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総裁秋篠宮妃殿下 ご動静
 
第48回結核対策推進優良市町村表彰式・
第47回胸部検診車「けいりん号」完成伝達式より
平成16年9月28日 ホテルニューオータニ
 
 日本自転車振興会の補助により胸部検診車「けいりん号」7台が製作され, 完成伝達式が行われました。続いて結核対策に優良な成績をおさめた22市町村の表彰式が開催されました。妃殿下はお言葉を述べられ, 市町村の代表者に表彰状をお渡しになりました。
 
優良市町村表彰式でお言葉を述べられる
 
けいりん号の鍵を受配支部それぞれに
お渡しになる妃殿下
 
〔表紙〕複十字誌過去表紙写真より
 
〔カット〕佐藤奈津江
 
 
300号を迎えて
 
 
結核予防会総裁
秋篠宮紀子
 
 このたび, 財団法人結核予防会機関誌『複十字』が300号の発刊を迎えることになり, まことに喜ばしく, 関係者のたゆまぬご尽力に深く敬意を表します。
 本誌が創刊された昭和30年は, 結核新規登録患者数が50万人以上, 罹患率は人口10万人に対して約580人と, 結核のまん延が著しく, 結核健康診断が全国的にはかられようとしている時代でありました。
 それからほぼ半世紀が経ち, 結核の状況は大きく改善され, 新規登録患者数は約3万人, 罹患率は人口10万人に対して約25人まで減少しました。しかし, 依然として結核患者の高齢化や地域格差の増大, さらには治療を中断する患者の増加, 多剤耐性菌の出現, 集団感染の多発など, 結核をとりまく状況も変化しております。
 本誌は50年間にわたり, このような結核状況の変遷, 結核対策に従事する方々の活躍や結核予防会の活動などを記録してまいりました。
 来年4月には改正された結核予防法が施行され, 結核対策はこれまでの集団的な対応から個別的な対応へと移行いたします。結核対策が大きな節目を迎えている今日, 結核に関する正しい知識を広く伝えることが, より一層重要になってきております。
 本誌がその役割を果たし, ますます充実していくことを切に願っております。
 
新しい結核予防法への取り組み
とき●平成16年9月29日
ところ●結核予防会会議室
 
座長:森 亨(結核研究所長)
演者:(50音順)
阿彦 忠之(山形県村山保健所長)
牛尾 光宏(厚生労働省健康局結核感染症課長)
加藤 誠也(結核研究所対策支援部長)
椚(くぬぎ) 時子(東京都福祉保健局健康安全室感染症対策課結核係次席)
豊田恵美子(国立国際医療センター呼吸器科医長)
 
 
森 亨氏
 
 この度複十字誌創刊50年, 第300号ということで, 複十字誌のみならず結核予防会にとっても節目の時を迎えました。折しも, 結核予防法の53年ぶりの改定にもぶつかっており, この号はまさにタイミングのいい特集号になると思います。今日は新しい結核予防法や関連制度の改定をめぐって, 今後それをどのように生かすかについて議論を展開して頂きたいと思います。
 まず, 厚生労働省の結核感染症課長として, 今回の結核予防法改正に一番ご苦労頂いた牛尾課長から。
牛尾 今回の改正には4つの大きな柱があります。1つは, 感染症法と現在の結核予防法との比較をすると, 国の基本指針が感染症法にあって, 結核予防法にはない。むしろ, 急性感染症を中心とした感染症法よりは, 長期間のさまざまの施策を計画的に展開していかなくてはいけない結核予防法にそれがなく, ぜひ盛り込みたいと思いました。そういう意味で, 国の基本指針, それに基づく都道府県の予防計画の策定というのが, 今回の1つの大きな柱です。
 2番目は, 現在の制度が出来た昭和26年と結核罹患状況を比較すると大幅に改善されてきており, より効率的な健診を行うため, 19歳以上を対象とした毎年の健診でなく, より重点的でリスクに応じた健診を実施すべきということ。
 3番目がツ反なしでのBCG接種。今の小児の罹患状況とできるだけ早く接種すべきということを踏まえての改正です。
 それから, 法律の中でDOTS(ドッツ)の考え方を盛り込みたいというのが, 4番目の柱でした。
 そのほか, 例えば結核診査協議会等の名称や委員の構成等々ほかにも改正点はございますが, 大きな柱は4点です。
 
牛尾 光宏氏
 
 1999年の緊急事態宣言以来, 厚生労働省, 厚生科学審議会が検討を重ねて方向性を作ってきた制度ですが, 阿彦先生は審議会委員として新しい法律をどうお考えになりますか。
阿彦 医療や積極的疫学調査, サーベイランスなどに関する法改正がもう1段階ないと, 現場では不都合という部分もありますが, 感染症法と同様に結核予防法にも体系づけられたらいいと思ったことの半分くらいは, 今回の改正で入ったのではないかと思います。
 
阿彦 忠之氏
 
 ただ、国と自治体でお金がかからなくなる対策ばかりが優先されて, 業務を減らすためにEBMが切り札にされているという状況があります。ツ反をやめてBCG直接接種, 健診も大幅に対象を削るということがまず優先されていますが, 単なるリストラではなくて, 地域の実情に応じた計画性のある結核対策を, どこの県でもやってもらえるようにしないといけない。我々山形県で言えば, 「結核は全国で3番目に低いから」と予算を削られる方向に議論がいってしまう危険があります。そこで, 都道府県予防計画を作ることの意義は非常に大きいので, この部分の改正はぜひ生かしていかなければならないと思います。
牛尾 私どもも今回の改正が100%のものとは思っておりません。とりわけ入院治療の問題は, 医療法にも関わりますが, 国立療養所が独立行政法人化されたりして, 今のままの結核病床制度でいいのかというのが長年の課題になっておりますから, 引き続き検討しなければならないと思っております。
 ただ, 今回の改正について, 健診やツ反なしのBCG接種が行政の負担を軽くしただけ, と受け止められておりますが, 新たに何か展開するためには, 昔背負っていた荷物を下ろさなければなりません。私どもの思いは, 結核予防法改正を契機としてぜひ時代や地域のニーズをくみ取って, より実効性の上がる結核対策を進めていきたいというものです。







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