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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/08/05 産経新聞朝刊
【国連再考】(8)第1部(8)石油交換プログラム 管理能力の欠落みせた腐敗
 
 湾岸戦争からイラク戦争へのうねりは期せずして国連の管理能力の欠落をもみせつけることとなった。国連が七年も管理してきたイラクの「石油食糧交換プログラム」が不正に運営され、巨額の資金が賄賂(わいろ)やキックバックとして消えたことを知りながら、国連自体はなにもしなかったことが明るみに出たからだった。
 一九九六年に始まったこのプログラムはイラクの石油を輸出し、そこから得た資金でイラク国民への食糧や医薬品など人道的な産品を輸入するという趣旨だった。九一年にクウェート占領の懲罰を受けたイラクは、国連決議が求めた大量破壊兵器の破棄などを履行せず、国連から経済制裁を受けた。制裁の最大の柱は世界第二の埋蔵量を誇る石油の輸出禁止だった。
 石油からの外貨収入がなくなり、イラクの経済の悪化に拍車がかかった。国民の飢餓や病気がひどくなった。国連はその対応策としてフセイン政権に石油を売った代金を食糧や医薬品に用途を限って使わせるという「石油食糧交換プログラム」を始めたのだった。米国が主唱した措置だった。
 だがこのプログラムは奇々怪々となり、本来の目的を大きく外れた。フセイン政権が崩壊までの七年間に石油を外国に売って得た代金の総額約六百四十億ドルのうち、二百六十億ドルはクウェート侵攻での被害者への補償などに回された。残りの三百八十億ドルが食糧などの人道輸入にあてられたはずだが、実際にイラクへの輸入が確認された分が二百四十五億ドルだった。差額の百四十億ドル近くの資金はどこかへ消えてしまったのだ。
 このプログラムは全体が国連安保理の下に特設されたイラク・プログラム局に管理された。同局は国連事務次長のベノン・セバン氏を局長とし、イラク国内でもイラク人三千人、外国人一千人をそれぞれ職員としていた。イラクの石油を国内のどの企業から調達し、外国のどの企業に売るか、はすべて同局が決めるとされていたが、実際にはフセイン政権の意向が大きかった。食糧や医薬品をどの国のどの企業から買うのかも、同様に決められた。
 国連のコフィ・アナン事務総長は昨年六月、「石油食糧交換プログラム」の「人道輸入」の範囲を広げ、文化やスポーツ関連の購入を認める措置をとった。その結果、モーターボート、高級乗用車、高級家具、テレビ局機材などが輸入されるようになった。イラク側は二千万ドルの五輪スタジアムの建設まで求めた。だがこれらをすべてまとめてもなお百四十億ドル近くが使途不明だった。
 いまではこの行方不明の資金のほとんどがフセイン政権による横領や賄賂、そしてキックバック、さらには違法の課徴金となっていたことが判明した。フセイン政権崩壊後、次から次へと当事者たちが証言するにいたったのだ。
 デービッド・ハウファウザー米国財務省法律顧問は五月の議会公聴会で激しく非難した。
 「この国連プログラムは露骨な悪質かつ厚顔な方法での汚職腐敗の典型例を示した。全世界が恥辱を覚えるほどのひどさだった」
 米国の企業が国内法の規制でイラクとの取引はまったくできなかったことも米側の怒りをあおっていた。
 さらに重大なのはこの国連プログラムがロシア、フランス、中国という特定の国の企業とほぼ独占的に深い関係を結んでいた点だった。まずイラク石油を売った資金はフランスのBNPパリバ銀行に国連が設けた預託口座に集中して預けられ、処理を任された。
 同プログラムの下でイラクと取引をした国の筆頭はロシアで総額八十億ドル近く、次はフランスで約四十億ドル、中国もヨルダン、アラブ首長国連邦と並んで三十億ドルという金額が明らかとなった。
 イラクの石油とこうした結びつきの強いフランス、ロシア、中国という諸国がいずれもフセイン政権への軍事行動に最後まで難色を示したことは示唆に富む。「米国がイラク攻撃を望むのは石油が原因」という説へのアンチテーゼの構図が浮かぶからだ。
 「石油食糧交換プログラム」の実務責任者でキプロス国籍の国連官僚のセバン氏はこの五月、ABCテレビに賄賂やキックバックがなぜ放置されたかを問われて、答えた。
 「だれもが不正を知っていた。だがなにかの措置を実際にとれる立場にいる人間はなにもしなかった。私には行動をとる力はなかった」
(ワシントン 古森義久)
 
 
 
 
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