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4.4 狭帯域フィルタ回路の試作と基本特性
(1)試作フィルタ回路の概要
 異常応答符号抑圧に使用するフィルタについては、市販されているフィルタモジュールを使用することができる。2次バタワースLPFのカタログ特性例を図4-13に示す。実際には、8次程度の高次なフィルタが必要となる。一般に、連立チェビシェフ特性等のフィルタは、アンチエリアシング等にも使用されるため、8次程度の高次フィルタが多く市販されている。しかしながら、バタワース特性やベッセル特性のものは、2次ないしは4次程度のものが多い。このため、これらのモジュールを組み合わせて、特性を実現する必要がある。
 
図4-13 市販2次LPFのカタログ特性例
 
 厳密には、カットオフ周波数が同じ、8次フィルタと2次フィルタ4段とでは特性が異なるため、この差異について検討した。
 カットオフ周波数fc=0.8MHzの8次バタワースフィルタと、2次4段バタワースフィルタの特性を計算した結果を図4-14に示す。なお、同図には振幅特性のみ示した。結果より、8次フィルタを1段で使用した場合に比較して、2次フィルタを4段使用した場合の方は遮断特性が緩やかになってしまうことがわかる。
 同様に、ベッセルフィルタについて計算した結果を図4-15に示す。バタワースフィルタほど顕著ではないが、同様の傾向があることがわかる。
 フィルタ特性の急峻さは、これまでの検討からわかるように、単位遅延時間と応答符号の単位長の関係で、その影響度が異なると考えられる。すなわち、単位遅延時間と応答符号の単位長の差が小さい場合は、これらの特性の差異についても十分注意を払う必要があると考える。
 なお、本調査研究における実験評価では、機材の関係等で2次フィルタを多段で使用した。
 
図4-14 バタワースフィルタの特性(カットオフ周波数0.8MHz)
 
図4-15 ベッセルフィルタの特性(カットオフ周波数1.25MHz)
 
 実際に試作したフィルタ回路の外観を図4-16に示す。同回路は、市販のプログラムフィルタモジュールを使用して構成され、10kHz〜1.59MHzまでの2次LPF特性を得ることができる。
 
図4-16 試作フィルタ回路の外観
 
 試作回路によって2次バタワースLPFを設定した場合の特性が図4-17であり、概ね理論通りの特性が得られている。実際には、より急峻なフィルタ特性が必要であり、同回路の場合、4段程度の多段化が必要である。このフィルタを使用して4段2次バタワースLPFを構成した場合の特性を、図4-18に示す。同図より、カットオフ周波数付近で理論値との差異が若干みられるものの、急峻なフィルタ特性が得られることがわかる。
 一方、実験検討を行うにあたっては、汎用の周波数可変フィルタ装置を用いれば、フィルタ特性を随時任意に設定できて効率的である。この装置は、任意の多段フィルタ特性を設定可能であり、バタワースフィルタに相当する最大平坦特性、ベッセルフィルタに相当する位相直線特性等を選択可能である。その特性の測定結果が図4-19であり、4段の2次フィルタを設定した例である。同図のように、最大平坦特性に設定するとバタワース特性、位相直線特性に設定するとベッセル特性が得られている。
 フィルタモジュールを使用して試作した回路と、周波数可変フィルタ装置の特性比較を行った結果が図4-20であり、等価な特性が得られた。すなわち、周波数可変フィルタ装置で得られるものと等価な特性は、実際の新マイクロ波標識を製作する上ではフィルタモジュールの組み合わせで実現可能であることが検証された。従って、以降実施するシステムの評価実験は、特性が任意に設定できる柔軟性から専ら周波数可変フィルタ装置で行うこととした。







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