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 旅客船ターミナルや便所については出入口の有効幅が確保されているが、タラップや施設内の通路の有効幅の確保については、半数以下が未対応となっている。各施設や経路における車いす対応は半数程度にとどまり、転落防止設備・案内設備等の設置については、ほとんどが未対応である。
 
(1)出入口
 出入口の有効幅については、回答のあった全港湾で90cm以上確保されている。車いす対応については、対馬地区では2港とも対応がなされているが、壱岐地区では3港中1港、筑前諸島では10港中4港で、全体では約6割となっている。
 
(2)乗降用設備
 ボーディングブリッジは、厳原港と郷ノ浦港に設置されている。
 タラップを利用しているのは対馬地区が1港、壱岐地区が3港、筑前諸島が5港で、計9港あるが、90cm以上の有効幅を確保しているのは、筑前諸島の4港のみである。
 
(3)便所
 便所は、回答のあった全港湾に設置されており、出入口の有効幅については全て80cm以上確保されているが、段差の解消がなされているのは、対馬地区、壱岐地区、筑前諸島のいずれにおいても6割前後である。
 床置式小便器、身障者用便所については、約半数に設置されている。
 
(4)乗船券販売所等
 乗船券販売所は全体の8割に、券売機、案内所は約3割に設置されている。また、待合所は全港湾に設置されている。
 これらの施設の出入口の有効幅については9割弱が80cm以上を確保しているが、車いす対応のあるものは約半数にとどまっている。
 また、車いすでの利用に適した構造のカウンターは筑前諸島の4港で対応がなされているが、対馬地区、壱岐地区では全く対応がなく、全体では約3割となっている。
 
(5)休憩所
 休憩所は壱岐地区の2港、筑前諸島の4港に設置されており、全体では4割に設置されている。
 
(6)高低差の解消
 各設備間の移動経路における床面の高低差についてみると、高低差の解消の対応があるものは、約半数にとどまっている。
 地区別にみると、対馬地区では2港とも段差の解消がなされている。壱岐地区では、高低差のある港湾のうち1港は対応済みであるが、もう一方については未対応である。筑前諸島では、4港では段差の解消がなされているが、6港については未対応である。
 
(7)通路
 各設備間の移動経路となる通路の有効幅は140cm以上必要であるとされているが、対馬地区や壱岐地区で対応のあるものはなく、筑前諸島においても半数にとどまっている。一方、車いす対応については、対馬地区と壱岐地区では対応がなされているが、筑前諸島では4割で、全体で6割となっている。
 
(8)経路全般(手すりの設置、床の滑りにくい仕上げ、車いすでの開閉・通過に対応した戸、転落防止設備)
 手すりの設置や床の滑りにくい仕上げは、全体の1〜3割にとどまっている。車いすでの開閉・通過に対応した戸の設置は、対馬地区では全て対応がなされており、壱岐地区でも2港では対応がなされているが、筑前諸島では約1割となっている。
 転落防止設備については、対象地域の港湾では全く設置されていない。
 
(9)案内設備
 案内設備についてみると、視覚障害者用誘導用ブロック、主要設備の案内設備は全体の2〜3割、点字案内板や触知図等は1割未満となっており、運航情報提供設備については全く設置されていない状況である。
 
(10)その他の取り組み
 対象港湾のハード面において、バリアフリー化対応として取り組んでいることとして、「厳原港ターミナルについては、2階への昇降リフトを設置」(対馬市)との回答があげられた。
 
(6)バリアフリー化に関するソフト面での対応
 バリアフリー化に関するソフト面での対応として、6市町村では、船員や陸上係員による介助が行われているとの回答があった(対馬市、壱岐市、北九州市、新宮町、福岡市、志摩町)。
 このほか、ターミナルへの車いすの設置(対馬市)や、車いす利用者の優先乗船(壱岐市)などが行われている。
 
(7)バリアフリー化に関する問題点
(1)利用者ニーズの把握
 利用者のニーズを把握するために何らかの手段を講じているのは3市町村である(対馬市、新宮町、志摩町)。
 「その他」では、「投書箱は設置していないが、住民の意見、要望は直接聞いている」(志摩町)との回答があげられた。
 
