|
1989/10/13 朝日新聞朝刊
パチンコ疑惑を解明せよ(社説)
10兆円産業といわれるパチンコ業界から与野党の国会議員が多額の政治献金を受け取っていたことが明らかになった。献金の目的、性格、それを受け取った議員の行動が徹底的に解明されなければならない。
業界の団体である「全国遊技業組合連合会」(全遊連)が、59年以降の5年間に臨時会費や普通会費から、海部首相はじめ100人以上の与野党の政治家に、総額1億5000万円にのぼる政治献金を贈っていた「献金リスト」が明らかになった。
業界関係者によると、この時期に全遊連は、臨時会費だけでも全国の業者から3回にわたって徴収、その総額は2億5000万円にのぼる。献金リストの一部は、この中から支出されたものと見られ、これ以外にも多額の献金があったとの見方もでている。
全国に1万4000余軒あるといわれるパチンコ店をめぐっては、59年の風俗営業法改正の際に、警察の介入権限の強化が焦点となったほか、昨年からはプリペイドカードの導入が問題になった。同業界の集中的な献金攻勢は、こうした問題を業界に有利に運ぶ狙いがあったのではないか。第一に解明すべきはこの点である。
特定の業界にからんだ政策や法案が政治問題になり、業界側が有利な決着をつけようと政界にはたらきかけるというパターンは、しばしば汚職の温床となってきた。古くは炭管汚職や売春汚職がその典型だし、新しくは就職情報誌の規制問題が背景になったリクルート事件もそうだ。
今回のパチンコ疑惑は、政治献金の一部が明らかになっただけで、政界への働きかけの全容はまだ姿を見せていない。どんな規模の工作が行われ、だれがどう動いたのか。その結果どうなったのか。
国民の間には、リ事件が巻き起こした政治不信が根深く広がっている。「わが国の政治は、金で動いている」と感じている層は、決して一部ではなくなっている。自らが招いたこの事態を打開するためにも、国会や各党はこの新たな疑惑の解明に正面から取り組むべきである。状況によっては、関係者の証人喚問などの手段も必要だろう。
まず注目されるのは、社会党の対応である。この問題の発火点となった週刊誌は、風営法改正をめぐる国会質疑で、社会党議員が業界寄りの質問をしたほか、プリペイドカード問題でも同様の動きをした、在日本朝鮮人総連合会から献金を受けた疑惑がある、などと社会党を批判してきた。同党は13日に党独自の調査結果を公表するという。内容に注目したい。
政治権力をにぎっている与党側が、業界側の意を受けて行政に様々な影響力を行使できるのに対し、野党議員の場合は、国会での質疑などで利権の代弁者的な行動をすれば、たちまちに目立つ。収賄罪の構成要件である職務権限にもストレートに結びつく。それだけに、野党議員の身の処しかたには、一段と厳しさが求められる。
自民党の小沢幹事長は、「多少の血を出しても、徹底調査する」と言明した。献金額では自民党への献金が圧倒的に多いうえ、業界とのつながりが深いのも一部の警察OBなど同党議員である。自らウミを出す決意が求められる。
今回明るみに出た献金自体は、個々の政治家側が政治献金として適正に処理している限り、それだけでは刑事事件とはならないかもしれない。しかし、背景の奥深さを考えると、新たな展開も十分考えられる。捜査当局も情報収集に力を入れてほしい。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。
|