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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2004/07/06 朝日新聞朝刊
国連、イラク後の再生策は? 改革諮問委の緒方貞子委員に聞く
 
 イラク問題への対応をめぐり存在意義が問われた国連が、再生に向けた取り組みを進めている。アナン事務総長の提唱で昨年11月に発足した国連改革に関する諮問委員会(アナン委員会)は、テロなど「新しい脅威への取り組み」をテーマに議論を重ねている。国連はどこへ向かおうとしているのか、日本が果たすべき役割は――。6、7の両日、京都でアナン委員会の会議が開かれるのを機に、同委員を務める緒方貞子氏に聞いた。
(水野孝昭、駒木明義)
 
 ――主権移譲後のイラクで、国連は期待される役割を果たせるでしょうか。
 「国連は本来、国家間紛争への対応を想定していた組織です。私が難民高等弁務官をしていた頃(91〜00年)から、国家間ではなく国内紛争への対応が主になった。それでも、誰が当事者かは目に見えていた。しかし、現在のテロは相手の姿が見えない。イラクでも事態を収拾するために交渉しようにも、誰と交渉していいかもわからない、という難しさがある」
 「イラクでの米英軍の軍事行動は、いったんは成功したかに見えたが、占領になって力で押さえ込むには兵力が足りなかった。米国は国際的に正統性のある政権をつくろうと、国連に受け皿づくりを任せたわけです。ブラヒミ国連事務総長特別顧問が努力して、いちおう暫定政府ができた。宗教的にも部族的にも統制がない中で、よくまとめ上げたと思う。でも、イラクでは、国連そのものが反米勢力の攻撃対象になってしまった。少なくとも短期的には、国連が復興の主体を担うようには見えません」
 
 ――これまでの復興支援と何が違うのでしょうか。
 「戦争のあり方が、復興の進め方に直結するのです。カンボジア和平では、当事者がパリ和平協定でしっかりと紛争終結を確認した。アフガニスタンでも、国連はイラクと似た役割だったが、『北部同盟』を母体に、政治の主体をつくった。国連、多国籍軍などがそれぞれの役割を果たして、完全とは言えないが、テロリストの浸透を防ぐ防波堤になった。日本がアフガニスタン復興会議を主催できたのも、こうした正統性と国連の集団的行動があったからです」
 「イラク攻撃の場合、米国が軍事力に訴えなければならない必然性が私には納得できなかった。開戦時の(大量破壊兵器の存在という)正当性は今も証明できていないし、イラクがアルカイダとつながりがあったという証明もない。ただ、安保理の有力メンバーの意見が対立したら、何も出てこない。それはイラク問題が起きる前からの、国連の現実なのです」
○集団的行動の確保重要
 ――そうした国連を改革するためスタートしたアナン委員会は、どんな議論を進めているのでしょうか。
 「国連にとっては、加盟国の集団的行動を確保することが何より大事です。情報とカネと人が動いている世界で、テロリストの動きを完全に封じ込めることはできない。せっぱつまったテロの脅威に対し大国が軍事行動の必要があると判断した時、どういう手順を踏んで、どのように正統性を認めるのか。その基準づくりが必要なのです」
 「たとえば国連による査察の信頼性をもっと高めていくとか、一時的にでも小康状態を保つためPKO(平和維持活動)を早期に展開していくとか、いろいろなメカニズムや手段を考えていかなくてはならない」
 
 ――国連の再生に日本はどんな役割を果たせるでしょうか。
 「この3週間、アフリカを回ってきて、日本のこれまでの援助が人づくりや社会づくりに役立ってきていると実感しました。アフガニスタンをみても、国際社会から見捨てられていたことがテロの温床につながった。国連加盟国の大半を占める途上国からは、日本への期待と信頼は高い。援助大国としての実績も蓄積もあるのに、日本国内ではそれが十分に評価、認識されていない。これだけ相互依存が進んでいるのに、非常に狭い国益論議が横行しています」
 「日本は参加を決めるまでは遅かったが、PKOでもゴラン高原の停戦監視など、この10年余りの実績がある。軍事部門の活動といっても、そこで求められているのは戦闘能力ではない。軍事力を行使しなくても、紛争・対立を抑止するというのが国連の本来の役割なのです」
 
