不況で売り上げが減っている大井競馬の振興対策を検討していた特別区公営競技振興対策協議会は、二十三区すべてに場外馬券売り場を設置することを提言した。これを受けて、開催者の特別区競馬組合(管理者・天野房三渋谷区長)は提言の実現に向けて特別区長会(会長・遠藤正則文京区長)に協力を求めた。場外馬券売り場は売り上げ拡大の「切り札」だが、ギャンブル施設への拒否反応は根強く、今後計画が具体化するにつれて、住民からの反発も強まることが予想される。
協議会は「二十三区場外ネットワークの構築」を打ち出し、急を要する起死回生策と位置づけている。具体的には、文京区と大井競馬場のある品川区を除く二十一区に最低一カ所の場外を設置する。これによる場外の売り上げは年間二千億円を超え、総売り上げは倍増すると試算している。
大井競馬は八六年夏に始めた日本で初のナイター競馬「トゥインクルレース」が若者や女性の人気を集め、おりからの競馬ブームにも乗って毎年、売り上げを伸ばした。八五年に八百六億円だった年間売り上げは九一年には千九百三十七億円となった。
しかし、不況の中で中央競馬との競合に勝てず、九二年の売り上げは千六百六十三億円、九三年は千四百九十八億円と減少が予測されている。このため、組合は昨年七月、同協議会に振興策を諮問していた。
協議会は、場外が地元から「迷惑施設」とされることも認めている。これを配慮し、非開催日には地域の文化施設として利用できる「テレトラック」と呼ばれるホールや、商業ビル内に造る「サロンタイプ」など新しい場外像も示している。
しかし、あくまでもギャンブル施設である場外への住民の反発は根強い。組合は東京ドームそばにある唯一の場外「オフト後楽園」をドーム内に移転し、窓口数を倍増しようとしているが、地元住民から区議会に反対の請願が出されたこともあって計画は進んでいない。
反対運動をしている「後楽園競輪復活反対文京区民集会実行委員会」の村木幸子代表世話人は「オフトでは、馬券を買って補導される高校生も多いそうです。開催日には地下鉄の改札口は大変な混雑。場外が出来たら、町の雰囲気ががらりと変わります。各区に造るなんて絶対に反対ですし、各地で反対の声が上がるでしょう」と話している。
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