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1997/12/08 朝日新聞夕刊
変わる競馬中継 専門局、CS放送に走る(歩く)
秋の中央競馬G1レースは今たけなわ。そんな中、通信衛星(CS)を使う競馬専門局「グリーンチャンネル」が、衛星デジタル放送「パーフェクTV」「ディレクTV」の両方で見られるようになった。一方、放送衛星(BS)でも、ハイビジョン専門チャンネルの競馬中継が定着しつつある。日本のテレビ放送開始とともに中継が始まって四十四年、競馬をめぐる放送環境の変化をさぐった。
(斉藤勝寿)
国際レース「ジャパンカップ」が行われた先月二十三日、東京都江東区にある「グリーンチャンネル」のスタジオを訪ねた。
競馬の開催日は三つの競馬場とスタジオを結び、最大三十六レースの生中継はもちろん、パドック、払い戻し、解説を盛り込む。そろいのジャンパーを着たスタッフが、てきぱきと分単位で画面を切り替えていく。
出走直前、それまで余裕の表情だった美野真一ディレクターの表情が凍りついた。各馬がゲートに入りつつあった時に突然、実況の音声が途絶えたのだ。美野さんが次々に指示をくり出す。数秒後、音が戻り、スタジオ全体に安どのためいきが広がり、美野さんにも笑顔が戻った。
○だれでもどこでも
「グリーンチャンネル」は、JRA(日本中央競馬会)からの出資がほとんどを占める財団法人だ。一九九五年一月、日本初の競馬専門チャンネルとして、JRAの電話投票システムかCATV(ケーブルテレビ)に加入している人に映像を送り始めた。
視聴者は増え続け、十月末現在で前年より四割多い約十三万人。そこで、より多くの人が視聴できる衛星デジタル放送に参入することを決め、十月末に委託放送事業者の認定を受けた。加入すれば、全国どこでも、だれでも見ることが可能になった。石倉正幸・事業部長は「スタッフにも張り合いが出ます」と事務所で顔をほころばせる。
○将来性あるソフト
競馬など公営ギャンブルは、CSにとって魅力あるソフトだ。南関東の地方競馬も放映するディレクTVは「競馬ファンのすそ野は広く、在宅投票する人の増加も見込めるので、かなり将来性のあるソフトと考えている」。
長年、競馬放送に力を入れてきたフジテレビも、「まだ白紙の状態」(広瀬英明広報局長)というが、来春放送開始をめざす第三のCSデジタル放送「JスカイB」を通じた競馬専門チャンネル設立の構想を持っている。
JRAはフジテレビなどに対し、「ノミ行為の助長」を理由に、馬券売り場などがない地域への地上波の放映を控えるよう要請している。CS放送はそうした地域への普及が見込める点も、テレビ局にとっては魅力だ。
東京・虎ノ門のJRA城山事務所で会った中島秀一・広報室次長は「地上波とCSでは影響力が違いすぎるので一緒にはできないが、将来的には地上波も全地域での放送を検討していかなくはならないだろう」と語る。
○毛づやもくっきり
ハイビジョン放送も競馬に向いているとされる。最後の直線、各馬がたたきあう展開がワイド画面で鮮明に映し出されるほか、馬の調子を見るパドックでは毛づやまでくっきりと見えるからだ。
BSのハイビジョン専門チャンネルでは原則として、日曜の午後一時から四時まで、フジテレビが主力となって競馬中継をしている。
この七日、朝日杯三歳ステークスがあった中山競馬場。フジテレビのスタッフが、ハイビジョン専用カメラ六台を持ち込んで中継していた。地上波と違って、CM抜きで三時間、番組構成にも工夫が必要だ。
担当の丸山史プロデューサーは「過去の有力馬の仮想対決など、地上波とはひと味違う内容を盛り込むようにしている。将来の競馬中継を模索するような番組にしたい」と意味込みを語ってくれた。
しかし、まだまだ映像表現の面で限界もある。
例えばアメリカでは、騎手のヘルメットにカメラをつける試みが始まっている。日本でも放送関係者の間には「臨場感あふれる映像のため、馬と並行して走るカメラや芝生内蔵マイクを設置したらどうか」などの意見もあるが、「レースの公正、安全性も考えると実現は難しい」(JRA)という。
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