 ――日本政府は安保理常任理事国入りを目指していますが。
 「安保理常任理事国でなくても、日本は国連への大口の資金拠出国でもあり、ある程度は自国の立場を反映できる。逆に、せっかく常任理事国になっても、国連システムが改革・強化されていないと、役割が十分に果たせないかもしれない。まず日本自身が、国連の可能性をどのようにとらえ、平和と安全保障についてどのような国連の見取り図をつくっていくかを示さなくてはならないでしょう」
○日本は安保理改革提唱 平和の見取り図描け
 「援助にあたる文民がテロリストに狙われやすい目標になっている」。イラクへの国連の関与の見通しを語るとき、緒方氏の口調に苦悩がにじむ。昨年8月にバグダッドの国連現地本部が爆弾テロを受け、デメロ代表ら多数のスタッフが犠牲になった。主権移譲後も「姿の見えないテロリスト」の攻撃対象になっている現状は変わらない。イラク攻撃で存在意義を問われた国連は、復興支援でも試練が続く。
 今後、テロや大量破壊兵器などの「新たな脅威」に国連がどう対応していくのか。こうした問題意識から、国連改革をテーマにアナン国連事務総長が昨年、発足させたのがアナン委員会だ。緒方氏はじめ各国の有識者が会合を重ねており、年内に報告書を提出。それを受けて、アナン事務総長が来年の国連総会に改革を勧告する。
 一方、日本政府は、アナン委員会が進める国連改革に向けた取り組みを、日本の安保理常任理事国入り実現の重要な契機になるとみている。外務省が主催して京都で開く同委員会の委員らによる会合には、川口外相も出席する。外相の諮問機関「国連改革に関する有識者懇談会」(座長・横田洋三中央大教授)が先にまとめた報告書を説明し、国連改革についての日本案に理解を求める予定だ。
 懇談会の報告書は、日本からみた国連の現状の問題点を指摘。とくに同時多発テロ後の安保理が、人道・開発分野を視野に入れた活動を行っていることを強調し、日本が「平和の定着」や開発援助の分野での蓄積を国際社会に訴えていくべきだとしている。
 安保理改革については、あえて日本の名前を挙げずに、「平和と安定に対してグローバルな責任を担う意思と能力を有する限定された国」を常任理事国に加えることを提言している。だが、緒方氏が指摘するように、そこで問われるのはまず、国連の可能性を吟味し、平和の見取り図を描く作業である。
◆国連改革に関する有識者懇談会 最終報告書の要旨
<基本認識>
 国連を重視し、活用していく視点から外交に取り組む。国連を改革して、その中で日本がより積極的な役割を果たしていくことは、アジア太平洋地域の国連の実効性を高め、日米安保条約の枠組みの強化につながる。
<提言>
 (1)安保理改革 非核保有国を常任理事国に加え、国連の正統性を高める。新常任理事国は国連総会の選挙で選ぶことも一案。拒否権について新旧常任理事国で異なる扱いをすることは望ましくない。
 首相または外相を長とする国連強化対策本部と担当大使を置き、日本外交の最重要課題として安保理改革に取り組む。
 (2)旧敵国条項 すでに死文化していることは世界の常識。政府は、削除を積極的に働きかける。
 (3)国連分担金 財政貢献に見合った発言力を十分発揮する。日本の分担金を一方的に大きく引き下げようとして他国への負担を必要以上に増すことは避ける。
 (4)邦人職員増強 国内の教育の充実を図る。政府は日本人職員のキャリアプランを考えた取り組みを図る。
 (5)国連の強化策 総会の再活性化、経済社会理事会の役割の見直しを図る。NGOや民間企業との連携・協力を強化する。
◇緒方貞子(おがた さだこ)
1927年生まれ。
聖心女子大学卒業。米カリフォルニア大学大学院修了。
上智大学教授、国連難民高等弁務官、アフガニスタン支援日本政府特別代表等を歴任。
現在、国際協力機構(JICA)理事長。
 
 
 
 
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