売り上げ不振で、三月下旬に閉鎖した福岡県稲築町の佐賀競馬・場外馬券売り場「トゥルー稲築」(稲築場外)。これからの利用法を尋ねると、施設主で、隣接の山田市で建設業を営む矢本憲文社長(四九)は、自信と不安の入り交じった表情で話し始めた。
稲築場外は一九九四年四月、炭鉱跡地にオープンした。「地元を説得して誘致さえすれば、施設主は半永久的にもうかる」と、全国で場外の建設構想が持ち上がったころだ。年間売り上げ三十億円を見込んでいた。
売り上げは初年度が九億四千三百万円、九七年度が七億二千九百万円。売上額の一定率を賃貸料として受け取る契約だった矢本さん側のもくろみも外れた。「景気悪化で日本中が狂ったんですよ。でも、二十年契約を四年で解約されてはねえ・・・」と恨めしげだ。
佐賀県競馬組合側にも事情がある。組合本体が九七年度初めて赤字に転落の見込み。累積赤字六億円の稲築場外を放っておくわけにはいかなかった。同組合の百崎保徳・企画労務課長は「努力したが、回復の見込みはない。市場経済の原理から言っても、閉鎖はやむを得なかった」と話す。
「バブルのころは、山の中にだって造れば場外はもうかった。でも、造ればもうかるという時代は終わったんじゃないでしょうか」。場外の撤退は全国初。稲築場外の清算を「終戦処理」にたとえ、深くため息をついた。
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