐大熊地区のリサイクルゾーン
(拡大画面:267KB)
 
 以下では、「自動車リサイクル法」離島対策支援事業が実施された場合において生じる問題点を、収集、保管、輸送の各段階において整理する。
 
(1)収集
 笠利町、瀬戸内町等の遠隔地から名瀬港までの陸上輸送費が高い。特に、二次離島(加計呂麻島、請島、与路島)からの輸送費が高い。
 なお、平成17年以前に山林等に放置された使用済自動車は、離島対策支援事業の対象外になる。
 
(2)保管
 佐大熊地区は、集合住宅に近いことから、使用済自動車、金属スクラップの保管において、景観面での配慮が必要である。
 また、名瀬港本港地区着岸のフェリーを利用した使用済自動車の輸送も想定されるが、本港地区での保管は、景観を損なうことから難しくなる。
 
(3)輸送
 離島対策支援事業が行われても、2割の自己負担が発生する。特に、二次離島などの遠隔地ほど、負担が大きい。







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