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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1988/08/30 読売新聞朝刊
[国連と日本外交](上)新しい流れ 頼られる経済大国(連載)
◆復権に歩調あわせ「人もチエも」◆
 アフガニスタン和平やイラン・イラク戦争の停戦などでの目覚ましい活躍によって“復権”したと言われる国連外交。一方で、「世界への貢献」を旗印に平和と繁栄への積極的な協力を目指すニッポンに対する各国の期待は、日増しに高まってきた。九月六、七の両日、読売新聞社と国連の共催による「国連シンポジウム」が、内外の有識者を集めて東京で開かれる。「国連と平和」連載企画の最終ラウンドとして、国連と日本外交のかかわりを考えてみた。
◆全面協力へ姿勢転換◆
 大きな転機を迎えている日本の外交にとって、それは「象徴的な出来事」(宇野宗佑外相)だった。
 八月十一日午後。ニューヨークの国連本部事務総長室。竹下首相のメッセージを携えてイラン、イラク両国を回ってきた栗山尚一・外務審議官は、デクエヤル事務総長にイ・イ戦争終結をめぐる直接交渉を前にした両国の感触をつぶさに報告していた。
 「両国とも和平実現に真剣だ。日本としては、あなたの努力を今後ともサポートしていきたい」
 予定時間をオーバーして約四十分に及んだ会談の最後に、事務総長は「日本政府には大変感謝している」と言って固い握手を求めた。実は栗山外務審議官は、三月にもアフガニスタン問題で現地を訪れたあと事務総長と、戦後復興と国連監視団への要員派遣について協議している。
 これまで「国連重視」の掛け声とは裏腹に、その力の限界を冷ややかに眺めてきたはずの日本。それが、地域紛争の解決などに向けた国連の平和活動への全面協力姿勢への転換−−。まさに「国連とともに歩む貢献外交」(外務省幹部)とも言うべき様変わりである。
 敗戦国・日本が国連への加盟を認められたのは昭和三十一年(一九五六)。翌三十二年外務省が初めて発表した外交青書「わが外交の近況」(第一号)の中で当時の岸内閣は、外交の三大原則として「自由主義諸国との協調」「アジアの一員としての立場の堅持」とともに「国際連合中心主義」をうたい上げた。国連加盟によって念願の国際社会への復帰を果たせたとの気分の高ぶりだけでなく、「国民の間に、国際平和の維持と実現を志向する国連への甘い幻想」(同)もあったのだろう。
◆国連中心、死語の時も◆
 「国連中心主義」は、しかし、わずか二、三年で外交青書や政府演説から、うたかたのごとく姿を消す。米ソの東西対立が深刻化するに伴い、“国連の原点”平和維持機能での無力ぶりが露呈したのと、わが国が日米安保体制へと急速に傾斜していったからだ。
 「国際連合が、真の平和維持機能として確立されるまでは、加盟国は国連に協力しつつも、自らの努力と責任によって自己の平和と安全とを保障する必要がある」
 昭和三十四年一月、同じ岸内閣の藤山愛一郎外相が行った国会での外交演説は、日本政府の方針転換をはっきりと示した。これを境に、表向き「国連への協力」「国連重視」のポーズをとりながらも、日本外交は、国際政治面では、西側陣営とアジアの一員としての立場が際立った軌跡を描き、「国連中心主義」のキャッチフレーズは「ほとんど死語扱い」(外務省筋)となっていく。
 ところが、ここへ来ての国連の“復権”現象−−。米ソ接近ムードの副産物にすぎない、との慎重な見方がある中で、外務省国連局は「米ソ両大国を中心に日本も含めた“国連離れ”は底を打ち、今や上昇気流」と分析する。そして、時を同じくして強まってきたのが、経済大国へと成長した日本に対する国際的貢献を求める世界の声だ。竹下首相も、これにこたえるように外交の旗印に「世界に貢献する日本」を掲げ、今年六月には、国連軍縮特別総会で自ら演説し、その三本柱の一つである「平和のための協力」構想を主に国連外交を通じて実現していくことを世界に向けて公約した。国連の平和維持活動への文民派遣など、「今後は、カネだけでなくヒトもチエも出しますよ」というわけだ。
◆発表前に事前説明◆
 「軍事大国にならないと約束している日本だから、平和への貢献は、国連を通じた形が一番。国連の重要性が増す時は、日本にとってもチャンス。自他ともに認める主要国となった現在、日本は平和の受益者ではなく、自分の考えるような形の国際秩序を国連を通じて作り出していくべきだ」
 かつての冷淡さを忘れたかのように、外務省幹部の一人は、国連外交の重要性を熱っぽく語る。
 さる六月下旬、ジュネーブの国連欧州本部を訪れた外務省の遠藤実・国連局長は、カンボジア問題担当のラシュディン・アーメド事務次長から突然、面会を求められた。いぶかる局長に対し事務次長は、国連で内々に検討しているカンボジア和平の青写真を説明しながら「今後の日本の努力は、この和平プロセスにとって極めて重要」と協力を要請した。
 「国連内部で考えている案を、日本に事前に見せてくれるなんて、これまでにないこと。それだけ頼りにされ始めた証拠だろう」と遠藤局長。
 国連の力には依然、限界があることは否定できない。が、日本外交にとって「その存在は、平和を守るための協力の場として欠かせないものになっていく」(栗山外務審議官)ことも間違いないようだ。
(政治部 松本 斉)
 
 
 
 
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