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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/07/24 産経新聞朝刊
【オピニオンアップ】安保理問題を論議せよ
論説委員・石川荘太郎
◆世界各国が大きな関心
 先ごろモスクワで開かれた日露ジャーナリスト会議に参加する機会を得た。旧ソ連時代には日ソ・ジャーナリスト会議として毎年開かれていたが、ソ連邦の混乱で一時中断。今年はソ連崩壊後初めて日露ジャーナリスト会議として開かれたものだ。
 会議には日本側から五つの全国紙をはじめNHK、民間テレビ局の記者、大学教授などが参加、ロシアからはアブドゥーリン・インターファクス副社長、オガネシャン・国際モスクワ放送議長、シェピチコ・オスタンキノ・テレビ副議長らロシアを代表するメディアから十四人が加わった。
 同業者同士の会議だったため議論は弾み、ロシアのあるベテラン女性記者から「最近、日本に初めて行ったが本当に小さな国。北方領土を返してあげてもいいと思った」という冗談まじりの発言まで飛び出した。
 この会議でロシアのジャーナリストが大きな関心を寄せたことの一つが、日本は国連安保理の常任理事国になる意思をもっているのかどうか、という問題だった。
 これに対する日本側の回答は「この問題では日本国民の間にまだコンセンサスはできていない。特に常任理事国になった場合、軍事的にどの程度コミットするかについては十分に議論もされていない。常任理事国の枠を拡大するとしたら、中南米やアフリカの代表はどうするのかという問題もある。国連憲章の改正はそう簡単ではないのではないか」というものだった。
 ロシアのジャーナリストがうなずきながら熱心に耳を傾けていたのが印象的だったが、この問題については東京に駐在している外国特派員数人からも聞かれたことがある。諸外国では日本が常任理事国になるかどうかが、大きな関心事になっているのだ。
◆国連総会の重要議題に
 それに反してわが国ではこの問題について十分な議論はほとんど行われず、国民の理解が進んでいるとはとても言えない。二十日の衆院での代表質問でも村山富市総理は「常任理事国入りによる権利と責任については十分議論をつくさないといけない。国際社会の支持と国民の理解を踏まえて取り組んでいくが、常任理事国になることに消極的になっているわけではない」と他人事のような答弁をしただけだった。
 今の時点で、この問題について広範な議論が必要なのは、第四十九回国連総会の開会が迫っているからだ。この総会では安保理の機構改革が重要な議題として取り上げられることになっている。
 安保理の機構改革が議論されたのは最近では九一年だが、中心議題になったのは昨年の第四十八回総会においてだった。一九四五年の国連創設当時、十一カ国(常任理事国五、非常任理事国六)で構成されていた安保理が、現在の十五カ国(非常任理事国が四増)になったのは六五年のこと。その後、七九、八〇年の総会でも議題となったが何の決定もなされずに今日に至っている。
 しかし、国連加盟国は創設当時の五十一カ国から百八十四カ国に増え、冷戦も終結した。それにもかかわらず第二次大戦の戦勝国で核保有国でもある米露英仏中だけが特権を享受している状況は、世界の現状にそぐわないことは言うまでもない。そうした現状認識から昨年の総会では安保理の機構改革が最重要課題となったのだ。
 その結果、(1)安保理改革のための作業部会の設置(2)第四十九回総会では「安保理議席の衡平配分および拡大」を議題に含める―などの決議が採択された。これによって九月二十日に開会される今年の総会では来年の国連創設五十周年に向けて、この問題が重要議題として取り上げられることが決まったのだ。
◆日本の立場を明確に
 わが国は昨年七月に国連に提出した意見書の中で安保理改革の具体案として、常任理事国、非常任理事国双方を増加しメンバーを二十カ国前後とする。また常任理事国はその及ぼす政治的、経済的その他の面で世界的なものであるかどうかを考慮するなどを提言。これを踏まえて、わが国としては安保理においてなし得る限りの責任を果たす用意がある、と間接的な表現ながら常任理事国になる意思のあることを表明した。
 今年一月、外務省の斎藤邦彦事務次官は講演で「日本は常任理事国になる資格があると思う。とはいえ、なりふりかまわず《なりたい、なりたい》とは損だから言わない。国際的な合意があれば日本は責任を果たすというのがわが国の立場だ」と語った。ところが最近では波多野敬雄前国連大使の熱意もあって、外務省はさらに積極的な姿勢に変わってきている。
 問題は外務省の熱意だけが独り歩きしている感があることだ。政界では与野党を問わず、慎重論が根強いことはよく知られている。その背景には常任理事国になった場合のわが国の義務、責任の不明確さがある。ガリ国連事務総長は常任理事国になってもそれが即軍事的貢献に結び付くものではない、と言う。一方では最近、米上院は常任理事国には軍事的協力が不可欠という趣旨の決議を行った。
 憲法との関係で集団自衛権についての解釈を変える必要はないのか、PKO協力法に付けられた五つの条件を見直す必要はないのか。こうしたことについて国会は外務委員会を中心として徹底的に議論をすべきだ。総理自らが「議論を深めなければならない」などといってすましていては国民の理解を得ることも難しかろう。
 斎藤次官は「国際的な合意があれば日本は責任を果たす」という。だが、満足な議論も行われていない現状ではどのような責任を果たすのか不明である。日本の立場が明確にならなければ、国際社会の支持を得ることもできまい。ドイツは軍隊の北大西洋条約機構(NATO)域外への派兵を合憲とする判断を示した。わが国もどのような形で、どの程度まで世界に貢献できるかを明らかにすべきだ。
 
 
 
 
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