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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/12/21 朝日新聞朝刊
国連の再生と日本の国際援助 JICA理事長・緒方貞子氏に聞く
 
 米国の一極支配や深刻化するテロの問題を前に、国連は自らをどう再生すべきか。また、日本外交の柱である開発援助政策は何を目指すべきか。国際社会と日本の抱える課題について、10月に独立行政法人に衣替えした国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長に聞いた。緒方氏は、アナン国連事務総長が任命した国連改革に関する諮問委員会のメンバーでもある。
(三浦俊章)
 ――アナン国連事務総長が国連改革を訴え、有識者による諮問委員会を発足させました。
 「9月の事務総長演説は国連の置かれる難しい立場を本音で語っているものです。今月始まった諮問委員会では、国際社会における脅威をどう見るのか、それに対するどういうアプローチがあるのかを考えます。隔月で会合を開き、来年8月に報告をまとめます」
 
 ――緒方さんは、どのような脅威認識と問題意識を持っていますか。
 「国際社会の脅威そのものが多様になった。国家間対立は比較的減ったが、分離運動や自決運動や民族対立がなくなったとは言えない。いろんな不満分子が国境を越えて連携できる状況が生まれています。何がテロを生み出すのかというテロの根源論は必要だが、それだけでは問題は解決しない。人や武器の動きの管理が必要。ただし、それを相当やっても、テロは絶対に撲滅できるというものではないのです」
 「国連の集団的行動をどう守っていくかが課題です。国連は世界を代表する一番普遍的な機関。国連がメンバー国の意向をくみ取りながら、どうやって集団的行動をとっていけるか。様々な脅威にさらされているし、一極と言われている大国の動きもある。イラク問題は、国連の集団的行動に対する試練でしたが、うまく機能しませんでした」
 
 ――米国の「単独行動主義」をどう見ますか。
 「ブッシュ政権の性格もあるとは思いますが、9月11日(同時多発テロ)が大きい。9月11日を経験して、『頼れるものは自分の力だけだ』という気持ち、恐怖感が生まれた。米国以外の国は、自分の国土を攻撃された経験を持っています。そういう経験がなかったという点で、米国は今まで幸運だったということかもしれません」
 「しかし、ああいう強大な国は、国連に治められるということを受け入れにくいのでしょう。米国が国連にどんなに協調的になっても、一定の線はある。国連の決議だからといって、すべて受け入れるわけではない。大事なことは自分で決める。米国の国際機関の見方の根本にはそういう考え方があると思います」
 
 ――国連改革は具体的にどうあるべきですか。
 「安全保障理事会が何カ国でなければいけないかといった数字の問題にはまりこみ、それで改革論を終わらせてはならない。安保理は効果的だったときも効果的でなかったときもあります。拒否権にしても、冷戦終了後はやたらに行使されてはいない。どの国がどういう状況のもとで拒否権を行使したかをきちんと検証する必要があります」
 「日本には理想的な国連像と、逆に『国連はだめだ』という考え方の両極端があり、現実的に国連を理解する層が薄いと思います。バランスの取れた考え方が乏しい」
●JICA 現場に力移す
 ――日本の国際社会への貢献と言えば、やはり政府の途上国援助(ODA)です。JICA改革案は固まりましたか。
 「途上国の現場に主力を移したい。私のような現場を中心に働いてきた者からみると、現場に近いところにいるほど何が必要かわかります。途上国の需要や希望は多様化している。アジアとアフリカと中南米では違う。地域ごとの問題をもっときっちり把握して効果的な役割を果たすためには、現場に力を移すことが必要です。東京を向いて仕事するのではなく、相手の国の人たちとよく交わりながら需要を掘り出してほしい。それに、提案が具体化していく過程がもう少し速くなくては。速度の問題です」
 
 ――今後、力を入れたい分野は。
 「中南米とアジアに力を入れてきて、両地域とも伸びてきた。これからはアフリカが、JICAにとっての挑戦だという意識を持っています。予算もつけ、プログラムや人の配置にも力を入れたい。アフリカは戦略的価値が低いと見られたために、欧米も本格的にやってきませんでした。日本への期待は高い」
 
 ――国内には、ODAは無駄遣いだと厳しい批判があります。
 「厳しいのはいいんです。効果と効率は大事。ただし、ODAを切っていくだけでは、日本はどこに行くんだろうかという深刻な疑問を感じる。他の国はむしろODAを増やしています。効果と効率性を示し、『日本はODAを切っていいのですか』と問いかけられるような実績を上げたい」「自国の国益だけ追求するのか、それとも他国とともにある国益を追求するのかという議論は、昔からある。グローバル化の中で、単独で国益を追求できるような状況にはない。それなのに日本の国益を狭く考える議論があるのは不思議だと思っています」
○アナン事務総長の総会演説
 国連は創設以来、封じ込めと抑止によって平和への脅威に対処してきた。国連憲章は攻撃を受けた国は自衛権を持つと規定している。自衛を超え、国際社会の平和と安全への脅威に対して軍事力を行使する場合、国連だけが唯一正当性を与えることができると理解されてきた。
 だが、大量破壊兵器による攻撃が、いつ何時でも、警告なしに、あるいは秘密組織によって起こりうるため、こうした理解はもはや通用しないと考える国が現れた。こうした国は、先制攻撃の権利と義務を有し、自国外や開発中の兵器システムに対しても行使できると考える。
 この論理は、国連憲章の原則に対する根本的な挑戦だ。これが先例となり、単独行動主義と法を逸脱した武力行使の拡散を招くことを懸念する。
 しかし、単独行動主義を非難するだけでは十分でない。国家を危険にさらす懸念に対し、集団的な行動を通じて対処できることを示さなければならない。
 我々はいま重要な岐路にいる。かつての合意に従い続けることができるのか、あるいは根本的な改革が必要なのか、意を決しなければならない。
 (改革で)最も重要なのは安保理だ。(テロなどの)脅威に対する武力行使に関しての基準作りや、大量虐殺など非人道的な犯罪に対する対応について協議するほか、10年越しの課題である安保理の拡大について早急に対応すべきである。
 国連総会や事務局も強化を図る必要がある。国連改革に向けて諮問委員会を設置し、1年以内に報告を求め、来年の総会で改革案を勧告する。
 (03年9月23日)
◇国連改革諮問委員会のメンバー
 《座長》アナン元タイ首相
 《委員》バダンテール元仏司法相
 ソアレス元米州機構事務総長(ブラジル)
 ブルントラント元ノルウェー首相
 チネリー・ヘッセ・ガーナ国家開発計画委員会副議長
 エバンス元豪外相
 ハネー元英国連常駐代表
 イグレシアス米州開発銀行総裁(ウルグアイ)
 ムーサ・アラブ連盟事務局長(エジプト)
 ナンビアール元旧ユーゴ国連保護軍司令官(インド)
 緒方貞子元国連難民高等弁務官(日本)
 プリマコフ元ロシア首相
 銭其シン・元中国副首相兼外相
 サディク元国連人口基金事務局長(パキスタン)
 サリム元アフリカ統一機構事務局長(タンザニア)
 スコウクロフト元米国家安全保障問題担当大統領補佐官
◇緒方貞子(おがた さだこ)
1927年生まれ。
聖心女子大学卒業。米カリフォルニア大学大学院修了。
上智大学教授、国連難民高等弁務官、アフガニスタン支援日本政府特別代表等を歴任。
現在、国際協力機構(JICA)理事長。
 
 
 
 
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