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4. 沖ノ鳥島に必要な船舶航路目標としての設備
 沖ノ鳥島のリーフ内に、可及的速やかに、船舶航路目標としての諸設備を、以下のとおり設置すべきである。
 
【設置物】
 「レーダーリフレクター」一式。「(仮設)灯台」一基。「マイクロ波無線標識局」一基。
 
【設置場所】
 「観測施設」の建物上に高さ約10mの金属塔を立て、これらを設置する。「観測施設」のレーダー探知上の有効高さは、現在の21mから31mとなる。その結果、視察船「だいとう」(レーダーアンテナ高さ約14m)の場合で言えば、現在の探知距離約18海里が、設置後には約21海里に増加する。
 
【レーダーリフレクターの様式】
 「レーダーレフレクター」はレーダーのマイクロ波を反射し、船舶のレーダー画面上の映像をより明瞭にするための装置である。「8面コーナークラスタ型」の「レーダーレフレクター」を「(仮設)灯台」を囲むように設置する。
 
【諸設備の電源】
 電源確保の問題から、(仮設)灯台を含めた諸設備の電源は、太陽電池(及びバッテリーとの併用)とする。
 
【(仮設)灯台の電源、電球、レンズ及び光色】
 電池容量の関係から、電球は50W、レンズは375mmの白色の無等級不動レンズとする。なお、電源については、将来、「温度差発電」等によって定常的に安定供給される電力の利用を目指し、利用可能となった時点で、さらに性能をアップさせた恒久的な灯台に模様替えする。
 
【(仮設)灯台の光度】
 電球、レンズ及び光色のスペックから計算した結果、(仮設)灯台の光度は2,500cd(カンデラ)となる。
 
【(仮設)灯台の地理学的光達距離】
 (仮設)灯台の「地理学的光達距離」は、計算の結果、約16海里となる。
 
【(仮説)灯台の光学的光達距離】
 (仮設)灯台の「光学的光達距離」は、計算の結果、約12海里となる。
 
【マイクロ波無線標識局の形式】
 「マイクロ波無線標識局」は「レーダービーコン」または「レーマークビーコン」、いずれか技術的に可能な形式を採用する。
 「レーダービーコン」とは、船舶のレーダー画面上に、送信局の位置を輝線符号の始点で表すように、船舶のレーダーから発射された電波に対応して電波(マイクロ波)を発射する装置をいう。
 「レーマークビーコン」とは、船舶のレーダー画面上に送信局の方位を輝線で表すように、電波(マイクロ波)を発射する装置のことをいう。
 
図3: 「レーダービーコンの表示例」
 
 
図4: 「レーマークビーコンの表示例」
 
 船舶のレーダーによる探知距離は、「レーダービーコン」を採用した場合には10海里程度、また、「レーマークビーコン」を採用した場合には、約20海里程度と予想される。
 
5. 船舶航路目標設備の設置による効果
 沖ノ鳥島を船舶航路目標として整備することにより、期待される効果を以下に列挙する。
 
【即効性】
 今後、沖ノ鳥島の有効利用方法に関しては、視察団参加者等から、様々な提案がなされるものと予想する。
 例えば、「リーフ内浸入海水の堰き止め・誘導等による砂州等の強制形成」、「周辺サンゴの積極的な育成による島の土地の確保・増加」、「温度差発電モデル施設の建設」、「サンゴ関連の調査研究拠点の建設」、「マリンレジャー拠点の建設」、 「漁船等の緊急避難・補給基地の建設」などである。
 しかしながら、これらの手法は、いずれも周到な準備を必要とし、国際社会に対し有効利用の実態をただちにアピールすることは困難である。
 沖ノ鳥島の船舶航路目標としての整備は、比較的短時間で行うことが可能で、即効性を伴う。
 
【接近船舶の増加と鉱物資源輸送の生命線】
 前述のとおり、沖ノ鳥島周辺(60海里内)海域を航行する外航商船は、日本に鉱物資源を輸送する船を中心に、年間推定約1,000隻に達する。
 しかしながら、これらの船は沖ノ鳥島を航路目標とするどころか大洋上の暗礁の一つと捉え、20〜30海里以上離れて航行している。
 沖ノ鳥島を船舶航路目標として整備することにより、これらの船の大半が沖ノ鳥島を接航し、ときに12海里の領海内に進入することが予想される。
 すなわち、沖ノ鳥島は、名実ともに日本の鉱物資源輸送の生命線となる。
 
【諸外国へのPR】
 設置した灯台やマイクロ波無線標識局は、日本をはじめ世界各国の「灯台表」に「沖ノ鳥島灯台(または、無線標識局)」として掲載される。
 特に、英国版の灯台表は、世界スタンダートとしてあまりにも有名である。この灯台表に沖ノ鳥島の名称が記載されることにより、社会経済活動が行われている国際的な“証”となる可能性がある。“日本海”の表記が「日本海」なのか「東海」なのか、英国版海図でどのようになされているのか、世界が注目するのと同様、極めて重要な既成事実となりうる。
 
【他の有効利用方法とのジョイント】
 灯台等の電源として、将来、温度差発電システムを利用するなど、他の有効利用方法とのジョイントが可能となる。第一、今後、諸拠点や施設を建設するに際しては、作業船等の船舶との関わりは避け難く、これらの船舶の安全のためにも、灯台等の設置は必要である。
以上







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