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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/09/30 産経新聞朝刊
【国連再考】(27)第3部(7)自己存在の誇示 天文学的分量の印刷物
 
 新鮮なタマゴ、腐りかけたタマゴ、割れたタマゴ・・・多様な種類のタマゴを豪華なカラー写真で印刷したカタログふう刊行物はさすがにベテランの国連官僚たちをもあぜんとさせた。
 「タマゴ基準」と題された英文のこの報告書は一九九二年に国連の経済社会理事会のジュネーブに本拠をおく欧州経済委員会から発行され、国連のあり方に批判の目を向ける人たちの間では浪費のシンボルとして語りつがれてきた。
 鶏卵のさまざまな種類と状態の「基準」を養鶏農家だけでなく小売店や消費者にまで知らせるというこの報告書はツヤのある用紙に美しい多色刷のタマゴの写真を多数、載せた二十四ページの英文パンフレットだった。報告書というより案内書という感じのパンフレットは三千部も印刷され、国連関連の各国政府代表たちにまず配られたという。
 タマゴについて一般に知らせることは無意味ではないだろうが、国連機関が宣伝する「タマゴ基準」になんの法的根拠も拘束性もない以上、やはり浪費だったといえよう。
 当時の米国のトーマス・ピッカリング国連大使はショックを受けて、ジュネーブの国連当局に抗議の問いあわせを出した。
 「国連が外交官社会にきわめて限定的な価値しかないこの種の出版物を配布することで資源を浪費するとは、ぞっとさせられる。米国は国連に対しその種の特殊刊行物の出版を削減することを求めてきた。このタマゴの報告書の作成や出版にはどれほどの額の国連の経費をあてたのか、知らせてほしい」
 米国がこのような抗議を頻繁にするのは各国のなかでも最大額の国連分担金を払っているからでもあろう。第二期クリントン政権で国連大使を務めたリチャード・ホルブルック氏もこの九月にワシントンで開かれた国連に関する討論会で「国連本部の事務局は平和維持活動局には職員が四百二十五人しかいないのに広報局には八百人もいて、だれも読まない発表文や報告書を六カ国語でせっせと書いている」と批判していた。
 先任のピッカリング氏も国連のこの傾向は十分に知っていたとはいえ、国連がタマゴについて説明するためにだけ豪華なパンフレットを出すことにはびっくりしたのだろう。
 国連が天文学的な分量の印刷物を出し、しかもその内容が空疎な場合が多いことは広く指摘されている。国連研究で知られるイギリス人ジャーナリストのローズマリー・ライター氏が述べる。
 「国連各機関は自己の存続のために活動の報告書や説明書の類を最大限、生産する。活動自体よりも活動についての報告書を書くことの方がより重要な優先作業にさえなる。その結果はもっともらしく難解で冗長な文章の書類が洪水のようにあふれることとなる。だが各国の一般国民にとってその種の文書はなんの意味も持たない」
 国連機関にとって自己の存在を示すことが報告書類の発表となっているようだが、その作業が機関本来の活動よりも重要な目的になってしまうのは、おかしい、というのである。
 ピッカリング氏が国連大使だった当時、国連本部の二年分予算は総額が二十四億ドルで、そのうち一億ドルが広報、四億三千万ドルが会議業務だった。この二種類の経費が印刷物の作成や配布にあてられる。九一年までの二年間に国連の本部とジュネーブ、ウィーンの各機関が出した文書の合計が一億六千五百万件、二十一億ページ、印刷代だけで二億八千万ドルとなったともいう。
 国連の文書で最も作成価格が高くなるのは毎年の「国連年鑑」で、一冊が一千ページを超える。作成のペースが極端に遅く、いつも新刊となる年鑑は発行の時点より四年ほど前の年の記述になっている。他の年鑑はさらに時間のズレが広がり、「国連人権委員会年鑑」は九二年刊行の六百五十七ページの版がなんと、一九八三−八四年分の記述だった。
 ピッカリング大使からの「タマゴ基準」文書のコストに関する問いあわせには返事がなかった。ジュネーブの国連当局はそれどころか間もなく「タマゴ基準」の続編パンフレットを刊行した。続編には冷蔵タマゴや保存用タマゴの美しい写真が載り、本編と同様の基準の説明が記されていた。国連本部からちょうど「発表文書の量を抑制すること」を求める指示が流れた直後だったという。
(ワシントン 古森義久)
 
 
 
 
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