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第5章 基本特性の測定と評価
5.1 送受アンテナ間回り込み量の測定結果
(1)アンテナ間アイソレーションの測定結果
 計算シミュレーション及び試作したアンテナによって、アンテナ間アイソレーションの評価を行った結果について述べる。評価実験の基本的な系統は図5-1であり、試作した2つのアンテナを電波暗室に設置し、ネットワークアナライザで伝送量を測定する。実際に実験を行った際の状況を図5-2に示す。2個のアンテナは、発泡スチロール等で、測定に影響のない距離まで電波吸収体から遠ざけて設置した。また、低いレベルの伝送量まで測定を可能とするため、ネットワークアナライザの出力をパワーアンプで増幅し、ダイナミックレンジを確保する事とした。この測定系で、アンテナ間隔D、グランド板寸法φを変化させて測定する。
 
図5-1 アイソレーション測定の基本系統
 
 はじめに、アンテナ間アイソレーションの周波数特性について検討を行った。送受アンテナを近接した場合と、ある程度距離を持たせた場合の、周波数特性を図5-3に示す。同図より、アンテナ間隔が離れている方が平均してアイソレーション量が大きいことがわかるが、特に2つのアンテナが近接している場合は、周波数とともにそのアイソレーション量が大きく変動することも明らかになった。これは、アンテナ間の多重反射が主な要因と考えられるが、ビーコンアンテナを設置する場合は十分注意が必要である。なお、この条件においては、両特性ともに-70dB以上のアイソレーションが確保できた。
 次に、アイソレーション量のアンテナ間隔Dによる依存性について検討を行った結果を図5-4に示す。実験は、グランド板直径φもパラメータとした。同図より、間隔Dを大きくとれば、アイソレーションが向上することがわかり、その距離依存性は概ね-25dB/mであることがわかった。さらに距離が大きくなれば、伝搬の理論式より、1/D2でアイソレーションが向上するものと考えられる。グランド板については、寸法が大きいほどアイソレーションが向上する傾向は見られたものの、顕著な差はみられなかった。なお、シミュレーションによる検討も行ったが、概ね実測値と一致する傾向が得られ、計算によってもおおよそのアイソレーション量は把握できるものと考える。
 このような理想的環境下においては、新マイクロ波標識が最低限必要とするアイソレーション=-66dBを確保できることがわかり、設置環境が良好であれば本システムが成り立つ可能性があることを検証できた。
 
図5-2 アンテナ間アイソレーションの評価実験概要
 
図5-3 周波数とアンテナ間アイソレーション(実測)
 
図5-4 距離とアンテナ間アイソレーション







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