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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/08/01 読売新聞朝刊
[メディア時評]日本の「常任理」入り 国連の改革が前提
中江要介(寄稿)
なかえ ようすけ(三菱重工業顧問)
 
 国際連合(国連)の平和維持活動(PKO)への参加は、日本が国連安全保障理事会(安保理)の常任理事国(現在は米・英・仏・中・ロの五か国)の仲間に入れてもらうための布石であり、条件でさえある――という見方がある。が、これは間違っている。
 そもそもPKOは国連の活動であり、安保理は国連の主要機関であって、いずれも国連に根がある。従って、いまの国連をどう見るかについて十分な検討、評価を行うことなしに、ただ、PKO参加とか常任理事国入りだけを論ずるとすれば、それは浅はかと言うほかはない。
 いわんや、この考え方の前提に「国連中心主義」があるとすれば、それは論外である。そのような「主義」は、世界中でおそらく日本だけが勝手に掲げているもので、国連創設時から冷戦終結時まで、ついにその本来の力量を発揮できなかった国連を、冷戦が終わったからと言って、すぐにそのまま、外交政策の柱に据えてよいものかどうかについては、よほど慎重でなければならない(このことは、二月十四日付の本欄でも指摘した)。
 現に、湾岸戦争でも、ボスニア・ヘルツェゴビナでも、ソマリアでも、アフガンでも、レバノンでも、国連がいかに苦悩しているかを如実に示す事実には事欠かない。
 もし国連を、今後とも世界秩序維持の中心に置いてゆくというのであれば、いま求められているのは、国連追随ではなくてその機能の充実・強化である。
 七月八日に東京サミットで採択された政治宣言では「(国連は)国際の平和及び安全を維持するために死活的な重要性を有している」といい、「(その)国連の効率性を高めるために現在国連において行われている努力・・・を支持する」といってはいるが(同宣言第2項)、果たしていまの国連が国際の平和と安全を維持する上で死活的な重要性を有していると認めていいのかどうか、また、その効率性を高めるために国連は現在どういう努力をしているのか、というような具体的な疑問や事実関係に目を向け、国連が本当に役立ちうるのかどうかを十分見極める必要がある。
 こういう背景や問題点を抜きにして、PKO参加や常任理事国入りだけを論ずるものだから、その面白そうな側面だけを追いかけて、PKOに参加するのは常任理事国入りのためだ、などと言う人が出て来る。
 冷戦ゆえに「国連軍」が創設できず、窮余の策として苦しまぎれに考え出された多国籍軍や、PKOやPKF(平和維持軍)、更には平和執行部隊などは、新しい国際情勢の下で国連の権威と信頼性がとり戻されるのでなければ、到底有効適切な実力行使とはなり得ない性格のものである。
 他方、安保理の常任理事国になるべしという論者は、日本の分担金は全体の一二・四五%にも上っている(現在常任理事国である英・仏・中三国を合わせても一一・七九%)、日本やドイツの参加なくしては安保理の活動は不十分、伝家の宝刀ともいうべき「拒否権」を持つべきだ、常任理事国入りすると日本語が公用語になる、非常任理事国になるための選挙運動をしなくてすむ、集まってくる情報量と国際的影響力は抜群となる・・・などと言う。中には一見もっともと思われる点もある。が、その前提として問われるべきは、今の安保理が果たして地球的規模で有効に機能しているか、ゆがめられていないか、であって、もしゆがめられているのならそれを改革・是正することが先決であろう。
 安保理のあり方、特に常任理事国制度や拒否権制度には問題がある。特に開発途上国の間に不満や批判が多い。それを無視して、ただ日本が常任理事国入りしさえすれば安保理の機能や正統性が強化されるなどというのは短絡した意見である。ましてや既得権の上に眠って動こうともしない英・仏・中・ロのような現常任理事国は日本の常任理事国入りに慎重な姿勢をとっているし、米国とても、日・独両国を入れて自らの財政的負担を軽減しようという思惑からこれを支持している程度、というのが現状である。
 かりに日本が常任理事国入りをしたとしても、PKOへの中途半端な参加が示しているように、日本外交にしっかりした理念や哲学がないうちは、国連活動にどれほど貢献できるか、当面は、ただより多くの分担金を支払わされるだけというのが関の山ではないか、胸に手を当ててよく考えて見る必要がある。
 このように見てくると、PKO参加も日本の常任理事国入りも、共に、国連のあり方についての厳しい事実認識とその改革強化への努力を伴わなければ、所詮(しょせん)皮相な思いつきの域を出ず、いわんや、日本のPKO参加は常任理事国入りの布石であり、条件でさえあるというような見方は、実にとるに足らぬものであることがわかる。こういう側面に、メディアはもっと真剣に取り組んでもらいたい。(元駐中国大使)
◇中江要介(なかえ ようすけ)
1922年生まれ。
京都大学法学部卒業。
外務省に入省、アジア局長、駐エジプト大使、駐中国大使を歴任。
 
 
 
 
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