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(4)バリアフリー化に関するハード・ソフト面の対応
(1)ハード・ソフト面での対応状況
 ハード面のバリアフリー化の取り組みとして、西鉄バスでは、車両代替の際にワンステップバス、スロープ付バス、車いす対応スペース付きのバスの導入を進めている。
 ソフト面の取り組みについては、特に回答はなかった。
 
(2)従業員に対するバリアフリー化に関する教育・指導
 3事業者において、入社時等の不定期な従業員教育としてバリアフリー化に関する教育・指導が実施されている。
 教育・指導の具体的な内容は、「バス乗務員への対応周知」(壱岐交通)、「乗務員の指導・教育」(西鉄バス)、「スロープ板の取り扱い、旅客対応等」(昭和自動車)などで、利用客への対応や、スロープ板・バリアフリー車両の取り扱い等が中心となっている。
 
(5)バリアフリー化に関する問題点
(1)利用者ニーズの把握
 4事業者いずれも「車内やターミナルへのアンケート用紙・投書箱の設置」(対馬交通)、「過去に利用者アンケートを実施したことがある」(対馬交通)、「関係団体への乗降講習会を実施(スロープ付車輌)」(壱岐交通)、「専用ではないがホームページの開設やテレホンセンターの設置で寄せられた要望は各担当部門で検討、対応するシステムは構築されている」(西鉄バス)、「ホームページ上で意見・要望受け付け」(昭和自動車)といった形で、利用者ニーズの把握を行っている。
 
(2)バリアフリー化に関する問題点
■利用者からの改善要望
 バリアフリーに関する利用者からの改善要望としては、「お年寄りの方から低床バスにして欲しいとの要望があるが、費用面や道路上の問題があり導入は大変難しい」(対馬交通)との回答があげられている。
 バリアフリー車両導入に対する利用者の要望については「特にノンステップバス導入に関しては通常車両との価格差が大幅な負担増といった面で事業者にとっては問題となる。今日のバス事業をとりまく環境や経営体質を考えると国や地方公共団体からの補助は不可欠であり、事業者単独で積極的に導入していく事は困難である」(西鉄バス)との回答もあり、事業者側にとっては、通常車両との価格差の負担増、離島部ではさらに道路通行上の問題等から導入が困難であることがあげられている。
 
■それ以外の問題点
 上記のほか、「車両の低床化、いわゆるノンステップバスやワンステップバスは乗降時の負担軽減といったメリットがある反面、車内に高い段差や急な傾斜ができ、立席・着席あるいは座席移動の際には、特にお年寄や体の不自由な利用者には大きな負担であり、車内での転倒事故の可能性も高い」(西鉄バス)という問題点もあげられている。
 
(6)今後のバリアフリー化への対応
(1)バリアフリー化に対応した新規車両の導入計画
 本土側の2事業者においては、「特に港湾アクセスの路線を中心にといった観点ではないが、バリアフリー対応の必要性及び重要性は認識しているので、特に車両関係のバリアフリー化については、国の指針である2010年までに保有車両の20%をノンステップバスに代替するといった内容に対応するための協議を関係機関と行っており、導入拡大に向け努力していく」(西鉄バス)、「バリアフリー対応車両への代替を進めている」(昭和自動車)など、バリアフリー化に対応した新規車両の導入を順次進めていくとの姿勢が示されている。
 一方、離島部では「現在2両のみスロープ付ワンステップバスを導入しているが、車価が高く2年間は新規導入をしていない。今後も現状では特に計画はない。」(壱岐交通)など、現在のところ具体的な計画は立てられていない。
 
(2)利便性向上に向けた今後の取り組み計画
 今後利便性の向上に関する取り組みの計画について、「増便や利便向上等の営業政策は、例年需要の動向を分析のうえ、計画を策定しているので現段階で具体的な内容はない。ダイヤの接続に関しては便の多少によるが基本は船のダイヤが変更になれば、必要に応じその都度ダイヤ改正を行い対応している」(西鉄バス)、「壱岐〜呼子のフェリーが唐津港へ就航する計画があり、路線変更の検討が必要と考えている」(昭和自動車)など、航路のダイヤ変更や寄港地の変更に合わせて、バスの運行ダイヤを調整することがあげられている。
 
(3)バリアフリー化を進める際の課題
 4事業者すべてにおいて「バリアフリー化にかかる車両購入費の増加に対する費用負担」があげられているほか、本土側の1事業者を除く3事業者においては、「他の路線と比較して需要が多いとは言えないため、新車が投入できないこと」があげられており、バリアフリー車両導入に伴う費用負担増と、低需要路線であるために新車投入が困難であることが特に課題となっている。
 このほか「利用者の意向把握・意見調整」、「対象バス路線と接続する旅客船ターミナルや船舶のバリアフリー化の連携」との回答も1件ずつあげられている。
 
