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1993/12/30 毎日新聞朝刊
国連安保理改革の底流・加盟国の意見書から/中 拒否権に不満強く
◇機能・運営めぐり綱引き
 国連の安保理改革では、前回述べた安保理定数の増加問題と併せ、安保理の機能・運営に関する改革も議論の対象になりそうだ。とりわけ常任理事国の拒否権や安保理の閉鎖性などをめぐり、現状に不満を持つ改革積極派の国々と、常任理事国のように既得権益を持つ現状維持派の綱引きが激化しそうだ。
 加盟国から出された約七十の意見書を見ると、安保理の機能・運営の主要な改善点として(1)拒否権のあり方(2)閉鎖性の打破(3)監査機能の創設――の三つが挙がっている。
 中でも常任理事国五カ国(米英仏中露)のうち、一国でも反対すれば決議が成立しない拒否権制度への不満は根強い。実際に拒否権が行使されなくても、それがあるというだけで「脅し」として外交カードに使えるため、これまでも「他の安保理国から出た有意義な提案が妨害されてきた」(マレーシア)といった批判もある。
 意見書では、拒否権そのものの撤廃を求める提案(キューバ、リビアなど)から、最低二カ国の反対を条件とすることで拒否権の発動に枠をはめようという案もあり、マレーシアなど一部で支持を集めている。さらにイタリア、スペイン、チリなどは、拒否権は持たないが任期の制限のない準常任理事国の創設を提案している。
 安保理の透明性の問題では、議論内容、決議に至る過程が非理事国に伝わらないといった指摘が目立つ。非公開会合の開催の制限(ニュージーランド)や、総会への報告書を現在の年一回から四回程度に増やし、より詳細な内容報告を安保理に要求することで透明性を高めようという案(メキシコなど)が出ている。
 安保理に対するチェック機能では、安保理の活動を法的に監査する制度がないことについて、途上国の間から「極めて重要な問題」(コスタリカ)として、独立した監査機関の設立を求める声が強い。
 こうしたさまざまな提言の背景には、冷戦終結によって常任理事国内の対立が解け、安保理が地域紛争の調停、平和維持活動に積極的に関与し始めている現実がある。改革派は、少数の国から成る安保理がこれまで以上に権限を強化し、常任理事国中心の運営が行われることに警戒を強めており、これを防ぎたいとの思惑がある。
 これに対し常任理事国は、冷戦による対立がなくなった今こそ安保理の強化を図りたいとの考えだ。例えば米国は安保理の下部組織の創設を提案、これを安保理の補完組織として活用したい意向だ。そのため、常任理事国五カ国の意見書は拒否権に言及しておらず、特に仏、英は安保理の組織改革問題自体に触れていない。
 透明性の改善の必要を認めている中国や、安保理の話し合いに該当地域を代表する機関の参加を呼びかけるロシアも「慎重に、急がずに行うべきだ」(ロシア)と、改革への動きをけん制している。
 安保理改革のためには国連憲章を改正しなければならないが、改正憲章の発効には現在の常任理事国五カ国すべてを含む加盟国三分の二の批准が必要となる。安保理の機能・運営をめぐる議論は今後、理事国増加についての問題ともからみ、複雑な展開が予想される。
(外信部・国連問題取材班)
【メモ】
 近年の安保理決議件数の増加は冷戦終結に伴い活発化する安保理の一面を表している。1989年まで年平均で14件ほどだったのが90年以降、37件(90)、42件(91)、74件(92)と急増し、今年は80件を超えた。
 
 
 
 
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