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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/09/23 産経新聞朝刊
【正論】堂々と常任理事国になれ
国際コンサルタント・岡本行夫
◆7回非常任理事国に当選
 安保理常任理事国入り問題についての議論が続いている。
 私は、日本が常任理事国入りを目指すのは自然なことだと思うが、しかし慎重論がすべて誤っているとは思わない。私自身は同意できないが、日本は国際の平和と安全に関する議論からは一切身を遠ざけて、国際社会からいかに二流市民視されようと経済協力と環境と人口問題といった分野だけに専念していればよい、という立場にはそれなりに首尾一貫性がある。だから、常任だろうが非常任だろうが安保理には一切入るな、国連中心主義など標榜するな、というのであれば、それは国としての一つの生きざまの提示だ。
 しかし、「常任理事国になれば軍事貢献を断れない」といった議論は、二重の意味で曖昧だ。まず日本は憲法上いかなる場合も武力行使への参加は拒否すべきだ。逆にそれ以外の強制措置には加盟国として協力すべきだ。日本が明確に一つの道を選んだのは、一九五六年の国連加盟の時なのだ。国連憲章は、平和的かつ非軍事の活動だけを約束したものではない。第七章は紛争を武力をもってしてでも解決する諸規定である。国連の義務を負うのが嫌なら、日本は国連に加盟したことを国を挙げて慶祝などせずに、スイスのように国連に加盟しない道を選ぶべきだった。日本はその上、これまで七回も安保理の非常任理事国に当選してきた。十四年間も非常任理事国を務めた国は他にはない。国内もこれを当然のことと受け止め、安保理選挙でバングラデシュに負けた時などは、政府は選挙活動の拙劣さをずい分責められた。
◆憲法は国連憲章より上位
 ところが常任理事国になって発言権が増えるというと、途端に反対論が起こった。
 常任理事国入り慎重論者は二つの単純な点を見逃している気がしてならない。
 第一は、いかなる加盟国も自らの意志に反して憲法に反する行為を強制されることなどない、という点だ。どの国にとっても憲法が国連憲章より上位の規範であることは当然のことだ。
 第二は、安保理の常任理事国も、非常任理事国も、いや、ヒラの加盟国も、国連の中で負っている義務には全く変わりがないという点だ。常任理事国は国連軍の軍事参謀委員会のメンバーになるので憲法との関係で問題だとの議論がある。この国連軍はいわゆる「七章国連軍」の話であって、国連創設以来作られたこともないシロモノであるが、仮に作られても日本は参謀委員会で堂々と自分の平和憲法の理念を説明して、出来ないことは出来ないと言えばよいだけだ。自国の憲法に抵触することでも「ノー」と言える自信がないのなら、もちろん常任理事国入りは、やめた方がいい。だが、私達はそこまで主体性のない国に住んでいるのだろうか。
 日本は常任理事国に自ら求めてなるのではなく、他国にお願いされてなるべきだという議論もある。そうすれば、日本の責任も軽くなるという。選挙に立候補し選挙民に投票を積極的に依頼してこそ初めて当選できる国会議員の議論としては些か不思議な気もするが、「私は器ではありませんが皆さんがそうおっしゃるなら・・・」というのはPTAの役員選挙レベルの話だ。いやしくも自らの理念と世界観を訴えていくべき主権国家の話ではあるまい。
 慎重派を代表するある議員は「湾岸戦争の時に日本が常任理事国だったとすれば、(中略)相手国からテロ活動を受ける可能性があった」と述べている。テロの可能性があるから日本は目立つ地位につくべきではないと言う。小学校の先生になれば、「みなさん、つらいことやあぶないことは、ぜんぶお友だちにやらせましょうね」と教えるのだろうか。
◆「アジア型」に関し発言を
 そうした慎重論の中で、最もがっかりするのは、「日本は世界に対する理念がない。常任理事国として何をするかも分からないのにその地位だけを求めるべきでない」との主張を政治家がしていることだ。政治家こそ、その理念を持っている筈ではなかったのか。
 私ならこう答える。今の国連が欧米、就中ヨーロッパの議論で動いていることは否定できない。特に最大の加盟国を擁する地域でありながら、アジアの利益は充分確保されていない(中国がアジア代表だと思っている国はほとんどない)。日本は、最も緊密なパートナーであるアメリカとでさえ、アジアに関する考えにおいてズレがある。インドシナで、シンガポールで、朝鮮半島で、アジアにはアジア固有の利害がある。ミャンマーを孤立させているのは欧米であってアジア諸国ではない。中国の人権政策に均衡を失して厳しく対応してきたのも欧米だ。アジア型の価値と制度について日本が常任理事国として発言すれば世界の情勢は変わるかもしれないのだ。安保理で言うべきことは、いくらでもあるではないか。
(おかもと・ゆきお)
◇岡本行夫(おかもと ゆきお)
1945年生まれ。
一橋大学経済学部卒業。
外務省に入省後、北米局安全保障課長、北米第一課長を歴任し、91年、外務省退官。現在、岡本アソシエイツ代表。首相補佐官(外交担当)。
 
 
 
 
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