図4-3-1 バリアフリー化を進める際の課題(複数回答 n=4)
 
1. 調査の概要
(1)調査の概要
 北部九州の離島における海上旅客輸送の利用状況やバリアフリー化の現状、住民のバリアフリー化に対するニーズ等を把握するため、対象地域の8市町村の住民に対してアンケートを実施し、外出の状況や海上旅客輸送の利用実態、利用時の問題点、改善に向けた要望等について調査を行った。
 調査対象者は一般住民856人、身体障害者315人の計1,171人で、調査方法は郵送法・自記式とした。
 回収状況は、一般住民については有効回答数396人、回収率46.3%、身体障害者については有効回答数184人、回収率58.4%で、全体では有効回答数580人、回収率49.5%となっている。
 
<住民アンケート調査概要>
■調査対象
高齢者を中心とする一般住民856人・身体障害者315人、合計約1,171人
■対象地域
北部九州の離島に位置する8市町村(5市2町1村)、13離島の住民
 
 
■調査方法
郵送法・自記式
■調査期間
2004年10月〜12月
■回収状況
 
 
(2)調査票の配布・回収状況
 北部九州の8市町村に位置する13離島について、表5-1-1に示すように離島の人口規模に基づいて対象者を抽出した。
 なお、対馬地区、壱岐地区の離島については、対馬島(本島)、壱岐島(本島)のほか、壱岐島(本島)との間に旅客定期航路が就航している大島、長島、原島の3島を対象とした。
 
表5-1-1 各島における対象抽出数
<大規模な離島(人口1万人以上):対馬島、壱岐島>
  抽出数 1島あたりの抽出数
男性 女性 合計
後期高齢者(75歳以上) 35人 35人 70人  
前期高齢者(65〜74歳) 35人 35人 70人  
高齢者予備軍(45〜64歳) 35人 35人 70人  
合計 105人 105人 210人 210人
 
<小規模な離島(人口1千人未満)>
■人口300人以上の離島:大島(大島村)、相島、玄界島
  抽出数 1島あたりの抽出数
男性 女性 合計
後期高齢者(75歳以上) 9人 9人 18人  
前期高齢者(65〜74歳) 9人 9人 18人  
高齢者予備軍(45〜64歳) 9人 9人 18人  
合計 27人 27人 54人 54人
 
■人口300人未満の離島:藍島、地島、小呂島、姫島、馬島、大島(壱岐市)、長島、原島
  抽出数 1島あたりの抽出数
男性 女性 合計
後期高齢者(75歳以上) 6人 6人 12人  
前期高齢者(65〜74歳) 6人 6人 12人  
高齢者予備軍(45〜64歳) 6人 6人 12人  
合計 18人 18人 36人 36人
注)市町村の人口が上記の抽出数に満たない離島においては全数を抽出。
 
 各市町村における抽出数及び回収数は、下表のとおりである。
 なお一般住民については全ての市町村においてアンケート調査を実施したが、身体障害者については協力の得られた6市町村において調査を実施した。
 
表5-1-2 各市町村における対象抽出数及び回収状況
<一般住民>
  市町村名 実施数 回収数 回収率
1 対馬市 210 70 33.3%
2 壱岐市 318 145 45.6%
3 北九州市 60 27 45.0%
4 宗像市 36 13 36.1%
5 大島村 54 38 70.4%
6 新宮町 54 31 57.4%
7 福岡市 90 49 54.4%
8 志摩町 34 20 58.8%
  合計 856 393 46.3%
注)市町村不明の回答票が3票あったため、各市町村の回収数を合わせても、回収数の合計とは一致しない。
 
<身体障害者>
  市町村名 実施数 回収数 回収率
1 対馬市 100 51 51.0%
2 壱岐市 100 63 63.0%
3 大島村 13 11 84.6%
4 新宮町 30 24 80.0%
5 福岡市 60 33 55.0%
6 志摩町 12 2 16.7%
  合計 315 184 58.4%
 
<全体>
  市町村名 実施数 回収数 回収率
1 対馬市 310 121 39.0%
2 壱岐市 418 208 49.8%
3 北九州市 60 27 45.0%
4 宗像市 36 13 36.1%
5 大島村 67 49 73.1%
6 新宮町 84 55 65.5%
7 福岡市 150 82 54.7%
8 志摩町 46 22 47.8%
  合計 1171 580 49.5%
注)市町村不明の回答票が3票あったため、各市町村の回収数を合わせても、回収数の合計とは一致しない。







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