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私はこう考える【公営競技・ギャンブル】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/11/20 朝日新聞朝刊
道営競馬、青息吐息 国内最大の馬産地・・・衰退のおそれ/北海道
 
 地方競馬の不振が続いている。50年以上の歴史を持つ道営ホッカイドウ競馬も存続の危機にある。収益で道財政に貢献するために始まったが、景気低迷やレジャーの多様化で売り上げの減少が止まらず、11年連続の赤字が確実だ。経費削減も限界で、自力で黒字転換できる見通しは暗い。廃止すれば日高地方をはじめ国内最大の道内馬産地が衰退しかねない。道は、人気も金も中央競馬に集まる今の競馬界の「構造改革」に望みを託す。
●毎年20億円の赤字 経費削減「もう限界」
 48年に始まったホッカイドウ競馬は、91年に史上最高の454億円を売り上げ、約8億円の黒字を記録。だが、92年からは毎年20億円前後の赤字が続く。01年度の発売額は124億円。今季は100億円を切る見通しだ。
 昨季までの54年間で、道の一般会計に計290億円を繰り入れてきた。一方、93年からは一般会計による赤字の穴埋めが続いており、計107億円を借り入れている。
 まだ約190億円の「貸し」がある計算だが、麻田信二・道農政部長は「道財政の厳しい現状では、過去の貢献と今の赤字問題とは分けて考えないと」と話す。
 売り上げ低迷後は開催地の絞り込みなどで費用削減を進めた。01年度の開催経費は73億円でピーク時の4分の3。さらに今季は馬主や調教師などが受け取る賞金を昨季より3割減らし、経費は56億円まで落とした。
 それでも収入減に追いつかず、今季も約17億円の赤字を見込む。賞金カットなど生産者を圧迫する経費削減は「もう限界」(谷川弘一郎・日高支庁浦河町長)の声が強い。
●優秀馬の「踏み台」に 魅力乏しい新馬戦
 公営競技の低迷は全国的な傾向だ。87年度に25あった地方競馬は02年度は21だった。01年度はすべての地方競馬が赤字でピーク時と比べた発売額は平均4割も減った。
 とりわけホッカイドウ競馬は8割近く減り、落ち込みが際だつ。国内産サラブレッドの94%(01年)を産出する国内最大の馬産地・北海道ならではの「興行面の弱点」(道幹部)を抱えるため、との見方が強い。
 道内産の馬を買った馬主は当初、調教師の腕が良い道内の厩舎(きゅうしゃ)に預けることが多い。このためホッカイドウ競馬の新馬戦の割合は47.1%(01年度)と、他の地方競馬(平均10.8%)より高い。新馬戦は予想しづらい上、距離が短く「魅力が弱い」(道競馬事務所)という。
 さらに、新馬戦を勝ち抜いた優秀な馬は、中央競馬や他の地方競馬に移ることが多い。賞金が高いほか、雪が降らずに通年開催できるため、馬を効率的に出走させて稼げるからだ。01年度にホッカイドウ競馬で新馬戦を勝った220頭のうち、今年度も残ったのは約4分の1の56頭だった。
 ホッカイドウ競馬は「いわば『踏み台』」(道幹部)。馬の成長を見守るのが好きなファンにとっては馬の入れ替わりが激しい点もマイナス要因だ。
 ここ数年は場外発売所の増設や新型馬券の導入などを図ってきたが、人気低迷に歯止めをかけるには至っていない。来季は、日本中央競馬会(JRA)などが導入して好評だった計3種類の新型馬券を導入して増収を図る予定だ。
●中央、「うまみ」独占 改革訴え、背水の陣
 ホッカイドウ競馬は、道内の馬生産者にとっては「稼ぎ場所」だ。同競馬の馬主の約4割は道内の生産者で、売れない馬を自ら走らせて収入を得ている。「ホッカイドウ競馬が消えれば、こうした馬生産者が打撃を受け、国内の馬供給システムが崩壊しかねない」というのが道内関係者の立場だ。
