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2. 交通バリアフリー化に関する支援制度
(1)海上旅客輸送のバリアフリー化に関する補助制度
 海上旅客輸送のバリアフリー化の促進に向けた全国レベルの補助制度を整理すると、表2-1-1のとおりとなる。
 
表2-2-1 交通バリアフリー化に関する公的補助・融資等
制度名等 概要 実施主体 補助率等
離島航路船舶近代化建造費補助金(近代化バリアフリー化船建造費補助金) 離島航路整備法に基づく国庫補助対象航路で使用する船舶の近代化及びバリアフリー化を図るために船舶の代替建造を行う事業 国土交通省 バリアフリー化に係る工事費の50%
上記を除いた船価の10%
交通バリアフリー施設整備助成制度 旅客船ターミナルや旅客船などにおける車いす対応エレベーター等交通施設の設置に対する助成事業 交通エコロジー・モビリティ財団 助成対象経費の30〜50%以内
共有旅客船のバリアフリー化施設にかかる支援 鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共有建造する船舶のうち、バリアフリー対応の船舶に対する補助事業 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 バリアフリー化のための追加的な建造費のうち事業団持分相当額に係る利息相当額を軽減
旅客船ターミナルの一体的なバリアフリー化事業 バリアフリー化に資する浮桟橋等の係留施設や、通路・照明・スロープ・手すり等に対する補助事業 国土交通省 (一般の港湾整備に準じる)
港湾利用高度化拠点施設緊急整備事業費補助金制度 民活法特定施設を整備する場合、高齢者・障害者に配慮した施設に対して補助率をかさ上げする制度 国土交通省 国と港湾管理者で7.5%
港湾の機能の高度化に資する中核的施設整備事業に関する融資制度 民間事業者(第3セクターを含む)が行う旅客船ターミナル施設等のバリアフリー施設整備事業に対する融資制度 日本政策投資銀行 金利・政策金利III、融資比率50%
資料)国土交通省ほか各実施主体ウェブサイトよりUFJ総合研究所作成
 
(2)海上旅客輸送に関する運賃割引制度
 海上旅客輸送についての運賃割引制度については、表2-2-2のようになっている。ただし、これらの適用に対する国の補助等はなく、割引相当額は事業者の負担となっている。
 
表2-2-2 身体障害者および知的障害者の運賃割引制度
割引運賃の区分 券種 割引率
本人 介護者
1種 単独 2等、急行便にかかる1等、急行 50% -
介護者あり 2等、1等、特等、特別室、座席指定、 寝台、急行、回数 50% 50%
定期 30% 30%
2種 単独 2等、急行便に係る1等、急行(101km-) 50% -
本人12歳未満介護者あり 定期 - 30%
1種)第1種身体障害者:
(1)両眼の視力がそれぞれ0.06以下の者
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ視野について視能率による損失率が90%以上の者
(3)両耳の聴力が耳介に接しなければ大声語を理解し得ない者
(4)両上肢を中手指関節以上でまたは両下肢をショバー関節以上で失った者
(5)両上肢または両下肢の機能を著しく傷害された者
(6)体幹の機能障害により起居、移動の困難な者
(7)心臓、腎臓、呼吸器または小腸の機能の障害により、社会での日常生活活動が著しく制限される者
(8)ぼうこうまたは直腸の機能障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限される者
(9)前各号の障害の種類を2以上有し、その障害の総合の程度が前各号に準ずる者
2種)第2種身体障害者:
第1種以外の身体障害者
資料)「一般旅客定期航路事業の運賃及び料金の標準設定方式」(日本旅客船協会)よりUFJ総合研究所作成
 
 交通バリアフリー法では、公共交通事業者等に対し、旅客施設および車両等における移動円滑化実績等を報告することを義務づけている。報告は毎年5月31日までに行うこととなっており、2001年が初年度であった。以下では、2002〜2004年各年の3月末時点における旅客施設および車両等の移動円滑化実績を比較する。
 
(1)旅客施設の移動円滑化実績
 2004年3月末において、1日平均利用者数が5,000人以上の旅客船ターミナルの総施設数は全国で8施設であった。このうち、移動円滑化基準への適合状況を「段差の解消」に基づいてみると、基準適合施設は前年の5施設から6施設に増加し、全体に対する割合は75%に増加した。「誘導用ブロックの設置」については、前年の4施設のままである。また、「身体障害者用トイレの設置」は前年の1施設から3施設に増加し、全体に対する割合は37.5%となった。
 旅客船ターミナルと他の旅客施設の移動円滑化実績を、全体に対する基準適合施設の割合で比較すると、「段差の解消」は、バスターミナルとほぼ同水準で、鉄軌道駅、航空旅客ターミナルを上回っている。「誘導用ブロックの設置」では、鉄軌道駅やバスターミナルを下回っている。「身体障害者用トイレの設置」は、バスターミナルや航空旅客ターミナルとほぼ同水準である。
 
