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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/01/16 毎日新聞朝刊
[負の明細書]国連の裏側/1 PKO基地、眠る資材−−イタリア
◇戦車、ヘリ部品・・・腐食も
◇「職員はぶらぶらしていた。信じられなかった」−−赴任の次席
 「赴任した時、あまりのずさんさにショックを受けた」
 南イタリア・ブリンディジ。アドリア海に面した広大な滑走路、その脇に並ぶ新型車両。数十に及ぶ倉庫。世界各地の平和維持活動(PKO)に必要な資材の管理・修繕をし発送する、国連初のPKO基地である。
 その一角で、資材管理責任者のバックリー次席(38)が語り始めた。レバノンなど世界のPKOで15年勤務したベテラン。彼が1997年、この基地に着任したのには特別な理由があった。同年以降の国連の内部査察室(OIOS)の監査で、基地のずさんな管理が次々と発覚し始めたのだ。
 「当時、多くの職員は何をするでもなく、ぶらぶらしていた。信じられなかった。例えば、現場の担当者たちは飛行機への荷の積み方も知らなかった。最初の仕事はごみと化した大量の不要物資の廃棄だった」
 基地を歩いてみた。倉庫をのぞくと、未使用の戦車エンジンや、ヘリなどの部品が積まれていた。一部はさび付いている。ソマリアPKO(92〜95年)で使い残された備品だった。全部で9億円相当になるという。だが、次席が赴任した時、ほとんどが野ざらし状態だった。水漏れのため腐食した部分もあり、使い物にならなくなっていた。
 それだけではない。管理目録がなく、どこにどんな資材があるのかも分からなかった。1億5000万円相当の新品のキッチンユニットが4年も放置され、腐食寸前だった。売却できる22億円相当の備品も放置され、新品の電子機器も劣悪な条件で保管されていた。
 壮大な無駄遣い。使える備品を次のPKO部隊に回したり、不用品を売却するなどして効率的なPKO運営を行う。その基地の役割が全く機能していなかったのだ。バックリー次席が赴任した97年までに、基地は約20億円の費用をかけてもいた。
 赴任後、彼は現場の技能訓練や備蓄資材の目録整備などを進め、「3年かけてやっと基地の機能を立て直した」。次席は語る。「長期計画に基づく予算、人材、設備の不足が、問題の最大の原因だった」
 
 アフリカ南西部アンゴラ。和平合意支援のため同国で展開していたPKO「第3次アンゴラ検証団」(95年発足)に対し、内部査察室は96〜97年、集中監査を行った。備品を購入する際、内規に違反している疑いが出たからだ。懸念は的中した。
 監査によると、現地で展開を始めた部隊がテントや特殊車両などを買ったり借りた際、業者選定や交渉がいいかげんで、規格外のものが次々と納入された。このため、更に1億2000万円の物資が必要になった。
 また、発注済みの物資を調べたところ、3分の2が不必要なものと判明し、総額15億円の物資購入を慌てて中止した。担当官が納入業者と癒着、上司の許可なしに、業者の言い値で高価な物資を買い入れてもいた。
 この状況は、検証団を引き継いだPKO「国連アンゴラ監視団」(97年発足)でも続いた。
 監視団は車両の塗装代として国連本部に2億6000万円を請求したが、調査で半額以下であることが判明した。本部が再交渉させた結果、代金は1億円になった。払う必要のない地代を13億円も出していたことも明らかになった。
 内部査察室の報告書を見ると、同様の問題は国連PKO全般に及んでいることが分かる。悪質なケースに対し、報告書は「職員の懲罰」すら求めている。
 
 ニューヨーク国連本部。国連PKO局のウィムハースト広報官(カナダ)が話す。
 「内部査察室に指摘された点は、改善努力をしている。PKOは準戦時下で国連組織の外部から人員を集めるため、ミスも出る」。そう弁明する一方、広報官は強調する。
 「最大の問題は、現場に部隊管理の経験を積んだ人材が少なく、現場を監督する国連本部の要員も限られていることだ。要員増加のため予算を増やしてほしい」。それは、ブリンディジ基地次席の現場の声と一致する。
 効率的な組織運営のためにPKO予算の増大を求める国連。だが、多くの国は予算拠出に消極的だ。そして、そのはざまで指摘され続ける失態・・・。日本はPKO予算の約2割を拠出しており、「一部の不正よりも組織の非効率性による無駄が多い」(外務省国連行政課)という現状に無関心ではいられない。
 
 米国に次ぎ、日本が第2の通常予算分担国である国連。PKOなどの活動の舞台裏では、経費乱用、ずさんな管理、国連にあるまじき不祥事――と数多くの「負の明細書」が残る。監査報告書と関係者への取材から、実態を検証する。
【福原直樹】=つづく
 
 
 
 
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