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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/03/12 朝日新聞朝刊
国連崇拝卒業し自ら参加せよ 吉田康彦さん(言いたい・聞きたい)
聞き手=編集委員・岩垂弘
○駆け込み寺扱いは疑問
◆湾岸戦争をきっかけに、日本国民の間で国連に対する関心が再び高まっています。国連平和維持活動(PKO)をめぐる議論も活発です。それだけに、日本人が国連について正しい認識をもつことが求められていると思います。一昨年まで約10年にわたって国連諸機関に勤務されたとのことですが、国連の内側から見ていて、日本人の国連観をどう思いましたか。
 「国連を始めとする国際機関とはどういうものなのかと言うと、アメリカに限らず、ヨーロッパ諸国、旧ソ連もそうですが、みな、自国の国益追求の場と考えているわけです。まず、国際機関は自分たちがつくったんだ、自分たちで動かしているんだという意識が強い」
 「国連は第2次世界大戦直後に米、英、仏、旧ソ連などの旧連合国が、旧枢軸国だった日・独・伊の全体主義・軍国主義を再び台頭させないようにしようとつくったものだし、国連の専門機関も、各国の共通の利益の追求のために出来たものなんです。例えば世界保健機関(WHO)は、コレラがヨーロッパではやらないように、各国の港で共通の検疫をしようではないかという共通の利害から生まれたし、国際電気通信連合(ITU)も各国が電信、電話を国境を超えて利用し合う上で基準を設ける必要から出来たものなんですね」
 「なのに、日本人は国連をとにかく既成の権威として無条件にあがめ奉る。日本人にとって、国連はお上、国際的なお上、既存の国際的権威なんですよ」
 「国際労働機関(ILO)に対する態度なんかその典型ですね。旧総評にしても、旧同盟にしても、ILOを駆け込み寺にしたんです。これは不当解雇だ、ILOさん、なんとかしてください。自分たちの訴えを聞き、裁きをして、日本政府を動かしてください、というわけです。が、そういうところじゃないんですね。欧米人だと、ILOは自分たちが労働問題について互いに協調する場であり、少年労働とか婦人労働とか各国共通の問題でルールづくりをする場なんです」
 「他の日本の諸団体も国連を駆け込み寺と考えているらしく、人権委員会に被害を訴える。もう陳情、陳情です。事務総長あての大量の反核署名を持ち込んだこともあった。国連さん、核廃絶をお願いします。なんとかしてください、というわけです」
 「私は言いたい。国連は陳情、駆け込み寺、訴えの場ではないし、世界連邦の総本山でもないと。自分たちがお互いに地球市民、世界市民として、国境を超えて共通の問題を討議し合って解決の糸口をさぐる。そういう場なんです」
○権威求める「島国根性」
◆日本人の間でどうしてそんな国連観が出来上がってしまったのでしょうか。
 「第1は、日本人の島国根性ですね。島国に住み、それに徳川300年の鎖国が加わって、閉鎖社会をつくってきた。そのうえ、日本人は定着性の強い農耕民族で、ひたすらこの島国の中で自然環境に順応して生きてきた。その後、明治維新で脱亜入欧を急いだ。島国根性と欧米崇拝です」
 「だから、国際社会の出来事、国際関係に対して受け身なんです。それに、既成の権威を金科玉条として受け入れるんですね。それから、日本人に根強い官尊民卑。これが、お上のやることに対する追従となる。批判精神をもたずにそのまま受け止めるんですね」
 「第2は、国連成立の歴史的過程が影響していると思いますね。国連は旧連合国が日・独・伊を制裁するために、そして二度とこういう横紙破りの国が出てこないようにするためにつくった組織なんです。このため、日本は戦後11年間、国際社会への復帰を許されなかった。そこで、国連に加盟するのが日本の悲願だったわけですが、1956年、ようやく加盟が認められた。『すみませんでした。これからは世界平和のために尽くします』とざんげして、入れてもらったわけです。戦後復興でも国連機関から援助を受けた」
 「だから、どうしても、歴史的に形作られてきた日本人の民族性とあいまって、国連はさんぜんと輝くかなたの星、正義の味方なんです。ですから、国連に対してもう頭を垂れ、あがめ奉り、国連の場で寄与、貢献することが正しいんだ、という発想が固定観念になってしまったんですね」
○巧言令色は大切な技術
◆これから先、どうしたらいいでしょう?
 「日本は今ごろになって国際化とか国際貢献とか言っているけれど、国際貢献って何ですか。貢献に国内も国際もありません。欧米語には国際貢献という言葉はないんです。国として、国民としての貢献とは国境を超えて行うものと決まっているから。問題があれば、お金もボランティアも出して助ける。日本の場合は内と外を分け、外のことには何か大決断をしてから、ということになる。おかしいですよ、これは」
 「カンボジアに自衛隊を送ることだけが国際貢献じゃあないんです。まさに本末転倒だと思う。PKOに関して言えば、私自身は国連平和維持軍(PKF)に自衛隊を送るべきだと思うが、急いではいけない。国民のコンセンサスを得ることが必要で、時間をかけて議論すればいいんです。スイスは国連加盟をめぐって何回も国民投票を繰り返し、いまだ非加盟です」
 「それよりも、国連とその諸機関、すなわち国連システムが当面している課題は平和、軍縮、開発、人権、環境の5つなんです。これらの課題に対していかに寄与、貢献するかが今、日本に問われているんです。なのに、日本人は日本の特殊権益にばかりしがみついているという印象を与えている。国際会議でも、日本のことしか言わない。5つの課題について積極的に解決策を示し、世界各国をまとめてそれを受け入れさせ、そのために金をつけ、人も出す。それが、日本に求められている国際貢献なんですね」
 「日本では、不言実行が美徳。しかし、国際機関では通用しません、これは。国際社会はドライです。だから、言論戦で相手を説得しなくてはいけない。それには、シラノ・ド・ベルジュラックふうに巧言令色、美辞麗句でなくては駄目なんです。これが相手を動かすんです」
 「情報の発信も大切。そのためにも、国連にもっと人材を送りこまなくてはいけない。今、日本人は国連本体で6000人のうち90人、諸機関を含む国連システム全体では5万人のうち500人。ざっと1%。国連分担金の12.45%に比べて、いかにも少ないですね」
◇吉田康彦(よしだ やすひこ)
1936年、東京生まれ。
東京大学文学部卒業。
NHK記者を経て、国連本部主任広報官、国際原子力機関広報部長、埼玉大学教授を歴任。
現在、大阪経済法科大学教授。
 
 
 
 
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