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私はこう考える【国連について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/04/09 朝日新聞朝刊
一からわかる国連分担金
 
 国連の予算は、加盟国の支払い能力に応じて割り当てられた分担金でまかなわれている。今年は3年ごとに行われる分担率見直しの年だ。米国が滞納金を返済する条件として分担率の削減を求め、米に次ぐ分担率の日本は、算定方式の抜本的な見直しを主張している。3月から始まった協議は厳しいものになりそうだ。
(ニューヨーク=村上伸一)
 
Q 何に使われているの
A 国連事務局と平和維持活動、国際法廷の3分野がある。
 
 分担金にはニューヨークやジュネーブなどにある国連事務局の運営や人件費をまかなう「通常予算」、世界の十五カ所に約二万七千人の軍事要員や文民警官を展開するための「平和維持活動(PKO)予算」、国際司法裁判所や旧ユーゴスラビア、ルワンダの虐殺などを裁く特別法廷のための「国際法廷予算」があり、それぞれが加盟国の拠出で支えられている。
 額が大きいのは通常予算とPKO予算で、一九九九年度はそれぞれ約十二億五千万ドルと推定約十九億三千万ドル。PKOは当初の見積もりが約六億五千万ドルだったが、そのあとで東ティモールやアフリカのシエラレオネ、コンゴへ大規模部隊の派遣が決まり、約三倍に膨らんだ。
 米国などは国連に対して「無駄遣い」批判を続けている。国連はそれに配慮して九四年度から名目ゼロ成長の通常予算を組んだ。事務経費の節約や約一万人の職員を千人減らし、九八、九九両年度はマイナス予算にした。両年度の実際の支出は予算をさらに下回る見込みで、浮いた分は途上国の開発援助に回すことが総会で合意されている。
 国連の広報資料には、金がかかりすぎるとのイメージをうち消すため、「通常予算はニューヨーク市の年間予算の四%で、東京消防庁の年間経費に比べて約十億ドル(約千五十億円)少ない」との例示がある。通常予算とPKO予算の分担率が、二カ国の合計だけで四五%を超える米国と日本を意識したものだ。
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連児童基金(ユニセフ)など人道的救援活動に取り組む国連機関は、予算の大半を各国の自発的拠出金や募金に頼っている。
 
Q 日本の分担率は
A 20%を超え、米以外の主要国を大きく引き離している。
 
 一九五六年に国連に加盟した日本が、翌年初めて割り当てられた通常予算の分担率は一・九七%だった。二十六年後の八三年に初めて一〇%を超し、そこから十七年で二〇%に。経済成長を反映して計四十三年間で十倍を超えた。
 日本が今年払う分担金見積もりは、三月中旬時点の通常予算で約二億二千万ドル(約二百三十一億円)、PKOで約一億六千万ドル(約百六十八億円)にのぼる。
 九七年に行われた見直し協議で、九八年から今年までの通常予算の分担率を決めた算定方式はこうだ。
 加盟国の国民総生産(GNP)について、統計のそろった九〇年から九五年までの平均値を出す。それぞれの比率を分担率にすると、途上国の負担が過重になる。そこで年間の一人あたり国民所得が六千ドル(約六十三万円)未満の国には、本来のGNP平均値から対外債務額を一定の方式で割り引く。引いた後のGNPに基づく一人あたりの数値が四千三百十八ドル(約四十五万円)より低い国は、さらに割引を行う。割り引かれた分は、先進国の負担に回す。
 日本はGNPの比率が一七・三%だったが、途上国の割引分が追加されて分担率が二〇%になった。米はGNPの比率が二六・二%だったが、通常予算の分担率の上限が二五%に設定されているため、本来の比率より低くなっている。
 PKO予算では、途上国の割引分は安全保障理事会の五つの常任理事国だけに追加され、日本を含む他の先進国は、通常予算と同じ分担率になる。PKOへ兵力を提供するなどの人的貢献をする国には、要員の手当や武器などの機材にかかる経費がPKO予算から払い戻される。
 分担率見直しは、予算を扱う国連総会第五委員会で協議される。いつのGNPをもとにし、途上国の割引をどうするかなど、自国の分担率が最も低くなる算定方式を目指して駆け引きを繰り広げている。
 