 だが、公営競技である以上は収支が問われる。10月に開かれた道地方競馬運営委員会(委員長・宮脇淳北大教授)では、「馬産地振興だけなら競馬以外の方法でもいい」などの意見も出た。
 一方で「世界の代表的な馬産地の競馬を残すことは、日本や北海道にとって重要」という声も強く、とりあえず来季は「今季以上の収支改善を果たすこと」を条件に開催が決まっている。
 国は特殊法人改革の一環で、競馬事業全体の見直しを始めた。道が狙うのは「利益構造」の見直しだ。「JRAは馬の育成を地方に頼り、人気馬やファン、利益などの『うまみ』を独占している」(同委員会委員)という不満がある。
 国は競馬法などの改正案を04年の通常国会に出す予定で、03年の議論が勝負になる。「来年度は、中央に背水の陣で『馬供給システム崩壊の危機』を訴える戦術も重要になる。これはもはや政治力学の問題だ」と宮脇委員長は話す。
◇競り低調、減らぬ借金 日高・競走馬牧場
 「どうかみなさん、我々に無事に年を越させてください」
 今月11日、日高軽種馬農協が主催する競走馬の競り市が開かれた日高支庁静内町の北海道市場。全国から集まった約150人の馬主たちを前にあいさつに立った前川敏秋組合長が悲痛な表情で訴えた。
 日高支庁管内では毎年約7千頭の競走馬が生産される。国内の8割を占め、その半数ほどが地方競馬に所属する。「11月市場」は今年最後の競り市だった。
 上場された1歳のサラブレッドは計309頭。ほとんどが春から売れ残った馬だという。買い手はなかなか見つからず競り人の威勢のいい声だけが会場にむなしく響いた。
 門別町から来た男性(36)は、初日に2頭を競りにかけた。「どっちも8月から出しているやつさ」。
 祖父の代から続く生産牧場。長年、生産馬を引き取ってくれた馬主もいた。だがその馬主は不況のあおりで馬から手を引いた。男性が持ち込んだ2頭のうち1頭が売れた。付き合いのある名古屋の調教師に頼んでやっと買い手を見つけてもらったのだという。それでも売値は希望価格の半額にも満たなかった。
 今年最後の市場では結局、56頭しか売れなかった。5頭に1頭も売れなかった中で、男性は「売れただけでもよしと思いたい」と苦笑いした。
 日高地方の競走馬生産者は、大小合わせて約1200。8割ほどが個人経営で、家族だけで代々続く牧場を維持しているところも多い。
 野菜や花、果物栽培など経営の多角化を自治体などが勧める動きもある。
 だが、別の男性は「それでは借金は到底返せない」と言った。「馬の借金は馬で返す」という世界。「当たればでかい」という言葉は、半面、牧場を手放しても借金返済には追い付かないということも意味している。
 国内競馬の売り上げが低下する中で競走馬の取引価格も落ちている。日高軽種馬農協が主催した今年の競走馬市場ではサラブレッド1頭の平均は613万円。5年前に比べ300万円ほど安くなった。
 少しでも売り上げを増やそうと、農協はここ数年、海外市場の開拓に積極的に乗り出している。韓国には71〜82年に約500頭を輸出。その後、オーストラリアやニュージーランドに取って代わられたが、最近は農協を通さずに生産者との直接取引が増えてきた。
 香港には今年3頭を売却。今後はシンガポールやマレーシアの視察も予定し、売り込みを図る。それでも「地方競馬、特に馬産地にある道営競馬は、競馬の底辺を支える役割を担っている」と前川組合長。「たとえ組織が変わっても、北海道での競馬は続けなければならない」と強調する。
 牧場オーナーで、名馬シンザンをけい養していた浦河町の谷川弘一郎町長は、競馬事業のあり方などを検討する農水相の私的諮問機関の委員に選ばれた。「道営競馬がなくなれば産地の崩壊につながる。馬産地がなくなったら、北海道の価値もなくなる」とまで言い切っている。
 
 
 
 
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