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(4)異常応答波形への対処方法
 前節において、レーダーの距離分解能と新マイクロ波標識の単位遅延時間が一致しない場合、またレーダー送信波の中心周波数と新マイクロ波標識の処理の中心周波数が一致していない場合、応答波形に問題が生じる場合があることを示した。これまでの解析で、この異常符号が生成される要因は、周波数領域の観点から次の2点であることがわかった。
 
(1)伝達関数上の複数のスペクトラムが出力される。
(2)伝達関数上の主要スペクトラムが出力されない。
 
 この2つの事象に対処するため、フィルタリングによる応答波形スペクトラムの制限を試みた。すなわち、応答波形は最低でも1μsの幅を持つ符号であるから、最低限これを通過させ得る狭帯域のフィルタによって、不要なスペクトラムを抑圧しようとするものである。
 
図3-39 帯域の制限
 
 符号「K」の理想的な応答波形を形成するためのスペクトラムを図3-39に示す。基本的にはスペクトラムはほとんど0Hz付近に集中しているため、主にこの帯域を通過させることで概ね符号波形が生成できる可能性がある。一方、符号は急峻な立ち上がり、立ち下がりを持つため、理論的には高次スペクトラムを無限大まで有しており、これを制限する事は波形の鈍り、あるいは細かな波形の振動(リンギング)を生じさせる。そこで、符号波形を維持しつつ、どの程度の帯域制限が可能か計算により検討を行った結果を図3-40に示す。急峻な理想フィルタによって帯域制限を設けた場合、高周波成分が除去され、なめらかな波形となる条件があり、同図では±0.8MHzのフィルタリングを行った場合は符号が識別できなくなる程の鈍りもなく、またリンギングも比較的少ない結果が得られている。この結果を基に、遅延合成処理に±0.8MHzの帯域制限、すなわち1.6MHz帯域のフィルタリングを行う。なお、フィルタリングによって帯域制限を行う回路上の場所は、このシステムの系が線形であれば、入力端から出力端まで、どの位置でも理論的には効果は同じである。
 
図3-40 帯域制限を行った場合の符号波形
 
 まず、通常の正常な応答波形に対してフィルタリング処理を施した場合の、応答波形への影響について検証した結果を図3-41に示す。フィルタリングによる帯域制限前(a)に比較して、帯域制限後(e)は波形が若干鈍るものの、符号を十分識別できることがわかる。
 
図3-41  帯域制限による応答波形への影響(理想波形)
(a)入力波形(時間領域)
 
(b)入力波形(周波数領域)
 
(c)帯域制限前(時間領域)
 
(d)帯域制限前(周波数領域)
 
(e)帯域制限後(時間領域)
 
(f)帯域制限後(周波数領域)







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