Q 米国はなぜ滞納するの
A かつては総会の1国1票に不満。冷戦後はPKOへの消極的態度を反映。
 
 通常とPKOをあわせた米の滞納金は十億ドルを超え、他国分も含めた全体の滞納額の三分の二に近い。
 米と国連の関係にくわしいラック・ニューヨーク大国際機関研究センター所長によると、米が滞納を始めたのはレーガン政権の八五年からだ。東西冷戦のもとで、一国一票の国連総会では東側陣営や非同盟諸国が多数派を占め、予算の使い道や国連改革などが米の思い通りにならなかった。
 そこで分担率の高い国の票に重きをおくような投票方式が実現するまで、分担金の五分の一を差し引くことに決めた。
 国連はこのころから、米が求める職員削減などの改革に本格的に取り組み始めた。次のブッシュ政権では、滞納金の一部返済が行われた。
 だが、クリントン政権になると、予算の決定権を握る議会がソマリアへの介入の失敗からPKOに対して消極的になり、九四年には米のPKO分担率の上限を一方的に二五%と設定した。さらに共和党保守派の間では「国連に言うことを聞かせるには、金(を払わないと脅す)しかない」との主張が幅を利かせ、滞納を続けている。
 昨年末、議会は滞納金のうち約九億ドルの返済を認めたが、うち約八億ドルについては米の分担率を通常で二二%、PKOで二五%にそれぞれ下げてから支払うという条件をつけた。分担率は米政府が他国と協議して決めてきた国際的な約束だ。一方的に条件をつけるのはルール違反だが、共和党保守派の間では「米国民の税金の使い方を国連に指図されたくない」という主張が説得力を持っている。
 ラック教授によると、保守派は通常予算で二〇%までの削減を義務づけようとしたが、「これでは日本より下のナンバー2になる」と気づき、義務にしなかったという。このことにも超大国の地位にこだわる米国の意識が、かいま見える。
 
Q 日本の対応は?
A 貢献と現状への不満をアピールし、安保理改革を促す。
 
 佐藤行雄国連大使は「(滞納金を返済するための分担率削減という)米の条件は受け入れられない」と断言する。ただ、抜本的な見直しを主張しているのは日米しかない。そこで米の条件にはひとまず目をつむり、超大国の影響力を追い風にして日本に有利な状況を探る構えだ。
 佐藤大使は日本国内での意見を踏まえて、「現在の日本の財政事情と、(日本が常任理入りを目指す)安保理改革が進まず、日本の貢献が正当に評価されていないことを考えると、分担率の現状を放置できない」と強調する。
 日本の分担率が、安保理五常任理事国のうち英仏ロ中の合計を上回っていることにも、不満を示す。PKOの設置は安保理を牛耳る五常任理事国の間で事実上決められるのに、その費用の五分の一は、決定に口をはさめない日本に回されるからだ。
 だが、日本は分担率の削減そのものを主張していない。見直し論議を通じて日本の財政的貢献を印象づけ、安保理改革への機運を促すとともに、米の削減要求が通った場合の追加負担を避けるのが主な狙いと見られる。
 米の条件付き削減要求に、各国が交渉に応じる姿勢を示す背景には、超大国の協力がなければ国連が機能しなくなるという不安がある。米の削減が実現すれば、負担の矛先は分担率がGNPの比率より低い中国、ロシア、メキシコ、韓国、ブラジルなどに向けられる可能性が高い。
<2000年通常予算分担率上位20カ国>
(単位%、小数点2位以下切り捨て、カッコ内は世界でのGNP比率)
(1) 米国 25.0(26.2)
(2) 日本 20.5(17.3)
(3) ドイツ 9.8(8.2)
(4) フランス 6.5(5.4)
(5) イタリア 5.4(4.3)
(6) 英国 5.0(4.1)
(7) カナダ 2.7(2.2)
(8) スペイン 2.5(2.1)
(9) オランダ 1.6(1.3)
(10) オーストラリア 1.4(1.2)
(11) ブラジル 1.4(1.9)
(12) ベルギー 1.1(0.9)
(13) アルゼンチン 1.1(0.9)
(14) スウェーデン 1.0(0.9)
(15) ロシア 1.0(1.4)
(16) 韓国 1.0(1.2)
(17) メキシコ 0.9(1.2)
(18) 中国 0.9(3.2)
(19) オーストリア 0.9(0.7)
(20) デンマーク 0.6(0.5)
その他168カ国合計 9.7(14.9)
 
 
 
 
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