表2-3-1 旅客施設の移動円滑化実績(段差の解消)
  総施設数 移動円滑化基準(段差の解消)
に適合している旅客施設数
全体に対する割合
2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 2004
旅客船ターミナル 8 9 113% 8 89% 3 5 167% 6 120% 37.5% 55.6% 75.0%
鉄軌道駅 2,742 2,739 100% 2,735 100% 902 1,068 118% 1,200 112% 32.9% 39.0% 43.9%
バスターミナル 44 45 102% 43 96% 30 32 107% 31 97% 68.2% 71.1% 72.1%
航空旅客ターミナル 21 21 100% 20 95% 0 0 - 1 - 0.0% 0.0% 5.0%
注1)各年3月末日現在
注2)「段差の解消」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第4条(移動経路の幅、傾斜路、エレベーター、エスカレーター等が対象)への適合をもって算定
注3)航空旅客ターミナルについては、身体障害者が利用できるエレベーター・エスカレーター・スロープの設置はすでに2001年3月31日までに100%達成されている。
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
表2-3-2 旅客施設の移動円滑化実績(誘導用ブロックの設置)
  総施設数 移動円滑化基準
(誘導用ブロックの設置)
に適合している旅客施設数
全体に対する割合
2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 2004
旅客船
ターミナル
8 9 113% 8 89% 3 4 133% 4 100% 37.5% 44.4% 50.0%
鉄軌道駅 2,742 2,739 100% 2,735 100% 1,776 1,988 112% 2,048 103% 64.8% 72.6% 74.9%
バス
ターミナル
44 45 102% 43 96% 24 26 108% 26 100% 54.5% 57.8% 60.5%
航空旅客
ターミナル
21 21 100% 20 95% 7 7 100% 9 129% 33.3% 33.3% 45.0%
注1)各年3月末日現在
注2)「視覚障害者用誘導用ブロックの設置」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第8条への適合をもって算定
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
表2-3-3 旅客施設の移動円滑化実績(身体障害者用トイレの設置)
  総施設数 移動円滑化基準
(身体障害者用トイレの設置)
に適合している旅客施設数
全体に対する割合
2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 2004
旅客船
ターミナル
7 8 114% 8 100% 0 1
-
3 300% 0.0% 12.5% 37.5%
鉄軌道駅 2,601 2,607 100% 2,605 100% 64 326 509% 540 166% 2.5% 12.5% 20.7%
バス
ターミナル
25 34 136% 35 103% 3 14 467% 15 107% 12.0% 41.2% 42.9%
航空旅客
ターミナル
21 21 100% 20 95% 3 5 167% 8 160% 14.3% 23.8% 40.0%
注1)各年3月末日現在
注2)「身体障害者用トイレの設置」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第12〜14条への適合をもって算定
注3)総施設数については便所を設置している旅客施設のみを計上
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
(2)旅客船等の移動円滑化実績
 旅客船については、2004年3月末の総旅客船数は1,137隻である。このうち、移動円滑化基準に適合した旅客船は2001年時点では全く存在していなかったが、2002年は2隻、2003年には23隻、さらに、2004年は50隻と大きく増加した。ただし、全体に対する割合は4.4%にとどまっている。
 鉄軌道車両等の移動円滑化実績との比較では、全体の2〜3割が基準に適合している鉄軌道車両や航空機と比較して、旅客船はかなり低い水準にある。ただし、基準適合車両等の対前年増加率でみると、2003年、2004年とも旅客船の増加率が極めて高い。
 交通バリアフリー法において、旅客施設を新たに建設するとき、もしくは旅客施設について大規模な改良を行うとき又は車両等を新たにその事業の用に供するときは、当該旅客施設又は車両等を移動円滑化基準に適合させることが義務づけられている。基準適合義務に関する条項は、旅客施設については法施行の2000年11月15日から施行されたが、車両については、法律の施行に伴う経過措置として、法律の施行からおよそ1年半後の2002年5月から施行された。特に旅客船は、建造に長期間を要することから、鉄軌道車両等と比較して基準に適合した船舶の供用までに時間がかかり、2003年以後に基準適合数が飛躍的に増加したものと考えられる。
 
表2-3-4 車両等の移動円滑化実績
  車両等の総数 移動円滑化基準に適合している
車両等の総数
全体に対する割合
2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 前年比 2004 前年比 2002 2003 2004
旅客船 1,114 1,116 100% 1,137 102% 2 23 1150% 50 217% 0.2% 2.1% 4.4%
鉄軌道車両 50,967 51,136 100% 51,005 100% 7,565 9,922 131% 12,086 122% 14.8% 19.4% 23.7%
バス 58,273 58,801 101% 58,404 99%                
低床バス           5,105 8,095 159% 10,492 130% 8.8% 13.8% 18.0%
ノンステップバス           2,294 3,835 167% 5,432 142% 3.9% 6.5% 9.3%
航空機 455 465 102% 473 102% 57 114 200% 152 133% 12.5% 24.5% 32.1%
注)「移動円滑化基準された車両等」は、各車両等に関する移動円滑化基準への適合をもって算定
資料)「公共交通事業者からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
(3)基本構想の策定状況
 交通バリアフリー法に基づき市町村が作成する基本構想は、2004年6月25日現在、146市町村155基本構想が国土交通省に受理されている。この中には、乗降客数5,000人以上の旅客施設のない市町村も9市町(北海道室蘭市、遠軽町、北見市、富良野市、山口県菊川町、島根県多岐町、山形県南陽町、新潟県糸魚川市、柏崎市)も含まれている。
 また、2004年1月末における国土交通省の調査によると、1日の利用者が5,000人以上である旅客施設が所在する562市町村のうち、今後の作成を予定している市町村は260(その後作成した市町村を含む。以下同様)にのぼり、71%(562市町村中397市町村)が基本構想を作成済みあるいは基本構想の策定を予定していることが明らかとされた。
 長崎県では佐世保市(2002年7月)と長崎市(2002年8月)が、福岡県では福間市(2001年3月)、大牟田市(2002年3月)、福岡市(2002年3月)、北九州市(2002年6月)、古賀市(2002年10月)、大野城市(2003年5月)、久留米市(2004年6月)がそれぞれ基本構想を策定しているが、本調査の対象地域とする博多港及び北九州港の周辺地域は、基本構想における重点整備地区には指定されていない。







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