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1999/03/08 毎日新聞地方版
[ズームアップ99]弥彦競輪から、4市町村が撤退 苦しむ公営ギャンブル/新潟
 
◇長すぎる不況に収益落ち込み
 不況の風はギャンブルにも吹いている。競馬と並ぶ県内の公営ギャンブル・弥彦競輪から、新潟市など4市町村が今年度いっぱいで手を引くことになった。ここ数年、収益の落ち込みが激しく、今年度も収支の赤字が確実となったためだ。来年度から単独で開催する西蒲・弥彦村は4市町村分の負担もかぶらねばならず、一層の経営努力が求められることになる。
【上田泰嗣】
◆市民の理解
 議長の声が議場に響いた。「全員起立と認めます」
 新潟市議会は2月臨時会の最終日、西蒲・吉田、分水、岩室の3町村とともに設置した「県4市町村競輪事務組合」の今年度末での解散を可決、承認した。撤退の理由について、新潟市は「公営ギャンブルは、収益を公共投資などに充てるのが趣旨。税金で補ってまで行うのでは市民の理解が得られない」と説明する。
 吉田町など3町村も、3月定例会で解散を議題に上げ、承認を求めていくことになっている。
◆歴史と沿革
 県内の競輪は、戦後復興の資金集めとして1950年度に県が始めた。競輪場を造るには400メートルトラックが必要で、当時は弥彦神社の隣にあった陸上競技場以外に、それだけの施設はなかったという。
 運営に失敗した県が手を引き、翌年度から弥彦村が運営することになった。56年度には、新潟大火からの復旧を目指す新潟市が参加し、57年度は吉田町など3町村が競輪組合を結成し、加わった。64年には新潟市も組合に入って現在の形になった。
 以来、年12回の開催(1開催6日間で通算72日)のうち、弥彦村が7開催、組合が5開催を分担している。組合開催での配分金は新潟が2分の1、その他の3町村は6分の1ずつを取ってきた。昨年度までに新潟市に入った配分金の総額は約34億円になる。
◆収支状況
 売り上げのピークは90年ごろ。競輪組合の収支状況をみると、ここ二十数年間、2億〜3億円台の利益を上げてきたが、バブル経済が崩壊するとともに勢いが衰えた。96年度には260万円の赤字を出し、97年度は6600万円に広がった。売り上げは59億6700万円を記録したものの、4市町村への配分金はゼロになった。
 他県で開催する競輪の車券販売(場外発売)などによる穴埋めも追いつかず、今年度は赤字が一気に2億4000万円にまで増大すると見込まれたことで、撤退することになった。
 弥彦村は、有名選手を呼べる特別競輪(S級レース)を単独で開催できるため、赤字を出さずにいるが、その内情は楽ではない。
 昨年7月の「ふるさとダービー」(4日間)では、97年度の総売り上げの2倍に相当する257億円を記録した。それでも黒字は約6億円でしかない。弥彦村の関係者は「これがなかったら、今年度は大幅な赤字だった」と話す。
◆清算金
 4市町村が解散を検討し始めたのは、97年の秋口だという。関係者からは今も「いい時だけ参加して、悪くなったらすぐ逃げ出すというのはムシがよすぎる」との声も聞かれる。
 弥彦村も、撤退をすんなりと承諾したわけではなかった。競輪組合側と結んだ協定では、今後数年間の車券発売機リース料などにかかる6億円を清算金として4市町村に払ってもらうことにした。いわば手切れ金だ。配分金の割合に合わせて、新潟が半額の3億円、残りはそれぞれ3自治体が1億円ずつ負担する。
 また、弥彦村は今後の赤字を見越して補償を求め、年間で4億8000万円以上の赤字が出たら4市町村が補てんすることを協議する、という条項を盛り込んだ。その一方で、新潟市は3町村と、「新潟市は赤字補てんには無関係」とする協定を結んだ。
 弥彦村は「競輪は村の一大産業。やめるわけにはいかない。赤字を出さないよう経営努力をしたい」といい、場外発売の増加や特別競輪の招致に努める。
◆県競馬も赤字
 県と新潟、三条、豊栄の3市でつくる県競馬組合も赤字に苦しんでいる。90年度まで伸びていた売り上げは、94年度以降落ち続けている。収支も今年度まで5年連続の赤字が見込まれ、累積赤字は33億円に上る。
 県競馬組合は「不況になると公営競技は伸びると言われるが、不況が長すぎて、そのレベルを超えてしまった。入場者数はそれほど変わらないが、購買の単価が下がっている。ピークの79年は平均5万円だったが、今は3万円」と話す。
◆全国の状況
 競輪組合の解散は、新潟だけの現象ではない。95年度末には福岡5市競輪組合、96年度末には高知県競輪事務組合が解散している。今年度も静岡県の県6市競輪組合が撤退で調印し、岐阜県の組合も解散に向けて動いているという。
 
 
 
 
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