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1997/09/15 読売新聞朝刊
[社説]国連改革は小手先で終わるな
 
 十六日開幕する第五十二回国連総会の最大の課題は、懸案の国連改革にきちんとした道筋をつけることである。
 改革のポイントは二つある。一つは、今の国連を苦しめている財政危機に終止符を打つ具体策を生み出せるかだ。これには、国連システム運営の改善と加盟国に対する分担金の見直しが中心となる。
 第二は、国連の“重役会”安保理の改組問題で結論を得ることである。日本は、ドイツとともに、新常任理事国の最有力候補に擬せられているが、最終決着に向けての加盟国間の調整が難航している。
 大事なのは、国連創設後半世紀余を経た国際社会の実態を踏まえて、国連における負担と地位との整合性を図るという観点であり、この点が放置されては加盟国の納得する改革とはならない。その意味で、二つの改革努力を、いわば両輪の関係で進めることが必要である。
 アナン国連事務総長が七月に発表した国連改革プログラムは、各国の支持を広げつつある。ただ、国連事務局の努力で実現できる改革には支持が寄せられているものの、加盟国の新たな負担につながる計画については留保が少なくない。
 国連職員の千人削減、国連行政コストの三分の一削減には賛成だが、国連の財政危機を緩和する決め手としてアナン事務総長が提案した十億ドルの回転信用基金設立には日米を含めて背を向けている。
 結局アナン案は、加盟国に都合のよい部分だけをつまみ食いされかねない恐れがあり、そうなると国連財政危機の抜本的解決には程遠い結果となる。
 国連が今の財政危機に陥ったのは、米国が分担金支払いを遅らせているからだ。延滞額は十億ドルを超える。私たちは、まず米国が国連に対する未納の義務的経費をすみやかに納めるべきだと考える。
 しかし、米国が自国に課せられている二五%の分担比率を過大とみなし、二〇%に下げるべきだと主張しているのは、横暴でも何でもない。
 いかに米国が超大国といえども、国連費用の四分の一を負担させるのは適正さを欠く。加盟国間で、来年からの分担率を決める協議が続いているが、分担率の上限を二〇%にとどめるべきだ。
 米国の負担軽減分をどうするか。安保理常任理事国グループで分担すべきだ。国連で特別の権利と責任を付与されている立場を自覚すれば、引き受けて当然だろう。
 安保理改組に関して、米国が、先進国から日独二か国、途上国グループから三か国を新常任理事国にする案を提示した。後者の三か国の選択については、途上国グループにまかせ、特定複数国による輪番制も認める考えだ。
 途上国の常任理事国入りに強い難色を示してきた米国が譲歩を示したもので、これで今総会での安保理改組協議に弾みがつくことが期待されている。
 常任理事国入りをめざしてきた日本にとっても、総力をあげた外交努力が求められる正念場の総会となる。
 
 
 
 
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