表4-2-10 利用者ニーズを把握するために講じている手段(複数回答n=8)
ターミナル・待合所等にアンケート用紙や投書箱を設置している 2
(25%)
ホームページ上で意見・要望等を受け付けている 1
(12.5%)
過去に利用者アンケート調査を実施したことがある 2
(25%)
その他 1
(12.5%)
 
(2)バリアフリー化に関する問題点
■利用者からの改善要望
 バリアフリー化に関して利用者から改善要望があげられているものとしては、乗船設備の改善(対馬市、壱岐市)や、段差の解消(対馬市、新宮町)、便所のバリアフリー化(新宮町、志摩町)などがある。
 
表4-2-11 利用者から改善要望のある問題点
  利用者から改善要望のある問題点
対馬市 ・ジェットフォイルの就航において、福岡市のベイサイドプレイス並みの浮き桟橋かボーディングブリッジの設置(雨、風を凌げる構造)
・厳原港ターミナルの昇降リフトに代わるエレベーターの設置(昇降リフトは2階待合所まで、2階待合所からボーディングブリッジまで連絡されていない。また、待合所が狭い。
壱岐市 可動橋による乗船はきつい。
新宮町 離島側の段差解消と便所の改善。
福岡市 車イスの利用。
志摩町 待合所の便所のバリアフリー化。
 
■それ以外の問題点
 それ以外の問題点としては、「出発、到着の流れが重複しているため、利用客が多い場合混雑し、高齢者、障害者にとって利用しづらい。また、駐車場がせまい」(対馬市)との回答があげられている。
 
(8)今後のバリアフリー化への対応
(1)今後の整備計画
 対象港湾における港湾施設や旅客施設(旅客船ターミナル、待合室等)の整備計画として、対馬市では比田勝港の旅客船ターミナルの移転が予定されている。
 また、壱岐市では、芦辺港の旅客船ターミナル建替(2007年3月完成予定)、印通寺港の旅客船ターミナル増改築(2008年3月完成予定)が計画されている。なお、壱岐市の芦辺港、印通寺港の旅客船ターミナルについては2港ともボーディングブリッジが設置される予定である。
 
(2)旅客船ターミナル建設・大規模改良時にバリアフリー化を進める際の問題点
 「施設整備コストの増加」が5件、「施設維持コストの増加」が4件となっており、バリアフリー化に伴う費用負担を課題にあげた市町村が多い。
 次いで「県・国との役割分担・意見調整」、「旅客定期航路事業者との役割分担・意見調整」がそれぞれ3件となっている。
 
図4-2-4  旅客船ターミナル建設・大規模改良時にバリアフリー化を進める際の問題点(複数回答n=8)
 
(3)既存の旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置
 対象港湾の既存旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置としては、「出入口・通路・乗降用設備等の段差解消」と「車いす使用者等の円滑な利用に適した便所の設置」が5件ずつで最も多くなっている。また、「視覚障害者への案内設備の設置」も4件あげられている。
 
図4-2-5  既存の旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置(複数回答n=8)
 
(4)バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策
 バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策としては、「県・国による積極的な施設整備」が4件で最も多く、次いで「市町村の施設整備に対する公的助成」が3件となっている。
 
図4-2-6  バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策(複数回答n=8)
 
(5)バリアフリー化と並行して行う必要がある取り組み
 対象港湾のバリアフリー化と並行して行う必要がある取り組みとしては、「船舶のバリアフリー化」が6件、「港湾周辺地区(道路等)のバリアフリー化」が3件あげられている。
 
図4-2-7  バリアフリー化と並行して行う必要がある取り組み(複数回答n=8)
 
(9)海上輸送のバリアフリー化に期待される効果
 海上輸送のバリアフリー化によって期待される効果をみると、「高齢者・身障者等の生活の利便性・安全性の向上」が最も多く、6件である。また、「高齢者・身障者等の自立と社会参加の促進」も5件あげられている。
 このほか、「域外からの高齢者・身障者等の来訪促進によって地域振興に寄与する」が3件などとなっている。
 
図4-2-8 海上輸送のバリアフリー化に期待される効果(複数回答n=8)







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