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2003/02/13 読売新聞朝刊
観光資源カジノ 地域活性化狙い5都府県、法整備要求(解説)
 
◆健全運営には依存症、防犯対策大切
 東京都など五都府県がカジノ実現のための法整備を国に求めた。カジノを観光資源にすることで地域経済の活性化を図りたいという。
(解説部・左山政樹)
 この五都府県は、東京、静岡、大阪、和歌山、宮崎。法制度や経済波及効果などを考える「地方自治体によるカジノ研究会」を作って、今月六日、カジノを実現させるため、小泉首相や鴻池・構造改革特区相などに法整備を求めた。
 要求書によると、「有力な観光資源、新たなゲーム産業として、経済波及効果や雇用創出効果が期待できる。世界の多くの国々で開設されている」とカジノを“絶賛”したうえで、「必要な法整備を行われたい」と結んでいる。
 カジノ実施には、刑法の賭博(とばく)罪、富くじに関する罪などの規制があり、現段階では、実現性は薄い。それにもかかわらず、各自治体がカジノに固執するのは、法人税の落ち込みなどによる税収ダウン(東京、大阪)や、熱海などの温泉街の宿泊客の低落(静岡)が深刻化しており、地域活性化の切り札にしたい考えがあるからだ。五都府県以外にも沖縄、愛知、石川、大分県などでカジノ構想がくすぶっていて、石川県珠洲市は、カジノによる税収を少子対策にあてる構想も打ち出している。
 先頭を走っている印象が強いのは東京都だ。都庁展望室で模擬カジノを開いたほか、カジノ開設による経済効果も独自に試算、報告書をまとめている。
 その試算では、〈1〉単独のカジノハウスの開設〈2〉カジノハウス周辺にホテルや映画館などの娯楽施設を併設〈3〉カジノホテル〈4〉カジノハウス、カジノホテルのほか、娯楽施設も複合的に建設――の四ケースを想定。試算結果によると、カジノハウス単独の開設でも七百四十億円の経済効果があり、四千五百人の雇用が生まれるという。収益は三百億円を見込んでいる。
 最も効果が大きいのはカジノハウス、カジノホテルに娯楽施設が建設されるケースで、経済効果は二千二百五十億円。一万三千八百人の働き口ができて、収益額は九百十億円、とはじく。
 報告書では各国のカジノ税の実情も調べている。カジノ事業者の売り上げにかけるケースが多く、米ニュージャージー州は低率で8%。ドイツでは80%を課す。米ネバダ州では累進で3―6.25%。イリノイ州は15―35%。オーストリアでは35―80%と高い。都では、「娯楽施設利用税」が地方税に含まれていたことなどから、「カジノ税も地方税がふさわしい」と話している。
 石原都知事は「文化は人間の娯楽から発生していく。そういうところでリラックスして、人間の持っている、言葉はよくないが、賭博本能を娯楽として満たす中で、いろいろな枝葉が伸びていく」とカジノ文化論も披露する。
 ただ、カジノがギャンブルである以上、暴力団の資金源や犯罪の温床にならないよう十分な防犯対策を施すことが求められる。一施設で年間数百万人が入場するといわれる米国では、マフィア一掃のため、カジノ営業者、遊具メーカー、販売業者などを免許制にしており、審査の過程で犯罪歴のある関係者を排除している。
 ギャンブル依存症への対策も必要だ。一人当たりの平均消費額は韓国で五万円。フランスでは五千百円程度。消費額の大小で依存症の診断ができるかどうか不明だが、東京都は来年度予算で、カジノを健全に運営する仕組み作りなどを調べる予定だ。欧米でカジノといえば、きらびやかに着飾った紳士・淑女の社交場というイメージが強いが、それは依存症や防犯対策が行き届いているためだろう。
 
 
 
 
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