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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/12/23 読売新聞朝刊
[国連加盟40年](5)平和の基盤作りに活路(連載)
 
 俳優の二谷英明さんは、年間百日以上をカンボジアで過ごしている。現地の子供向けのボランティア活動として、これまでに学校十三校を新築、二校を修理した。カンボジア行きは足掛け六年続いているという。
 きっかけは、九一年一月に勃発(ぼっぱつ)した湾岸戦争。日本は、百三十億ドルを多国籍軍と湾岸諸国のために拠出したが、人的貢献がなかったせいで、感謝どころか「金だけ出して、顔の見えない日本人」とたたかれた。何か間違っている、と感じた昭和一けた世代が、難民帰還の手助けをスタートに、手探りで始めたボランティア活動だった。
◆現地の交流に満足感
 「二―三百万円で教室が五つある校舎一棟が建つ。カネを送るだけでもいいんですがね。それなら、湾岸戦争のときと同じ。人的貢献と言うとおこがましいが、若い人たちを連れていって、現地の人と交流しながら(現地の様子を)目で見て手伝う。満足感がありますよ」
 そんな二谷さんが現地で見た日本の国連平和維持活動(PKO)は、地元との触れ合いが少ないように感じたという。「ほとんどが自衛隊員。食堂には冷房が入っていた。向こうの人の貧しさを本当に体験して帰ったんだろうか」と。
 一方、ルワンダ難民の人道支援活動に参加した陸上自衛隊の日高政広二佐は、ザイール東部のゴマで、人々の貧しさに強烈な印象を受けた。
 「現地の人と難民の区別が出来なかったのには苦労した。人口二十四万のゴマに、百万近い難民がやってきて、ザイールの人々も、飲料水がなく、衛生的に劣悪な環境での生活を強いられている。みんなが空腹なのに、難民だけに衣食住を与えるという不均衡は、行ってみないとわからなかった」
 地球上には、今なお戦争の惨禍を被っている地域が存在し、飢餓や貧困の現実がある。PKOや、救援・復興支援のボランティア活動に参加する日本人の数が増えるにつれ、国際社会の現状への認識は少しずつ広がっている。
 五十一年前、二度にわたる世界大戦の反省を踏まえ、戦争の惨害から将来の世代を救い、社会的進歩と生活水準の向上を促進するために創設された国連は、十分役割を果たしているのだろうか。波多野敬雄前国連大使の見解は明快だ。
 「世界が、国連の現状に満足していないのは明らか。失望と言ってもいい。開発途上国は、経済発展への助力を期待しているが、そこはやってくれない。先進国には、とくにアジアの経済成長について、人権と自由と民主主義を犠牲にしているのではないか、国連は何もやっていないのではないかという不満がある」
 その中で日本の役割は――。PKO協力法を手がけ、総理府国際平和協力本部事務局長などを歴任し、日本の国連外交の立案にあたってきた柳井俊二外務審議官は、平和維持と合わせて、平和の基盤作りへの貢献に力点を置く。
 「PKOは国連活動への取り組みのほんの一部に過ぎない。PKOが展開した地域で人道援助を行えば、そこから復興、開発援助へとつながる。開発は大きな課題だ。環境問題も含め、平和の基礎にあるものへの貢献、その面でわが国がやれることはある」
◆開発戦略、多角的に
 一つの実例が、日本のイニシアチブで国連を中心に推進され始めた「新しい開発戦略」だ。
 開発途上国の経済発展に、政府開発援助(ODA)だけでなく、直接投資や経済・社会基盤の整備などを含めて包括的に取り組み、途上国自身の自助努力はもちろん、国連以外の国際機関とも協力しながら推進しようという内容。いわば、先進国と途上国がカネだけでなく、知恵を出し合い、汗を流し、交流しながら貧困などの不安定要因をなくそうというものだ。二谷さんのボランティア精神にも一脈通じるものがある。
 敗戦の焦土から立ち上がった日本の経験を、国連で生かす試みは、すでに始まっている。
(政治部 伊藤 俊行)
 
 
 
 
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